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実務から遠そうな本を本棚に置いておく理由――迷ったときに頼りにしている本

なぜ実務から遠そうな本を読むのか

データ分析にしてもマネジメントにしても、アカデミック色の強い本は現場と距離があってなかなか活用が難しいものです。しかし、私の本棚にはこうした本が何冊か常備されています。

このような本の利点は、Webや軽めのビジネス書で言われることに納得できなかったり、真偽が不明で迷ったりしたときに頼りにできることです。やはり時の洗礼を受けた本というのは安心感があります。いわば軸のようなものになりえます。

例えばデータサイエンス関連では、しばしばベイズ法や効果検証の方法を巡ってWebコミュニティを二分するような論争が起きます。こうした不安を解消するには、どの辺までアカデミックでコンセンサスが取れているのか自分自身で確かめるしかありません。

一方、論点によっては現在もアカデミックでも意見が分かれている場合もあります。このときは、「アカデミックでも意見が分かれている」ということを認識できれば、いろいろと備えることができます。

このように、仕事をしていて難しい課題に当たった場合は、なるべく本から情報を得ながら考えるようにしています。答えが一つに定まっていないような問題こそ、難しい本と対峙しながら自分の頭で考えなくてはなりません。

軸になる本というのは、自分の置かれた状況や学びの進捗状況によって変わってくるものです。今現在私が頼りにしている「実務から少し遠いけど困ったときに頼りになる、軸になる本」をあげてみます。

困ったときに頼りにしている本

データサイエンス一般

データサイエンスにおいては、数理統計の分野では竹村先生の現代数理統計学、ベイズならGelman教授のBDA3やHoffの標準ベイズ統計学、機械学習なら統計的学習の基礎(カステラ本)、NLPならコロナ社の白い表紙の自然言語処理シリーズなどを軸にしています。困ったときに開く本と言ったらよいかもしれません。

因果推論

一方、データサイエンスの中でも因果推論はまだ勉強中の部分が多く、決定的な1冊を選ぶのが難しい状況です。Pearl, Rubin系統の本や計量経済学の本をいろいろを並べて比較することでようやく安心できるという感じです。(それだけ学習の初期段階ということです。)

戦略論

ビジネス系では戦略論、マーケティング、マネジメントなどそれぞれの分野で軸になる本を少しずつ増やしてきました。

まず戦略論では孫子と琴坂先生の経営戦略原論を軸においています。特に孫子は長年手元においている本で、自分用のメモを作って時々読んでいます。ミンツバーグ教授の戦略サファリも重要な本でPdM時代に格闘していましたが、引っ越しのときに手放してしまったのでこれを期に2版を注文しました。クラウゼヴィッツの戦争論は最近やっと手を出したところです。

マーケティング

マーケティングはコトラーの本を軸にしています。長らく戦略的マーケティングを中心においていましたが、最近マーケティング・マネジメントの16版が出版されたので切り替えました。ただし、商売とはどういうものか思い出すために、趣の異なるややアクの強い本も軸にしています。(アカデミックでも古典でもありませんが…)

イノベーション

イノベーション分野ではイノベーションのジレンマを読んでいた時期もありましたが、数年前からドラッカーのイノベーションと企業家精神に切り替えました。この他、シリアル・イノベーター、デザイン・ドリブン・イノベーションをよく読みます。また、自然科学研究者の本も胸に刺さります。この分野を突き詰めるにはシュンペーターをきちんと読まねばと思っているのですが、まだ読み切れていません。

マネジメント

マネジメントはドラッカーを筆頭に中国古典をよく読みます。マネジメントの話題は幅が広く毎年新しげな本が出てくる感じなので、根元を押さえた方が何かとぶれなくて済みます。また、関連分野として自分も含めたモチベーションマネジメントを研究中です。

コーチング・コンサルティング

マネジメントにしてもクライアントワークにしても、誰かにより良い影響を与えて目的を達成する事が必要になります。そこでコーチングやコンサルティングの方法論が重要になるのですが、これは本当に難しいことだと今も思います。ということで勉強中の本をいくつか。

その他

ここまでにあげた本を持ってしても不安が解消しない場合には、古典に逃げ込みます。

まとめ

今回は一見すると実務から遠そうであるものの、困ったり迷ったりしたときに頼りになる本を取り上げました。ここに取り上げた本の多くは、目の前の疑問に対してわかりやすい回答を与えることは少なく、より深く考えたり視点を変えたりするための本です。

その意味で、これらの本はパソコンの横において活用するようなものではありませんが、ともに過ごす時間が長くなるほど愛着がわくものです。

本というメディアの存在感が減少しつつある現代だからこそ、長く付き合える本に投資することには大いに意味があると考えています。


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