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地方で出版社をつくる【其の六】復刊書籍の許諾を取る

日本における著作権の保護期間は、著作者の死後70年と著作権法で定められている(2018年12月以前は50年間だったが改「悪」されてしまった)。だから、基本的に死後70年が経過している著作物ならば誰でも自由に復刊することが可能だ(逆に言えば70年も経たないと自由に復刊できないわけだが)。2018年に刊行した虹霓社初の出版物『杉並区長日記ー地方自治の先駆者・新居格』は著者の新居格が没後67年と(法改正前の)50年以上が経過していたため復刊が可能だった(とはいえ、元版の出版社には報告。刊行後に連絡先がわかった遺族には事後報告)。2冊目の『石川三四郎 魂の導師』は著者の大澤正道さんを以前より存じ上げていたため、お手紙を書いて復刊の許諾をいただいた(版元はすでになかったので報告できず)。

そして今、ある復刊の企画をしている。とある著者と昨年に運命的な「出会い」をしてしまい、その後に多くの著作を古書店やネットフリマで買い集めて読んでいたのだが、とにかく面白いのだ。しかし、良書ばかりなのに絶版が多い。こんなに面白いのならば誰かが復刊するだろうと思っていたものの、一向にそんな話は聞こえてこない。ならば、自分でやるしかない!と思い立った。が、その著者が逝去されたのが2019年。そうたった2年前。当然、著作権の保護期間だ。許諾を得るには著作権を継承しているであろう遺族の方と連絡をとるしかない。がしかし、残念ながら全く存じ上げない。著者周辺の方にも知り合いはいない。ならば、と考えてみた。

◉その1
著者の孫だとプロフィールに書いているTwitterアカウントを見つけたので、アカウント主に連絡してみる

◉その2
亡くなる数年前に著作を刊行した出版社に問い合わせてみる

◉その3
著者の評伝も書いているノンフィクション作家に連絡をとる

わたしが考えたのはこの三択だった。
1は、本当の孫だと言う確証はない。道のりが遠くなる可能性も否めず却下。
2は、かなり現実的なのだが、著作を刊行していた版元も復刊を企画している可能性は大いにあり、すんなり教えてくれないかもしれないし、いきなり連絡先を教えてほしいと言うのは何だか気が引けた。
そして3。たまたまその作家さんの新著を書店で見かけてパラパラ見たら、何とその亡くなった著者についての記述があり、今こそ読まれるべきと言うようなことが書いてあった(もちろん即購入)。
この方に教えてもらうしかない!

そこで、自分が著者にいかに惚れ込んでいるかやその作家さんが書いた評伝が著者の略歴はもちろん、その人柄がとても伝わってきて、ますます好きになったことなどを書いて、作家さんの公式サイトの連絡先にメッセージを送った。すると、すぐにご返信を頂けた。「力になりましょう」と。心強いお言葉に感激。そして、著者のお子さんに連絡を入れてくれるという。そのお礼の返信をするかしないうちに、なんとお子さんからもメールが届いた。「復刊ありがたいです」と。このうれしさはなかなか言葉にできるものではない。

このあと、お子さんに企画書を送ったり、契約書を送ったりなどのやりとりが続くのだが、今回のテーマではないので割愛。
これ以外の選択肢もあるだろうし、その時のタイミングなどもあるかと思う。以前、ある大学教授をされていた故人の方の許諾を取ろうとして出版社に問い合わせたらわからないと言われ、勤務先だった大学に数回連絡をしてようやくお連れ合いの方を紹介してもらったということもあった。

ちなみに、どうしても遺族が見つからない場合は、文化庁による「著作権者不明等の場合の裁定制度」という制度もある。
権利者の行方が分からない作品を合法的に出版する方法だ。
ご参考まで。


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