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【ショート・ショート】外反母趾のない未来のお話

21xx年…。

ぼく「ねーお母さんガイハンボシって何?おばあちゃんが昔はそういうのがあったって言ってたんだけど。」

お母さん「昔は、合わない靴を履いて足の骨を傷めてしまうという事故があったのよ。長期間履いて、足の親指の付け根が曲がってしまう症状のことなの。女性に多かったみたいね。」

ぼく「ええ?!足の骨を傷める?昔の人って、なんでわざわざそんな靴を履いてたの?」

ぼく「見た目が可愛いとか、安いとか、いろんな事情があったみたいよ。」

ぼく「ええー!僕、学校で、『靴を選ぶときには、見た目より安さより機能を重視せよ』って習ったよ。小学生も知ってるのに。」

お母さん「そうなの。今は、学校でも習うし、そんな人誰もいないわよね。お母さんが生まれる少し前に、外反母趾の人たちが原宿でドミノ倒しになって救急車で運ばれる事件があって、大きく見直されたのよ。」

ぼく「わぁ、こわい。」

お母さん「それ以来そんな靴が規制されて事故もなくなって、近年、全日本足を守ろう協会も『外反母趾終息宣言』を出したの。昔の人は、無知だったのね。」

ぼく「そうなんだ。全日本足を守ろう協会、つまり全足協の人たちの講演会はこの間学校で聞いたよ!はいひーる、っていう凶器について習った。昔の人はそういうのをわざわざ履いてたって。」

お母さん「そうなの。外反母趾もハイヒールを履いたことによる悪影響の一つなの。踵が高いから体全体への負荷が高くて、ハイヒールを履くことは自傷行為の一種だったと言う説もあるくらいね。今はもう普通のお店には売ってないし、厳しいハイヒール訓練の末ハイヒール免許を持ってる女優さんが、時代劇とかで、全足協の監視のもと短時間履くだけだけどね。」

ぼく「うん、見たことある!『専門家の指導のもとに当時の服装を再現しています。真似をしないでください』って注意が出るよね。まあ、言われなくても、痛そうだから履きたいとは思わないけどね。それにしても、靴で足を傷めるなんて昔の人は本当に変だなぁ。今は外国にもないよねぇ?」

お母さん「ないわ。『世界足の健康を守ろう宣言』が数十年前にWHOから出されたから。最近日本も、『国際足の健康を守ろう条約』を批准したわね。」

お姉ちゃん「私それ中学校でやったわ!高校受験にもよく出るって。その宣言を出されてから、陸上の短距離・長距離の世界記録のタイムが有意に良くなったのよね。」

ぼく「お姉ちゃんはよく知ってるなぁ。でも、普段履いてる靴が走るときのタイムに関係することは僕だって知ってるよ!」

お母さん「その通りよ。国立足の健康研究所の足元健男さんたちの研究グループが、お母さんが学生のときに発表したの。ちなみに、走る競技だけじゃなくて幅跳び、高跳び、ハンマー投げなどの記録も伸びたのよ。小中高校生の平均陸上記録も伸びて、社会全体の足の健康が向上することよって、ピラミッドの頂上、つまり世界レベルの陸上選手たちの記録も高くなったのよ。足元さんの研究は将来のノーベル足賞にふさわしいと言われてるわね。」

お姉ちゃん「知ってるわ。ちなみに、高齢者の転倒事故も減ったのよね。」

ぼく「お姉ちゃんはなんでも知っててすごいなぁ。じゃあさ、お姉ちゃんはあれ知ってる?世界健康衣類宣言第一項!僕言えるよ!せーの!」

ぼく・お姉ちゃん「「『衣類は常に人間の健康を維持・促進するものでなければならない』」」

ぼく「なーんだぁ、やっぱりお姉ちゃんも知ってるかぁ」

お姉ちゃん「当たり前でしょう?小学校でも習ったけど、中学校でもやったわ。えっへん!」

ぼく「ははあー。おみそれしましたー。」

お母さん「みんなよく勉強しててえらいわね。ほら、そろそろ足指運動の時間よ。毎日足指筋トレをするんでしょ」

ぼく・お姉ちゃん「「はーい」」

ぼく「今日は足指で100回グーパーするもんね!足握力30kgを目指すんだ!」

お姉ちゃん「私も足指ダンベル3kgに挑戦するわ。ついでに、ふとももとふくらはぎを引き締めたいもの。」

……

近々こんな未来がくる…かもしれない。

※フィクションです。前回記事でインスピレーションを受けて自然と出来上がりました。コントです。この話に出てくる人物・団体名は実際のものではありません。

▼前回記事

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