マネジャーを目指す人・なった人におすすめする本
私がマネジャーになったのは40歳を過ぎてからのことで、特に早いものではありませんでした。
以下の記事に書いたように、私はガリガリと上を目指すタイプではなく、ジョブとして関心を持っているところにフワフワと動いていくような感じでした。マネジャーもその関心の一つであったというわけです。
しかし、本来、マネジャーのポジション争いや生存戦略はなかなか大変なもので、興味や関心だけでは悩みに押しつぶされてしまうこともあるでしょう。実際、私自身も大いに悩んだ時期がありました。
ということで、このnoteではマネジャーになる前からマネジャーを抜けて部長になるまでの間によく読んだ本を取り上げてみます。
基本的に仕事とチーム運営に絡んだ本を取り上げていますが、個人の経験によるチョイスですのでご容赦ください。
(マネジャーにはMBA的な知識も必要ですが、そちらは今回は網羅していません)
管理職としての仕事を知る
課長やマネジャーはいわゆる中間管理職であるわけですが、その仕事の実態は「なってみないと分からない」という側面もあります。そのため、そこを目指したい人も、偶発的になってしまった人も、いろいろと戸惑うことがあると思います。
その仕事を知るために同僚や先輩から話を聞くことも有効です。その一方で、キャリアに直結する話なので深い話ができないこともあるでしょう。
このセッションでは管理職としての仕事の中身に触れている本を紹介します。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT,アンドリュー・S・グローブ
マネジャーになったばかりの方に「管理職について学ぶときに参考になる本はないでしょうか?」と尋ねられるとき、まず初めに選ぶ一冊がこちらです。かのアンドリュー・S・グローブのマネジメント本。
プレイヤーから管理職となるとき、視点を大きく変えていく必要があるのですが、その点についてシンプルかつ端的に述べています。今も時々読み返す本です。
ハーバート流ボス養成講,リンダ・A・ヒル他
タイトルに「ボス」とあるのでちょっとビビりますが、内容はミドルマネジャーに向けた本となっています。中間管理職は上と下に挟まれていろいろ難儀するものです。本書は、そのあたりのリアルな課題を取り上げたものになっています。
各章でストーリー仕立ての話が導入としてあり、その上で解説や理論的な話が続くというような構成です。そのためとてもイメージがしやすい本です。そもそも中間管理職はどのような日常を送っているのか?ということを想像するのにもよいと思います。
私がマネジャーになる前後によく読んだのは以上の2冊です。その他、折に触れて読んできた本を紹介していきます。
部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書,出口治明
脱プレイングマネジャーのための指南本です。ボリュームも適度で読みやすい本です。元ライフネット生命CEOの出口さんが書いた本で、実践的です。この本の意義は、プレイングマネジャーの問題点を認識できることにあると思いました。
エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論,ヘンリー・ミンツバーグ
戦略論で有名なミンツバーグ教授によるマネジャー論です。この本を買ったのはマネジャーになる数年前のことで、そもそも管理職になりたいかどうか自分の気持ちを確かめるために読みました。
学術的な観点でマネジャーの仕事を掘り下げたもので、これまでにあげた本からすると少し堅めです。決してモチベーションを上げるような本ではありませんでした。
しかし、マネジャーが日々どのような世界で戦っているのか?ということを理解する上ではかなり参考になりました。
スタートダッシュをかけるために
マネジャーになることが決まったらどうしたらよいでしょうか?
会社からの具体的な指示を待つというのも一案ですが、着任前にアレコレ考えておきたいという方も多いでしょう。
新しい職務というのは、概ね「イメージしてたんと違う」という状態になりがちです。しかし、それでも自分自身の頭の中で仮説をもっているのとそうでないのでは、その後の成長に大きな違いが出てくると考えています。
というわけで、スタートダッシュをかけるために読んでおくとよい本を紹介します。
90日で成果を出すリーダー,マイケル・ワトキンス
こちらの本、タイトルを見るとリーダーシップに関する本に見えますが、どちらかというとキャリアが変わったときに波に乗るための本です。セルフ・オンボーディングといってもよいかと思います。
本書で主張するのは、ポジションが変わったときに90日で成果を上げるかどうかでその後の評価や成長具合が変わってくるというものです。いかにも欧米的な考え方に見えますが、重要な視点ですね。
国内でも転職やジョブ型人事が広がってきていますので、今後ますます重要な本になるでしょう。
ダークサイド・スキル,木村 尚敬
禍々しいタイトルが目を引きますが、内容はまっとうな組織論です。中間管理職というか組織人として知っておくべきことが満載です。
この本に書かれていることについて肌感覚で知っているよ、という方も多いでしょう。しかし、私は組織人のお作法に疎く、大いに参考になりました。
ウィニング勝利の経営,ジャック・ウェルチ
GEを長年にわたり成長させたジャック・ウェルチによる経営論です。経営を題材としつつも、若いリーダーに向けたアドバイスが随所に見受けられる本で、中間管理職の方も参考になるでしょう。
出版されたころとは違い、近年GEやウェルチに対する評価が急速に変わってきていますが、ビジネスパーソンとして学ぶべきことは大いにあります。
あなたのチームは、機能してますか?,パトリック・レンシオーニ
こちらはチームビルティングにとても参考になりました。2003年出版とやや古い本で、X(Twitter)に流れてきて購入したものです。マネジャー時代だけでなく、部長になったときも大いに参考になりました。
マネジャーを目指すか悩んだときに
管理職を目指すかどうか。
組織人であれば一度は自分に問いかけたことがある質問かと思います。こればかりは自分で結論を出さなければなりません。
私はどちらかというと若干の関心を持ちつつ流れに身を任せてマネジャーになったのですが、新しい視点を獲得したという意味で良かったと思います。
このセッションでは、組織でのキャリアに悩んでいる方におすすめの本を紹介します。これらは、私がマネジャーにチャレンジするかどうか迷っていた時によく読んだ本です。
エンジニアのためのマネジメントキャリアパス,Camille Fournier
エンジニアに向けたキャリア指南本です。職人としてのエンジニアからスタートし、リーダー、管理職とキャリアが上がっていくと何が起きるのか。その点を深く掘り下げています。
技術系マネジャーを目指す人に特におすすめです。
「権力」を握る人の法則,ジェフリー・フェファー
のっけからアクの強いタイトル。内容もタイトル通りの本になっています。ただし、著名大学の教授が書いているのでロジック的にも妙に説得力があります。
本書の主張を全面的に支持するわけではないのですが、周囲の組織人の挙動を理解する上でも大いに参考になりました。
ルイ・ヴィトン元CEOが教える 出世の極意,マーク・ウェアバー
本屋で見つけて「うわ、強烈なタイトルやな」と思いつつ手に取ってみたのですが、読み始めると面白くてそのままレジに持って行ったという本です。よくある成功した経営者のビジネス本であるものの、目から鱗なエピソードがいくつかありました。
キャリアという点では、自分の強みを軸にキャリアを作るという話と、失敗した時にどうするかという話の二つがとても参考になりました。
部下育成とコミュニケーション
マネジャーになって大きく変わるのが部下との関わり方です。非管理職でもチームリーダーとしてプロジェクトを回していると思います。しかし、管理職としてのマネジャーになると、人の育成や評価に「公式に」携わらなくてはなりません。
これは、マネジャーになる前は些細な違いのように見えるかもしれせんが、なってみると全然違うものです。
このセッションでは部下の育成やコミュニケーションについての本を取り上げます。
1分間マネジャー,K.ブランチャード他
実は本書を読んだのは随分前のことで、確かSEからプロダクトマネジャーにポジションが変わったときに読んでいました。当時は人材育成というよりかはタイムマネジメントの助けを求めて読んだ記憶があります。
それから10年以上経ってマネジャーになったとき、いろいろな場面で本書に書かれていることが蘇ってきたのです。不思議なものですね。
今は新版が出ているようです。名著なのでぜひ。
人を助けるとはどういうことか,エドガー・H・シャイン
人生で初めて「社内アドバイザー」なる仕事をいただいたときに手にした本です。そもそもアドバイザーってなんだろうか、という問いの先に本書にたどり着きました。
本書の内容はチーム運営や上司・部下の関係にも強く関係していることが分かりました。基本的に管理職は部下の仕事を通して成果を上げる必要があるからです。内容はとても示唆的ですのでぜひ読んでみてください。
関連図書として、同著者の「謙虚なコンサルティング」という本もおすすめです。
リーダーを目指す人の心得,コリン・パウエル
かのコリン・パウエルによるリーダーシップ本です。自伝的でもありますが、リーダーや管理職へのヒントが散りばめられています。この本はいろいろな方におすすめしてきました。
時間がない方はパウエルのルール(13カ条)だけでも見てみてください。きっと詳しく読んでみたくなるでしょう。
フロー体験 喜びの現象学,M・チクセントミハイ
こちらも名著です。人はどのような場面でモチベイトされ、パフォーマンスが上がるのか。学術的でボリューム大きいですが、得るものはあります。その効用はセルフマネジメントのみならず、人材育成に面白さを持ち込むためのヒントを与えてくれます。
貞観政要,呉 兢
帝王学の古典と呼ばれる貞観政要。ここまでとガラッと雰囲気が変わりますが、リーダーになる方は一度読んでみることをおすすめします。組織マネジメントの本質が書かれているように感じています。
貞観政要は今回ご紹介したちくま学芸文庫の他に、講談社学術文庫版もあります。ちくま学芸文庫は抜粋版で読みやすく、初めて読む方におすすめです。深く知りたくなった方は講談社学術文庫版をどうぞ。
あらためてマネジメントとビジネスを学ぶ
マネジャーは、末端の管理職として経営に参画することになります。そのため、プレイヤーとして仕事をこなすスペシャリストから、組織として成果を上げるという視点の切り替えが必要になってきます。
この点は冒頭のマネジャー本でも出てくる話ですが、それを色濃く自分にインストールするにはやはり経営視点の本を読むのがよいでしょう。
このセッションでは、経営的なマインドセットを醸成するのに役立つ本を紹介します。ただし、MBA的な本は入れていません。
なぜマネジメントなのか,ジョアン・マグレッタ
まず1冊目は思い入れのある本から。
本書を買ったのは社会人になって1年目のことでした。田舎から出てきていきなり社会人になり、周囲のイケてる同期を見て「やばいな、おれ何も分からんやん」と焦っていたときに手に取ったものです。
本書は経営やビジネスの視点を学ぶ上で大いに参考になりました。ビジネスの経験が長い方は当たり前じゃないかと思うことも沢山書かれていることでしょう。
キャリアの節目にたまに読み返す本です。
マネジメント,ピーター・ドラッカー
いわずと知れたドラッカーのマネジメント。日経BP版は4分冊とボリュームが大きいですが、よく読むのはこちらの1巻目です。
シンプルでズバッと刺さる言葉が多く、自分自身やチームの課題に切り込んできます。また読まないとなぁと思っています。
プロフェッショナルマネジャー,ハロルド・ジェニーン
ユニクロの柳井さんが推した本ということで、ご存じの方も多いと思います。経営者本として有名ですね。
こちらの本、実はあまり読みこんでいない本です。しかし、「経営者は経営しなくてはならぬ!」という一節を強烈に覚えていて、戒めにしていました。マネジャーの立場でいうと、マネジャーはマネジメントせよということですね。
自分の軸を持つ
難しい判断を迫られたときどうするか――。
これはマネジャーに限らない話ですが、中間管理職というややこしいポジションでは答えに窮することもあるでしょう。
そうした状況で勇気をもって何かを決めるためには、自分自身に軸を持っている必要があると思います。哲学といってよいかもしれません。
ということで、ここからは個人色が強くなることを承知で、軸としてきた本を紹介します。あなたも自分の軸を作る面白くて困難な道を歩いてみてください。私も道半ばです。
プロフェッショナルの条件,ピーター・ドラッカー
私の仕事人としての軸づくりはこの本から始まりました。
本書は学生時代に「プロって何だろう?」という素朴な疑問から手に取ったものでしたが、その後長きにわたり読み返しています。
孫子
戦略論として古典中の古典である孫子。戦略から戦術まで幅広い知恵が詰まっています。その一方で、人や社会に対する普遍的な物差しを提供する本でもあります。
論語
いわずと知れた論語。人の本質を突いたもので教訓に満ちています。人とのコミュニケーションがすべてともいえるマネジャーこそ読むべきだと思います。
老子
ある意味論語とは対照的とも言えますが、何度も読み返している本の一つです。より大きな視点を得たいときや、答えのない問いと向き合っている時に読んでいます。
まとめ
今回はマネジャーを目指す人に向けて参考になる本をまとめてみました。あくまで私が読んできた本ということで偏りあるものかもしれませんが、1冊でも参考になれば幸いです。
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