和歌・雨に想う
「ふりまさる音につけても恋しきは
昔の人や雨となりけむ」
長慶院
雨の音を
ただひとりじっと聞いていた
静かに耳をすませて
雨音がよりいっそう強くなるにつれて、
過去に置いてきたはずの恋しさが
よみがえってきた
むかし別れた恋人
あんなふうに別れなければよかった
もっと違った形で愛したかった
そんな後悔や罪をすべて許すかのように、
雨音がわたしを優しく包み込む
この涙を洗い流すように降り続ける
雨音を聞いてこんなにも恋しくなるのは、
昔別れたあなたが
雨となってわたしのそばにいてくれるのだろうか
この雨のように、優しい人だった
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