今日やったこと 第1016話・11.8

「朝の空を見ると、太陽はゆっくりとどんどん顔をのぞかせたなぁ」今日は早起きをした。今は海岸にいて太陽が水平線の近くに来ている。そして雲もないからオレンジ色に空が染まっていた。

「本当に空の色は同じだ。違うのは方向だけか」朝日が昇る時間に起き上り、1日が間もなく終わろうとしている。そうこれは西の方向で、朝日そっくりに、夕日が間もなく水平線に向かって沈もうとしている時なのだ。

「今日は何してたっけ」今日はいつもよりも早起きした。だから昼間の体感時間がいつもより長い。「いろいろやったつもりだけど」
 そう思いながら今日やったことを改めて振り返る。「暗いうちに起きて東の空から朝日を見た」朝は東の方、山の間から太陽が出てきている。
 今いる場所とはずいぶんと離れたところだ。そう、今は旅の最中。今日は移動と途中の観光を楽しんだ1日。

 暗いうちに宿をチェックアウトし、朝日を浴びた後、近くのお店に行って朝食を食べた。「確か朝食セットだったかな」焼き魚とみそ汁、ご飯のセットだ。

 それを食べた後はバスに乗った。バスからの風景を最初はゆっくりと眺めていたが、下車するのが3時間後である。早起きしたこともあり、いつしか眠っていた。眠ってはいるが、眠りが浅いのか1分おきくぐらに目が開く。 
 そうするとバスはどこかを移動している。今どのあたりかと思う間もなく記憶が飛ぶ。しばらく寝ているのだけど、寝ているという意識がない。気が付けばまた視界にはバスの中が見えるが、明らかに先ほどとは移動しているのだけはわかる。

 こんなことをしばらく繰り返すと、ようやく目が冴えたようだ。目的地まであと30分を切っているよう。まもなく下車する町ということもあり、その光景をじっくりと眺める。別にこの街だけ特別何かがあるわけでもないのに、微妙に違う何かがあるのだろう。不思議と新鮮に感じるのだ。

 こうしてバスターミナルに到着した。バスターミナルから歩く。「この街で見ておくべきところはと」あらかじめガイドブックやネットで情報を調べている。だから迷うことなく複数のスポットを回った。「迷う時間ロスはないが......」
 ふと、予定調和のようなスポットの移動に疑問を持つ。旅をしているというより、ベルトコンベアーに乗った製品のような立場になっているのではという気がした。「本当はお昼ここにしようと思っていたが」
 ここでお昼を食べる予定の食堂以外のところを探してみることに。ネットでの口コミも見ずに探すというのは、今時、賭けに出るのと同じ。だがその方が旅の醍醐味、一期一会の出会いがあるかもしれないと思ったのだ。

 だが、それはすでに事前情報を調べて行動することになれた身としては無謀であった。結局「ピリッと」来る店などない。「諦めよう」1時間近く歩いて結局元々の目的の店に入る。
「これで、時間がないな。あそこは諦めよう」結果的に間違っていたのか?この日の午後に回るスポットを一か所諦めることにした。

 こうして遅い目の昼食を食べる。スポットは諦めたが、一時間彷徨ったことは食事には良かったようだ。ずいぶんと空腹が進んだのか、一口食べると急に利き腕が止まらなくなる。それに歩調を合わせるように口も歯も喉も容赦なく動いた。こうして空腹と元々の料理の旨さの相乗効果により予定よりも早く食事が終る。

「次のバスまでどこで時間を」予定時間に乗るバスの時間まであと1時間、2時間あればあのスポットが見られたのにちょっと残念。だがこうなるとちょっと惜しくなる。「もう今度いつ来れるかわからないのに!」
 ちょうどそのとき、一台のタクシーが目の前に現れた。とっさに手を挙げてタクシーを止める。「ここまでお願いします」20分以上かけて歩くところをタクシーに乗ること5分で到着。「20分で戻ってきます」と言って、帰りもタクシーで戻ることにした。余計なお金はかかったが、それでも一期一会のスポットを予定通りみられたことは、その価値以上のものを感じる。

 帰りもタクシーで戻ったので、十分次に乗るバスの時間に間に合った。そのままバスに乗る。今度の目的地までは2時間余り。到着は午後4時ごろだろう。午後は食事の後も動き回ったが、不思議と睡魔は襲ってこない。ずっと起きたままバスからの車窓を楽しむ。
 このバスは西方向にある海に向かっている。今日はその海岸近くの小さなゲストハウスで宿泊予定だ。

 こうして目的地に到着した。空はそろそろ暮れようかという雰囲気が出ていて青空がやや淡い色になっている。そのまま宿に向かう。宿についてもベルトコンベアー式というわけではないが既に予約を入れていたので、問題なくチェックイン。荷物を置いて一息つくと海岸に向かう。

「こうして、夕暮れの海岸を見られた。朝日と夕日の両方がみられるとは良い一日だった」
 今日やったことを振り返りながら思わずつぶやく。だが一日はこれで終わりではない。「今日は夜の天体ショーが残っている。2022年11月8日の夜は皆既月食、それから天王星食もあるんだからな」

 今日の夜ここに来たのは天体観測で最適な場所。宿泊するゲストハウスは天体観測のイベントを行うから宿泊場所に選んだほど。

「まずは肉眼で月食をみてそのあと望遠鏡でだな」いよいよ夕日が、海の先の水平線に接触しようとしている姿を、じっくり見ながら静かにつぶやいた。

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