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嫌いにならないための勇退


 ロックバンドのメンバーが原因不明の病でドラムを叩けなくなり脱退したそうです。

手や足などの筋肉がこわばって動かない、もしくは、意図せず動いてしまって制御できなくなり、それまで当たり前のようにできていた動作ができなくなる病気。熟練したスポーツ選手やミュージシャンなどに現れることが多く、…(中略)… 庄村聡泰も、“ミュージシャンの職業病”と呼ぶべきこの病気に見舞われた一人だ。
…(中略)…
「日常生活は問題ないのですが、ドラムを叩くと右足が思うように動かせないんですよ。リハ―サルでは大丈夫でも本番でいきなり動かなくなることもあり、ステージに立つのが恐怖でしかなくて。ただ、しばらくはメンバーにも言えなかったですね。(症状が出ていることを)自覚したくなったし、人に知らせることで、それが現実になってしまう感覚があったので」
上記記事より

 率直な感想は、私も同じ、ということ。

 「頸肩腕障害」という手話通訳者の職業病で、特に右腕や手がうまく動かせなくなり、休職しているからです。

症状の始まり

 5年ほど前急激に右腕が痛くなりました。

 当時は言える状態ではありませんでした。一つは “自覚したくなかったし、人に知らせることで、それが現実になってしまう感覚があったので”。
 もう一つは職場環境のせいで、他の職員が既に順に休職している状態だったため。

「病気じゃない」

そう信じると、数ヶ月後には痛みを感じなくなりました。


体調の異常、そして再来

 数年して発熱や嘔吐等、体調が不安定に。職場環境が改善されてからは月に一度は発熱するようになりました。改善で気が緩んだのかもしれません。コロナ禍には毎日の検温で常に37.5℃前後に。原因不明の熱で通訳にも行けなくなりました。

 更に追い打ちをかけるように、再び右腕がおかしくなりました。前腕は痛く、手は思うように動かず、まるでマジックハンド。文字も書けなくなり、握力は6kg(通常35kg程度)、つまみ力は計測不能(通常3.5kg程度)に。その頃にはもう周りも気づき始め、先輩の勧めで受診し即ドクターストップ、こうして休職となりました。


嫌いにならないための決意

 ドラマーの方は、最終的に音楽を嫌いにならないためにドラムを辞める決意をしたそうです。

 ドラムにこだわることで、音楽を続けることが苦痛になり、音楽自体を嫌いになってしまいそうだったことが一番怖かったんです。“ドラムを叩ける自分”よりも“音楽を好きな自分”のほうを優先させて頂きたかったんです
…(中略)…
もちろん治療やリハビリもやったんですけど、超単純なフレーズを1分続けることもできなくなって『これはどう考えても無理でしょ』って笑うしかなくて。いろいろと時間をかけて考えましたけど、ドラムを叩けない、不完全な自分を受け入れるしかないと思ったんですよね。
記事より抜粋

 休職して一年、私も手の感覚が元に戻る気がしません。

 手話はできます。ろう者と手話で話すこともできます。
ただ現場では同時通訳。常に頭で理解し翻訳しながら緊張状態で継続して行います。手が瞬間的にうまく動かないですし、不安を抱えながらプロの通訳としてやっていくことは難しいと感じています。

 “手話通訳ができる自分”よりも“手話を好きな自分”のために、私も受け入れる時なのかもしれません。

新たなフィールドへ

 ドラムを辞めた後、彼はファッションディレクター、スタイリスト、音楽プロデューサー、ライターなど、幅広いジャンルで活動されているそうです。私も今まで身につけたスキルを活かし、より活躍できる新たなステージを探していきたいと思っています。

 今は様々な分野を勉強中です。noteで皆さんから色々吸収しつつ、逆に通訳をしている自分にしかできない発信もしています。

通訳ができなくても全て終わった訳ではない

そう信じています。


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