見出し画像

2023年7月に読んだ本

1 目黒雅也『西荻さんぽ』★★★☆☆

西荻の近くに住んでる人しか読む必要はない気がするが、絵がよい。載っているのはほとんど飲食店。

2 川上未映子『深く、しっかり息をして』★★★☆☆

ああ川上未映子だなというエッセイ集。今回のエッセイ集には特にフェミニズムに分類できるような内容のエッセイが多く収められていた印象。

3 ダイアン・クック『人類対自然』壁谷さくら訳★★★★★

面白い。かなり面白い。デビュー短編集らしいが、日本にはデビューが短編集の作家ってあまりいないし、しかもデビューの段階でここまでクオリティの高い粒ぞろいなものを書ける作家も少ないと思う。5月に読んだダンディール・W・モニーズも『ミルク・ブラッド・ヒート』がデビュー短編集で最高だったし、あのイー・ユンリーも『千年の祈り』がデビュー短編集か。凄いな。出版のシステムの問題もありそう。
一番を選ぶのは難しいが、特に好きだったのは「気象学者デイヴ・サンタナ」。こういう性欲が強くて決まったパートナーがいない中年の女が暴走する話すごい好き。「ガール・オン・ガール」も最高。できちゃった最近疎遠の昔の親友の腹をどつきまわしてあげる最後のシーンがよすぎる。でもこういうタイプの話だけなら他の作家でも書ける気がするのだが、この人はもっといろいろなディストピアものが書ける。

4 冨岡悦子『反暴力考』★★★☆☆

誠実で確かな筆致。

暴力とは 私が 私であることに 由来する 私という個が なくなれば 私は ようやく 暴力から 罷免される 声をうしない 重さをなくす けれど そののちになお 揺れるさみしさを 冬の乾いた空は いつか 受けとめるだろうか

5 たかたけし『住みにごり4』★★★★★

3巻の最後で4巻の内容は大体分かっていたのだが森田が本性を発揮しはじめた。今んとこ森田が一番やばい。主人公が一番やばくない。

6 ジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』岩崎力訳★★★★★

面白い。みんな思い思いの書き方をしている。共通点が全くといってない。

7 橋迫瑞穂『妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ』★★★☆☆

本書では3つの大きな潮流、子宮系・胎内記憶/胎教・自然なお産を扱っているのだが、どれもちょっと聞いたことがある。それくらい妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティは流布している。スピって言ってしまえばそれ以外頼れるものがない人が頼るものという側面があると思うのだが、そう考えると日本において妊娠・出産というのは多くの女性を「それ以外頼れるものがない状態」に陥れている。本当にこの国は女性の性にまつわる諸々が遅れすぎている。

8 サラ・カイリイ『ヴァージン・キラー』★★★☆☆

書肆侃侃房ってこんななかなかアナーキーな詩集も出せるのか。知らなかった。ただの赤裸々ではなく、抑制が効いていて、作品として品もあり、何だか顔に塗るお粉のほの甘く乾いた匂いがしてくる。そんな詩集。

この記事が参加している募集

#推薦図書

42,395件

#読書感想文

187,194件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?