NHKクロ現「女性のひきこもり」はどこがどう捏造なのか?(本人による解説)
私は過去にひきこもっていた時期はありましたが、現在はそうではありません。取材時にも、担当ディレクターにはっきり伝えました。にもかかわらず、制作側は私を「典型的かつ病的なひきこもり像」に無理やり押し込めようとしたのです。
捏造の手口
番組VTRは巧妙に編集されているので、事情を知らない第三者が見ても違和感を覚えないかもしれません。でも、取材を受けた本人が見ると、おかしな点がいくつもあるのに気づきます。音声と映像が一致せず、それぞれが切り離されて、別のものとくっつけられているのです。
私の出演部分は5分くらいとごく短いのに、捏造のオンパレード。事実に即した部分を探す方が難しい。事実を正しく伝える意思がまるで感じられません。
私がポジティブな意味で提示した情報が、編集によってことごとくネガティブに歪められ、実態とは大きくかけ離れた人物像が作り上げられています。VTRを初めて見た時には血の気が引きました。
いうなれば私はそうと気づかずに「やらせ」に加担したようなものです。何の説明もなく同意もないまま、過去の私をデフォルメした姿を自ら演じさせられていたのです。
捏造場面の解説
2023年9月6日のお詫び放送を見た人も、何のことかよくわからなかったでしょう。そこで、実際に放送されたVTRの映像・音声・字幕を書き起こして、説明を加えてみました。
▶取材時の様子:「家事はできるだけ機械化・合理化している。洗濯は乾燥機付き洗濯機がやるので、自分でやるのはアイロンがけくらい」と話して、たまたま溜まっていたアイロンがけをした。
▶解説:ナレーションと相まって、いかにも「ひきこもり主婦」っぽい印象を与えるが、本来ひきこもりとは無関係の映像。現在のありふれた日常のひとこま。
▶取材時の様子:「DIY好きが講じて、電気工事士の講習を受けた」という話をした。「最初はよくわからないことばかりだったが、できることがどんどん増えて自信がついた」という話をしながら、工具を使って実演してみせた。
▶解説:「徐々に接点を持ち始めている」というのも実態とは異なり、取材時すでに「社会参加」していた。ボランティアを「接点」として就労を目指す、という意図もまるきりなかった。
ちなみにこの場面はボランティアとはまったく関係がない。説明なしに唐突に挿入されているため、意味不明なシーンとなっている。
▶取材時の様子:普段の生活を撮るということで、家事の合間に休憩するところを撮った。
▶解説:ナレーションを聴きながら映像を見ると、私が現役のひきこもりであるかのように見えるが、実際には家事の合い間に休憩しているだけで、ネガティブな意味はもともと全くない。
「働きたい」と思っているという話は一切していないし、「一歩を踏み出せていない」いうのも意味不明。現在は積極的に物事に取り組んで色々な活動をしているので、そういう消極的な気持ちは少しもない。
▶解説:過去の体験について取材時に語った際に出た発言。現在はこのような悩みは一切ない。
前述の③のナレーション「働きたいと思っても、その一歩は踏み出せていません」の後にこれを持ってくることで、「働きたくてもできないひきこもり」のイメージを強化している
▶取材時の様子:「普段の掃除はルンバがするので、それ以外のところを自分でやる」という話をしながら、その一例としてドアの桟を掃除してみせた。同じ動作をもう一回繰り返すように言われたので、繰り返した。今思えば、編集時に捏造テロップ&ナレーションを付けるために、セリフなしの映像を撮りたかったのだと思う。
▶解説:③と同じく、それらしい映像に事実無根のナレーションをつけ、虚像を作り上げている。あたかもいま現在、毎日強迫的に掃除ばかりしているかのような、病的な印象を植え付けるものである。ひきこもり当時も掃除含め家事全般で6時間くらいだったし、いまは3時間くらいしかしていない。
▶取材時の様子:「皿洗いは食洗機でやるので、自分ではシンクを磨く程度」と言って、台所のシンクを磨いてみせた。食洗機の作動音なども取材班は撮っていた。
▶解説:この映像に付与されているセリフは、かなり昔の体験として別の文脈で語ったものであり、映像とセリフがかみ合っていない。今の映像と過去に関する発言をつぎはぎして、あたかも現状について語ったセリフであるかのように見せている。しかもテロップに誤字あり(脅迫じゃなくて強迫)。※過去の私の状態は「強迫的」なところはあっても、「強迫神経症」ではなかった。
▶解説:女性のひきこもり問題について、私がラジオで初めて知ったかのようなナレーションだが、これは明らかな捏造である。数年前にひきこもり女子会に参加した経験があり、その時からすでにその問題は知っていた。
「同じ境遇」とあるが、すでにひきこもり状態にないため、同じではない。
▶解説:私自身の心情として「怖い」のではない。投稿者に同情しての発言にすぎない。なぜなら私は取材時もいま現在も、就労(賃労働)をまったく視野に入れていないからである。
▶解説:あたかも私が先にラジオを聴き始めて、夫がそれに続いて聴くようになり、ラジオをきっかけに夫に理解して「もらう」ことができたかのよう。でも、実態はまるで違う。
場面⑨では、私だけでなく、夫のあり方も夫婦の関係も歪められていました。ほんとうに許しがたいです。
▶解説:これも⑧と同じく、私自身の現状を述べたものではなく、リスナーへの同情を示した発言にすぎない。私がラジオを聴き始めたのは、すでにひきこもりから脱して数年たってからのことである。ラジオ番組の聴取と脱ひきこもりとの間に因果関係はないし、取材当時も今も、私がラジオにすがって生きているという事実はどこにもない。
まとめ
私たち夫婦は結局のところ、
NHKのラジオ番組の宣伝に使われただけなのだと思う。
「みんなでひきこもりラジオ」のリスナー(私ではない人)の投稿に、「私は就労のための一歩が踏み出せず、数年間家にひきこもっていました。正直言って怖くてたまらないです」とあるが、これをもとに、
「働きたいと思っても、その一歩は踏み出せていません」
という事実無根のナレーションとテロップをでっち上げたのだろう。
「働きたくても一歩を踏み出せない」という言葉をVTRの冒頭と末尾に持ってきて、うまくまとめたつもりだったのかもしれない。確かに、典型的なひきこもりのイメージにぴったりな言葉だよね(怒)!
番組の構成としては、きれいにまとまってよかったね、となるのかもしれないけど、出演した私はたまったものではない。夫も巻き込んでしまったし、失ったものは大きい。
クローズアップ現代に出たことは、一生の後悔になるでしょう。これ以上、報道被害に遭う人が出ないことを祈ります。
【追記】
放送後、4か月にわたる交渉を経て、2023年9月に同番組でおわび放送ありました。まとめ記事はこちら☟
取材の様子や交渉の裏側を赤裸々に書いた、“捏造報道体験記” はこちら☟
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