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秋の夜長の朗読会

三連休が始まって、
何となく、夜も静かです。

「きっと出かけている人も多いよね。」
「三連休だもんね。」

今日も りこちゃんとこざる達は いつものように
楽しくお喋りしながら、 皆で一緒にわいわい夕飯を食べました。
そして りこちゃんの古いレコードを聴きながら
食後のお茶を飲んでいます。

「もうすっかり秋だね。」
「夜は ちょっと寒いよ。」
「りこちゃん、膝掛け、ちゃんとかけてね。」
「はーい。」
こざるちゃんが、りこちゃんの膝掛けをかけ直します。

「そうだ! 」
こざるちゃんが、何か思いついたようです。

「今夜もまた、ちょっと朗読してもいい?」
「うん、いいよー。」
「今夜は何のお話?」

こざるちゃんが、一冊の本を持ってきます。
りこちゃんの古い本、宮沢賢治の作品集です。

「では読みます。」
こざるちゃんはそう言って、朗読を始めます。

「『ではみなさんは、そういうふうに川だと云いわれたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。』
先生は、黒板に吊つるした大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指さしながら、みんなに問といをかけました。」

りこちゃんも、こざる達も大好きな『銀河鉄道の夜』です。
皆、じっと聴いています。

こざる達は、毎年、秋になって涼しく静かな夜が続くようになると
この物語を読みたくなります。
きっと夜空がより身近に感じる季節になるからかもしれません。

「次は、ぼくが読むよ。」

『銀河鉄道の夜』は、ちょっとだけ長い物語です。
こざる達は、代わりばんこに朗読をします。
りこちゃんは、ちゃんと膝掛けをかけて聴いています。

「そう云いながら博士はまた川下の銀河のいっぱいにうつった方へじっと眼を送りました。
 ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいで なんにも云えずに博士の前をはなれて
早くお母さんに牛乳を持って行って お父さんの帰ることを知らせようと思うと
もう一目散に河原を街の方へ走りました。」

最後にまた こざるちゃんの番になって、
そして読み終わりました。

皆、パチパチと拍手をします。
こざるちゃんは静かに一礼します。
皆、それぞれ、物語の余韻を感じています。

りこちゃんの古いレコードからは、
ショパンのノクターン第二番が流れてきます。

少しして、こざるちゃんが言います。
「お茶のお代わり、淹れてくるよー。」


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
台風の季節ですので、どうぞ くれぐれも気をつけてください。
よい毎日でありますように (^_^)

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