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介護の仕事は3Kと言われるが、それはイメージ? 事実? そして具体的に何がキツイのか?

■ 介護の仕事のイメージ「汚い」について


よく「介護の仕事は大変」と言われているが、これは世間的なイメージもあれば実際に働いている介護者たちからの意見でもある。

それを要約した「3K」というワードもある。
「キツイ」「汚い」「危険」の3つの頭文字により3Kだ。

まず、イメージだけで言えば「汚い」は何となく分かる。おそらく、排尿や排便のことを差しているのだろう。それ以外には、ゴミや散らかりなどの生活環境に関すること、お風呂に入らない・着替えをしないといった本人の状態に関することも考えられる。

しかし、「汚い」という話で言えば、他業種においては清掃業やクリーニング、設備・建設・工業系においても「汚い」はある。普段はスーツ着用の営業マンだって、現場によっては汚れる場面は多々ある。

まぁ、仕事を通じて直接的に「汚い」を実感することから考えれば、確かに介護における「汚い」のイメージは間違っていないと言える。「汚い」に対するイメージだけは、それなりに肯定することができる。

ただし、介護の仕事のすべてが「汚い」かと言えば、そんなことはない。
あくまで介助レベルが中程度~重度の利用者に対しての話であることは、ご理解いただきたい。

そうでないと、介護の仕事以前に、介護サービスを受けているすべての利用者に対して「汚い」というイメージを持っているのと同じになってしまう。それは高齢者に対して失礼というものだ。

つまり、「介護の仕事=すべて汚い」は思い違いなのだ。


■ 危険なのは他業種も同じ


しかし、「キツイ」と「危険」は何も介護だけではない。

先に「危険」と言えば、確かに介護の仕事は感染症のリスクを負いやすい現場作業であるし、肉体に負担をかける介助が多いので腰痛などの損傷を負うリスクもある。そういう意味では「危険」である。

だが、このような「危険」ならば「汚い」という話とは異なり、介護以外の仕事でもある話だ。
感染症で言えば、新型コロナウイルスの流行により、世間はどこも感染リスクがあることと気づいてしまった。そのため、感染症においてはもはや「介護の仕事だから」というフレーズは不適切であると言える。
また、肉体に負担をかけると言えば、業種問わず、多くの労働者は日々どこしら損傷を肉体に負っていることだろう。それはデスクワーク中心の方々だって同様である。

一方、「危険」という話で言えば、工事現場においては鉄骨が落下してくるといった可能性だってあるし、工場だって機械に巻き込まれての事故だって未だに防げていない。これらはむしろ、介護現場では見られない「危険」と言える。

もちろん、運転による事故リスクもあるし、利用者からの思わぬ行動から怪我を負う可能性であってあるにはある。しかし、それだって仕事としての想定の範囲であり、「危険」レベルで言えば他業種と遜色はないと思う。


■ 何が「キツイ」のかハッキリさせよう


そして最後の「キツイ」だが、これは3Kの意味を調べると1番最初に出てくるが、実際のところ何が「キツイ」のかは不明確である。
と言うのも、介護に限らず、仕事と言うのは大なり小なり「キツイ」ものであり、それは労働者それぞれ異なるものだからだ。

ここで「キツイ」をジャンル分けすると、おそらく次のようになる。

 労働環境
 仕事内容
 人間関係


労働環境については、「休みがとりにくい」「賃金が安い」「肉体労働」「人手不足」そして「危険」といったところだろう。

仕事内容については、「やることが多い」「覚えることが多い」「高齢者とのコミュニケーションが難しい」そして「汚い」が挙げられる。

人間関係については、「利用者との関係性」「職場内の関係性」を中心として、「周囲からちゃんと評価されない」といったモヤモヤ感もあるだろう。

・・・このように、ざっくりだが「キツイ」を少し具体化すると、「うんうん、分かる」とか「そうだよ、本当に大変だなんだよ!」とか「誰も自分の苦労なんて分かりっこない」などという心情が聞こえてきそうだ。


■ 「キツイ」の考え方は人による


しかし、「キツイ」を具体化してみたとき、「体を動かす作業は別に大変と思ってません」とか「高齢者とのコミュニ―ションは好きですよ」とかといったように意見が分かれることがある。

つまり、誰かが「キツイ」と言っても、それが介護の仕事をしている全員が同意するかと言えば、そうでもないということだ。

これは作業に限った話ではない。労働環境だって「完璧な職場はない」と多少の不備を容認する人だっているし、人間関係だって「職場に話が合う人はいないけれど、まぁ仕事だけの間柄ですし」と割り切っている人もいる。
(個人的な感覚だが、ある程度、仕事と割り切っている人のほうが勤続年数が長い傾向にあると思う)

また、「キツイ」「もうやりたくない」と言いつつ、問題解決に向けてスキルを磨いたり、試行錯誤によって「キツイ」を乗り越えている人もいる。(これも個人的な感覚だが、このような人ほど成長して周囲から愛される存在になる傾向にある)


■ どの仕事も立場も、それなりに大変


介護の仕事は3Kと見るのは勝手だが、それは事実であって全体ではないということはご理解いただきたい。
だからと言って「介護の仕事はそこまで大変ではない」と言いたいわけでもない。大変なときは大変だし、常に人手不足であることも事実だ。個々の状態やご家族に配慮したサービスが求められるし、運営上の締め付けだって都度増えている。

だが、それらも俯瞰して見ると介護業界に限った話ではない。
いわゆる現場と呼ばれる環境での労働状況は、どんなにテクノロジーや社会的理解が広まっても今も昔も変わっていない。
それはいわゆるエッセンシャルワークと呼ばれる仕事は、いつの世も「キツイ」「大変」に位置付けられているからだろう。

だからと言って、「キツイ」「大変」と言う人達に対して「では、経営者や管理職になりますか?」と言えば、おそらく「NO」と言うだろう。
それはおそらく、上の立場だって大変だということを潜在的に知っているからだ。高い判断力だって求められるし、人間関係だって変わる。何より、何かにつけて責任を負うことになるのは避けたいと思う心理はあるだろう。
仮に上の立場に就いたところで、その現実に気づいたら早々に退任するに違いない。

つまり、仕事とは、特定の業種が大変なわけでなく、楽な立場というものがあるわけでもない、労働環境・人間関係・仕事内容などそれぞれの要素から見ても、それなりに大変であるという話なのだ。

もちろん、業種ごとに適正というものはある。それでも、本記事を読んで、介護に興味があったけれど大変だと思って職の選択から外していた方は、どの仕事も大変だというスタート地点に戻って、選択肢の1つに加えていただければ幸いである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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