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楽しくて幸せな撮影現場

前回の記事に付随して書きたいことがあります。

 
エディ・レッドメインの主演作『リリーのすべて』ですが、エディはこの映画で、世界で初めて性別適合手術を受けた実在の人物であるリリー・エルベを演じましたが、トランスジェンダーの女性を演じたことは「間違いだった」と、後悔しているそうです。
エディの演技は素晴らしかったですが、この役はトランスジェンダーの女性が演じるべきだったという批判の声も上がりました。
エディは「今だったら引き受けないです。当時は誠心誠意演じたけれど、あれは間違いだったと思います。配役について問題が生じるのは、多くの人が交渉の場につくことすらできない状況にあることが原因です」とコメントしています。


さて、楽しい雰囲気の幸せな撮影現場について。
 
5月13日の「あさイチ」を見ていたら、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中の中川大志さんがゲストで出ていて、主演の小栗旬さんの座長ぶりを絶賛していました。
 
小栗さんはスタッフや共演者との関わり方が素晴らしい。そのおかげで雰囲気が本当に良く、現場が全くピリピリしていないので、すごく楽しい。
 
中川さんは、そう語っていました。
大河ドラマの撮影現場がピリピリしないことは、すごいことなんだと知りました。
時代劇の撮影は大変だけれど、雰囲気が良くて楽しいのは、とても健全ですよね。
 
その話を聞いて、『アウトレイジ』シリーズの取材をした際の、加瀬亮さんのお話を思い出しました。
加瀬さんが演じた石原には、バッティングセンターのボールが飛んでくるところに置かれた椅子に縛られ、死ぬまでボールをぶつけられるという、非常に激しいシーンがありました。
インタビューした時、あのシーンは大変だったでしょう、痛い思いはしなかったか、加瀬さんに聞くと、全く痛い思いなどしなかったし大変でもなかった、むしろすごく楽しくて、カットがかかるとみんなで笑っていた、とても楽しい現場だった、と教えてくれました。
過酷に見える内容でも、現場は楽しかったことが分かりました。
 
『海街diary』で是枝裕和監督にインタビューした際、その少し前に別の作品の厳しい某監督の話を聞いていたこともあり、是枝監督に演出方法について尋ねると、監督は一番上にいる存在だと思われているが、そう思われているからこそ権力を持ってはいけない、スタッフ・キャストの協力があってこそ撮影が成り立つので、厳しくするなんてとんでもない、とお話しされていて、なるほどと思いました。
 
『空白』で吉田恵輔監督(よしは土に口)にインタビューした時は、それぞれ役に合っている演技の巧い俳優をキャスティングしているので、撮影は非常に円滑に進み、監督があれこれ言う必要はほとんどなかった、とお話しされていて、キャスティング段階から円満な撮影現場になることを計画することも大切なんだと知りました。
 
『孤狼の血 LEVEL2』の白石和彌監督には、ハラスメントを防ぐために実施されたリスペクト・トレーニングについて伺いました。この試みも幸せな撮影現場をうみ出すので、たとえ役柄や内容が過酷でも、カットがかかれば俳優が笑顔になれます。
 
楽しくて幸せな環境で撮影が行われるのは、とても健全なことだと思います。
どうか俳優たちが、難しい役を演じる際は苦しむのが当たり前だと考えないことが当たり前になりますように。
そして、監督のもとで働く全てのスタッフも苦しまずに撮影するのが当たり前になりますように。

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