見出し画像

春よ来い 二月堂のお水取り

「りこちゃん、おはよう!」
今日も、いつも通り朝がやってきて、
こざるちゃんは、りこちゃんの部屋にやって来ます。

「ん?」
りこちゃんは まだベッドの中にいましたが、
目をパッチリと開けていました。
今、起きたようです。

「りこちゃん、おはよう。朝だよー。朝が来たよー。」
「こざるちゃん、おはよう。」
りこちゃんも ニコニコ、返事をします。

こざるちゃんは、ゆっくりカーテンを開けて、
テレビをつけます。

「りこちゃん、ゆっくりでいいよー。慌てて すぐに起きなくていいよー。」
「ありがとう。」

「わぁ、今日もいい天気だ、嬉しいね。」
「そうねー、嬉しいね。」

テレビでは、奈良、東大寺二月堂の
お水取りのニュースをやっています。

「りこちゃん、テレビで 東大寺のお水取り、やってるよー。」
「え? 本当?」

こざるちゃんは、まだ横になっている りこちゃんが、
よく見えるように、テレビを動かします。
夜の二月堂、大きな松明の炎が豪快に上がっています。

「りこちゃん、前に皆で一緒に行ったねー。」
「うん、行ったねー。」
「楽しかったね。」
「よかったよね。」

 以前、りこちゃんと こざる達は、皆で このお水取りを観に行きました。
りこちゃんは、奈良が大好きで、何度も行っていたのですが、
お水取りの時期に行ったことがなくて、
観に行きたいとずっと思っていました。

最初、こざる達は、テレビでこうして観られるから、
わざわざ、寒い時期に しかも夜に行かなくていいんじゃない、
と言いました。
「テレビで暖かい部屋で観られるよー。」

りこちゃんは、こう言いました。
「テレビの画面で平面的に観るのと、
実際に自分が その場に行って観るのことは、全く別のことだよ。」

それで、そんなに言うならと、皆で出かけたのです。

「最初は とっても寒かったけど、松明の炎が わーって燃えてて明るくて、
それを持ったお坊さん達が ダーッて走って、火の粉も降って来て、
わーってなってねー。それで寒いことなんて忘れちゃったよ。」
テレビで眺めるのではなく、体で感じたのです。

りこちゃんは、美術館や博物館も、
実際に本物を自分の目で見ることが大切だと言います。

「それで、自分がどう感じるか、なんだよ。」

二月堂のお水取りのニュースが終わって、
次のニュースが始まります。

「りこちゃん、また奈良や京都に行きたいねー。」
「うん、行きたいねー。」
二人とも、ニコニコ嬉しそうです。

「じゃあ、朝ごはんの仕度、出来たか見てくるね。」
「うん、ありがとう、こざるちゃん。」

こざるちゃんが台所へ戻ると、
ちょうど朝ごはんの準備が出来上がったところです。

ラジオからは、懐かしい童謡が流れてきます。
「春よ来い 早く来い
歩き始めた みいちゃんが
赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている」

『春よ来い』です。

こざる達も ニコニコと 一緒に歌います。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」

今日も こざるカフェの一日は、ゆっくり始まって、
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
もう 春はそこまで来ています。
よい毎日でありますように (^_^)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?