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それ以上でも、以下でもなくて



学生の頃から、毎日決まった誰かと一緒に過ごすことができなかった。


ひとりふらふらふらとして、誰かとあと一歩踏み込むことが憧れでもあったし、恐れでもあった。


グループでディズニーも行ったことがない。〇〇ちゃんの誕生日会もしたことがない、恋の話を共有したいと思ったこともなかった。


色んな人と少しずつだけ話をしていたかった。


ぐいっと距離を縮めてくれる子が現れると、途端に逃げたくなってしまったし、この距離感のままでいられたらいいなって願ってた。


『きょう学校こないの?』
と連絡をしてくれるのが重荷だった。


いるかいないかわからないぐらい、私を忘れて欲しかった。


一番仲良い子とかは他の子にして欲しい、
たまに寂しくなって私ぐらいがちょうどいい。
そうやってニーズを満たして欲しかった。



でも、大人になるとだいぶ気が楽になった。数年に1回ぐらい思い出してくれるぐらいの時間軸がすごく絶妙でありがたい。


きっと私じゃない誰かでもよかったと思うけど、そこにたまたま私という選択肢があるぐらいが一番嬉しい。


『たまたまこの街に来たからさ』
『なんとなく思い出して』
『どうでもいい話なんだけど』
『誰かにも言えなかったんだけど、聞いては欲しかったんだよね』
『高校卒業以来じゃない?』


一番の理解者とかはきつい、あなたに好きって思われたくない、どっちでもいいぐらいの感覚で私が存在したい。


きっとこの話も何回目かなんだろうな〜と思いながら完成度を高めた話を聞ければそれでよかったし、
話したくないなら話さないでよかった。


仲良いからこそ話しづらい話をするのに私を使って欲しかったし、誰かと会いたいようで会いたくない日に電話されたらそれはそれで嬉しかった。


数年ぶりに会って、昨日仕事辞めてきたわって報告されるのも嬉しかったし、『最近旦那がさ、どうしようかな』って言う話を結婚した報告をされてなくてされるのも全然どうでもよかった。


その代わり、私の話もあまり多く聞かれたくない。


誰かと付き合うたびに報告したいなんて思ったことがないし、『彼氏いるの?』って聞かれて、答えるぐらいの共有事項にどこで出会ったかとか何ヶ月かとかを答える方が煩わしかった。


誰かに何かを相談したいって思ったこともないから、『え、聞いてない』ってしゅんとされるのも悲しかった。

『ちさきは、一番優しくて一番冷たい人だね』


どこまでいっても内側の方に入れた気がしない。
かつて長く付き合った人に言われた。

せめてその言葉の順番が逆だったら良かったのにな。私を見透かしたように灰色に笑ってた横顔をもう覚えていない。



公園に行って、缶チューハイを買って海を眺める。
話をしたければ話してほしいし、ただ黙り込む4時間もそれはそれでありだと思う。


君の光の当たってない方の側面とたまに一緒にいたい。


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