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めでたし めでたし 近江町市場

今日も朝から既に かなりの暑さです。
「昨日も暑かったけれど、今日の方が暑くなるみたいだよ。」
「えーっ?」
「まだ5月なのにねー。」
「もう7月頃の気候らしいよ。」
こざる達は、皆、目をまん丸にします。

「だって、梅雨もまだこれからなのに、どうなっちゃうんだろう?」
「昨年の夏も暑かったけれど、もっと暑くなるのかなぁ?」

昨年の夏は、40度前後の日が ずっと続きました。
35度前後で、ホッとしたこともありました。

こざる達は、いつものように賑やかに お喋りしながら、
朝ごはんの仕度をしています。

ラジオからは、朝のニュースが聴こえてきます。
どこからか、中継のようです。
ざわざわと賑やかな場所の音が聴こえてきます。

「あ、近江町市場だ!」
金沢の台所、近江町市場からの中継です。

「いいなぁ、行ってみたいなぁ。」
こざる達は、金沢へ行ったことがありません。

「近江町市場というと、さとこちゃんを思い出すよね。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

さとこちゃんは、りこちゃんの昔からの友人です。
りこちゃんと同い年で、最近、施設に入りました。

「さとこちゃん、旦那さんが保険会社に勤めていて、
転勤で、若い頃、金沢に住んでいたことがあるんだよ。」

新婚生活は、金沢でスタートしたと話していました。
今から60年近く前のことです。

「さとこちゃん、毎日、金沢を探検していたんだよね。」
「うん、さとこちゃんも りこちゃんと同じ
好奇心旺盛の江戸っ子だからね。」

今と違って、コンビニはありません。
スーパーマーケットはありましたが、
今のような大型店舗はありませんでした。

「いつも 同じお店で買い物することになるんだよね。」
「さとこちゃん、しばらくして飽きちゃって、探検を始めたんだ。」
「それで、近江町市場に行ってみたんだよね。」

近江町市場も、今と違って、一般客向けではなく、
業者ではない普通の主婦が買い物に行く事はありませんでした。

「築地市場だって、そうだよね。」
「今みたいに、観光向けじゃなかったよ。」

「さとこちゃん、近江町市場に行ってみたら、
食材が豊富で安くて、特に魚が素晴らしくて感激したんだよね。」
「それで、すっかり常連さんになって、通うようになったんだよ。」
「お店の人も、地元の出身ではない若いさとこちゃんが毎日来て、
最初は驚いたみたいなんだけど、
すぐに打ち解けてくれたって言ってたね。」

さとこちゃんも、りこちゃんと同じように、
変な固定観念はありません。
新鮮で、しかも安い食材が豊富にあって、
専門知識のあるお店の人がいろいろ教えてくれる場所なら、
「行かなきゃ、もったいない!」なのです。

さとこちゃんは、近江町市場に行くと、たくさん買って、
ショッビングカートに入れて、コロコロ転がして持ち帰っていました。

ある時、お店の人が、車で配達に行くついでに、
さとこちゃんの家に買ったものを届けるからと言ってくれました。

「それで、お店の人が届けてくれるようになって、
しばらくして、さとこちゃんに聞いたんだよね。」
「うん。さとこちゃんは、旦那さんの会社の社宅に住んでいて、
社宅の入り口には、会社名が書いてあったからね。」

そうなのです。
当時、近江町市場で働いている人たちは、一般の会社とは違うからなのか、
保険に入る機会がなく、入っていなかったのです。

「それで、できたら保険に入りたいんだけどって、
さとこちゃんに話したんだよ。」

さとこちゃんは、旦那さんに話しました。
旦那さんは保険を手配しました。
ところが…..

「さとこちゃんも、旦那さんも、
保険に入りたいって言った人、1人だけの話と思ったら、
なんと他にもたくさんの人、全員じゃないか?と思うくらい、
たくさんの人たちも入りたいって言ったんだよね。」

そして、さとこちゃんの旦那さんは、
入りたい人全員の保険を手配しました。

「ぼく達、この話を聞いて、なんだか感激しちゃってねー。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

その後、社宅に住む他の人たちも
近江町市場に買い物に行くようになりました。

「社宅の人たちは、最初、若いさとこちゃんが、
あんなにたくさんの新鮮な食材を
どこで入手してくるのか、皆、不思議に思っていて、
さとこちゃんが近江町市場って言ったら、皆、驚いていたんだよね。」

何の壁もない さとこちゃんと違って、
一般の人は普通は近江町市場には行かなかったようです。
行くなんて、考えたこともなかったようです。

「保険の話も、近江町市場に買い物に行く話も、
今では信じられないけれど、
そんな見えない壁、固定観念があったんだね。」
「変な概念とか、慣習とか、取っ払ってみたら、
なーんだっていう 何でもないことが、たくさんあるのかもしれないね。」

朝ごはんの仕度が出来たようです。
「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、鼻歌を歌いながらりこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、朝ごはん、出来たよ。
玉子サンドと、ツナと胡瓜のサンドイッチ、作ったよ。
皆で 一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
今週末は、更に暑くなるようですね。
よい毎日でありますように (^_^)

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