依存する意味

「また会おうね、じゃあね。」

付き合っていない男女が交わす「またね」ほど意味の無いセリフはない。

けれど、私はそのセリフを何十回と繰り返す。

普段の私は絵に描いたような真面目な子。

夢に向かって真っ直ぐで、パワフルで、明るい。

普段の私を知る人には大体そう言われる。
私もそう思う。
だって「そう見えるように」してるから。


ただ環境柄、私はストレスが多い。

女の子扱いされることのない男社会。
揉まれる事は覚悟の上で、今の生活をしている。

「夢」の為だから。

でも、それでも耐えきれないことはある。

私が私でいられなくなりそうなほど、
頭がおかしくなって、しんどくなって、無意味に涙が止まらなくなることが沢山ある。

何度も何度も一人で深夜に泣き喚いた。

夢に突っ走るなら支援はしない。

そういう親に反抗して私は実家を飛び出てきた。
同性の仲間がいない中、一人で突っ走る。

戻ることはもう出来ない。

私は昔から男運が悪いのか自分が悪いのか、
付き合う男は全員メンヘラ化した。

別れてリスカし始める人、ストーカーする人、
何度ブロックしても新しい垢でDMしてくる人。

「結局あなたもそうなるんだ。」

5人ほど付き合って別れてを繰り返したくらいで、
私はそう思って彼氏を作ることを諦めた。

そして都合のいい関係に走った。

それは、私にとってはとても有難いものだった。

遊び相手は必ずコミュニティ外。
面倒くさくなったら指一本で切れる関係でいること。
一度抱かれた相手を恋愛対象にはしない。
ベッドの上の言葉は基本嘘だと思う。

自分の中の男遊びルールが出来上がっていく。

ルールが確約すると比例して、心の中の何かがすり減っていく感覚。

私は何かを失っている。
それでも、私は男遊びをやめられない。

どれだけ都合よく扱われても、
抱かれてる間だけは何も考えなくていい。

自分が人類の最底辺にいる事を自覚してるから、

あぁ、これ以上落ちる心配はない。

そう思って気が抜けるのだろう。

「可愛いね。」
「また会いたいよ。」
「俺はいなくならないから、いつでも頼って。」

彼らはいとも簡単に甘い言葉を囁く。

そんなの全部嘘だ。分かってる。

分かってるけど、嬉しそうな顔をして頷けば、彼らもまた満足する。

単純で、分かりやすい。

この簡単な関係が、今の私にはとても楽なのだ。

いつでも気軽に「真面目な私」を脱いで、
思いっきり馬鹿な私でいられる。

みんなが知らない男の人と会って、
誰も知らない世界に浸る。

その代償も大きいけど、
これをしないと心が保てなくなっている。

時折、この世界から私を連れ出そうとする人がいる。

「そんな事してちゃダメだよ、俺がやめさせる。」


有難い事なんだとは思う。

思うけど、どうしてもその言葉が軽く感じて仕方がない。

そのセリフを言う時点で、今の私を支えるコミュニティ外の男達が埋めてる隙間は埋められないのだ。

そもそも、私が好きじゃないんだから。

彼らは思ってる以上に、私を満たしてくれている。

単純に扱いが雑な奴も沢山いるけれど、
私がプライベートくらい馬鹿でいさせてほしい、という気持ちを汲んでくれる男だって少なからずいる。

私はそれでいい。それがいい。

でもいつだって、
私が思いっきり好きになった男が

この泥沼な世界から
私を連れ出してほしいなんて思ってる。

柄でもないのにね。

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