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素朴な花瓶が放つ、作為のないアート性〜北の大地から来たヒマワリとの邂逅(かいこう)

2020年の6月に入った週末、要請により休業していた古道具店「ウームブロカント倉敷美観地区店」が、1カ月ぶりに営業再会しました。店内を覗いてみると、新しい展示品が増えていました。骨董品市場はまだ閉鎖されているので、個人の家筋から直接買い入れたものだそうです。

店内を見渡していると、不思議な存在感を放つ素朴な花瓶が目に入りました。店長の岡さんによれば、江戸時代に東南アジアで粗製濫造されたものだろうとのことで、粗い粘土が使われ、密集して焼き上げられたため、焼き物同士が接触して、肌に「あばた」ができています。

IMG_5249のコピー

焼き上げる前に陶工が手で花瓶の下の部分を持って、無造作に、ざぶんと釉薬に浸けたのでしょう、釉薬が浸かる範囲に陶工の手の身体性が顕れています。成分や厚さが不均一な釉薬を使ったせいで、黒褐色から深緑のグラデーションになっています。

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そんなざっくりとした造ですが、それがかえって花瓶を表情豊かにし、味わい深さを醸し出しています。

美術工芸品の緻密に作り込まれた端正な綺麗さとは違った、名も無き陶工による、作為のないアート性を感じました。


番外編

花瓶に、倉敷の花屋アトリエ・トネリコで出会った、北海道いわみざわ農協で愛情たっぷりに育てられた、北の大地のヒマワリ、「サンリッチライチ」を生けてみました。

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ヒマワリは不思議な生命感を放ち始めました。花瓶にも艶が出ています。

長大な時空を越えた出会いによって、ヒマワリの生命力にスイッチが入ったのでしょうか。



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