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4. 鳥の本能

 戦闘機パイロットのハンス=ヨアヒムは二度と発砲するのをためらわなかったし、見たところ彼の撃墜の記録はたまり始めたように見える。着実に、1週間に約1機の割合で、7機と一級鉄十字章を得るまでスコアを加えていった。現在、飛行中隊の中で最高のパイロットの一人だと認識しているとはいえ、特にそれを気に入ってはいなかった。彼は深刻すぎるようだったし、没頭しすぎているようだった。
  バトル・オブ・ブリテンで戦術を頻繁に議論することを除いて、彼はベッドに横たわって静かに自分自身の考えに没頭した。空軍はあまりにも多くの戦闘機やパイロットを失っていた。Der Dicke(文字通り「デブ(愛と食欲の日々)」ゲーリングのニックネーム)は、戦闘機が爆撃機を護送する際に自分の仕事をしていなかったと猛烈に悪態をついていた。
 「でも、その戦術は全て間違っている!」
  ハンス=ヨアヒム・マルセイユは叫び、23歳以上のパイロット仲間の誰もが彼に耳を傾けた。
 「柔軟性がなさすぎるんだ。前方に戦闘機、爆撃機の各側面に戦闘機。互いの邪魔になるほど、僕らは爆撃機と密接に結び付いている。戦闘機は爆撃機のために自由でなければならない。彼らが僕らを破壊するのではなく、僕らが英軍の編隊を途絶しなければならない。何故、いつも個人としてではなく飛行中隊として戦う必要があるんだ? 僕らは散り散りにならなきゃいけない。攻撃して、一機ずつ仕留る!」
  自由はハンス=ヨアヒム・マルセイユが望んだものだった。自由飛行。個々として、敵の攻撃に対して彼の飛行技術と射撃技術全てを戦わせるための自由。それにもかかわらず、彼はしばらくの間、この自由を得られなかった。

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