人に誘われたので、2000年代中頃にSNSを始めた。 そんなに興味はなかったが、書くことはあったのでそれなりに面白かった。 反応が付けば尚更面白い。 2000年代と言えば情報革命の後で、デバイスも小型になったし、インターネット環境を外に持ち出せるようになった。 どこにいても、世界中に自分の情報を発信できることに便利さを感じた。 発信することさえあれば、SNSの世界では、生きていけるのだ。 2010年代になって、テキストだけではなく、写真や動画、あらゆるものがSNSに格納で
母は労働に対価を支払う人間であった。 母の方針では高校生になるまでは、おこづかいはいらない。小学生のうちはおもちゃはクリスマスとお誕生日だけ。他、必要なものは交渉で買うか買われないかが決まった。 小学校の3年生ごろだったか、私は母について街に出た時、雑貨売り場に飾ってあったポシェットに胸を射貫かれた。いわゆる一目ぼれである。少し自我の出る年齢なのか、自分で選んだものを身に着けたかった。 「お母さん、これ買って」 「鞄ならいくつか持っているでしょ」 「こんな、赤くて丸いポシェ
あさり。二枚貝である。 ボンゴレに入っているあれである。 酒蒸しにすると美味しいあれである。 味噌汁にも定番のあれである。 私は、あのあさりが大好きなのだ。 私は、ときどきスーパーであさりを買う。 時々、と言うのは、調理に少々の手間がかかるからである。 さっと調理したい時に、あさりは向かない。肉の方が遥かに楽に調理できる。何と言っても、あさりは「砂抜き」をしなければいけない。あさりはあんなにポピュラーな貝なのに、下準備の必要な食材なのだ。 ちょっと暇があるとき、スーパーの
「岡崎さんって、文章書くの?」 大学三年になり、ゼミが始まってしばらくしたころに女学生のKさんから聞かれた。Kさんとはそれまで話したこともなかった。 「え?なんで?」 それはあまりにも唐突な質問だったので、聞き返すしかなかった。 「”創作”の授業に出てるから、私も出てるの」 「へえ、そうなの」 なんだ、そういう事かと思ったが、私にとってその”創作”の授業は、あまりにも酷なので、落としてしまおうかと思っている講義だった。 当たり前の事なのかもしれないが、授業内容は自分の作品