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『ボクたちの人生はSNSで変わった』【浅生鴨×燃え殻トークイベント】【前編】 (文:こたにな々)

『伴走者』刊行記念 「ボクたちの人生はSNSで変わった」

浅生鴨さん × 燃え殻さん トークイベント

------------------------2018.06.17 青山ブックセンター本店

浅生鴨  Twitter: @aso_kamo

1971年 兵庫県生まれ。作家・広告プランナー。NHK職員時代に開設した広報局ツイッター「@NHK_PR」の ”中の人” 1号として人気を呼ぶ。2014年NHK退職後は作家活動を中心に広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がけている。2018年3月に新刊となる『伴走者』を発売。

燃え殻 Twitter: @Pirate_Radio_

1973年生まれ。テレビ美術制作会社で企画・人事を担当しながら、ツイッターのつぶやきが評判を呼び、cakesでの小説連載を経て、著書『ボクたちはみんな大人になれなかった』を刊行。糸井重里さんをはじめ各著名人が絶賛、一躍人気作家となる。コラムニストとしても活躍。

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”ツイッター” というSNSがきっかけで、話題と共に作家の道に進むことになったお二人の共通点

『ボクたちの人生はSNSで変わった』をキーワードに掲げた今回に、燃え殻さんの「はぁーー」という大きなため息ではじまった対談。

「SNSで人生変わりました?」


鴨:変わりました?

燃え殻:”変わりませんでした”って言ったらすごい嘘になっちゃうんで(笑)すごい変わりましたね。ツイッターをやっていなかったとしたら、たぶん小説は絶対、絶対書いてなかったと思うし。書いてなかったという事になると、糸井(重里)さんにも、鴨さんにも、お会いしてないし、ラジオもやってないという...だとしたら、すごく変わったなぁって思っています。

燃え殻:あんまりSNSをやった事によって変わりましたって言うと...あんまり言わないって事が礼儀みたいになってる。

鴨:礼儀?

燃え殻:皆言わないじゃないですか。それがこう僕の中では変わったなぁって思って言ってると「調子乗ってんじゃねえ」って言われるんで

燃え殻:ほぼ同じような仕事場で同じようなメンバーでお客さんも同じような方々、でもTVの技術制作も僕はやっているので、お客さんもスタッフもどんどん入れ替わるんですよ、皆辞めちゃったりとかして。ただ同じような導線の中で僕は20年くらい働いていたので、その合間だったり移動だったりとか寝る瞬間だったりとかそれは仕事場だったり車の中だったりとかしたんですけど、その時にツイッターをやっててそこで読んでくれてたりだとか、茶化されることもあるけど、そういう反応がある事、僕は生活していたら絶対にお会い出来ない、同じ空間にも居る事が出来ない人達に会う機会っていうのは僕は確実にSNSをやった事で得られたんで、それはすごく良かった。で、ヤな事は同じくらいあって、砂糖と塩どんどん足していったみたいな...良い事、悪い事、良い事、悪い事...みたいな。

鴨:ただ濃くなっていく?

燃え殻:糖尿っぽい。

会場:(笑)

燃え殻:良い事、悪い事もあったけど、変わったか変わらなかったかって言ったら、絶対に変わりました。で、どちらかと言うと辛いのは慣れないんですよ、全く。良い事はすぐ慣れるじゃないですか(笑)

鴨:調子に乗るからね(笑)

燃え殻:こないだもツイッターで「調子に乗ってるっていうのを僕は気付いた」みたいな事を...

鴨:自分で?また余計な事を(笑)

燃え殻:俺、気付いたんですよ「あ、調子に乗ってる」って。例えば糸井さんとかが話掛けてくれたりだとか、そういう方々と居る時に普通に「はははー」って笑っちゃうんですよ。そういう感じではあるんですよ気持ち的には。でもこれはちょっと...ちゃんとしよう...って...(小声)「ちゃんとしようって思った」って言ったら、ある芸人の方から「生意気だ」って言われて(笑)ちゃんとしようと思ったのに!!

会場:(笑)

燃え殻:自覚は無かったけど、鼻上向いてた可能性あるなと。慣れはダメだと思って!...えーと、はい。

鴨:でも、いちいちそう言われるの大変だねー。僕全然言われないよ。

燃え殻:僕は出が悪いんですよ。ツッコミどころ満載だし。

鴨:たぶん僕は気付いてないんですよ。興味ないから。

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「文句言ってくる人に興味ある?」


燃え殻:これね、無いって言わなきゃいけない所だと思うんですけど、俺ね、あるんですよね!

鴨:相思相愛じゃん!

燃え殻:そう。だから俺呑みに行きてぇなって思った事ありますよ。一番最初にマイクを使って人の前でお話させて頂くって機会を与えてくれたのが糸井さんの『ロフト』の会だったんですよ。古賀(史健)さんと田中(泰延)さんと永田(泰大)さんで...

ほぼ日刊イトイ新聞

鴨:物を書く人4人で、(和田ラジヲ『小ネタの恩返し。』の)文庫本解説をそれぞれ書いた人達を集めてロフトでやったイベントですね。

燃え殻:その時に僕がそこに登壇するって話になったら「オマエの歯を全部抜いてやる」とか「全部の骨を折る」って人が。

鴨:全部の骨?200何部ありますけど(笑)

燃え殻:それで僕これは他の人も居るから、僕ひとりだったら良いですよ。や、良くないけど(笑)でも他の人も居るから一応正式に言ったんですよ。「たぶん折られないと思うんですけど、全部の骨を折られる可能性があります」って。で、田中さんが「俺が守る」ってそういう訳分かんない事言ってくれたんですけど(笑)

燃え殻:そしたら一年後くらいにメールが来て「あの時はすいませんでした」って。

鴨:その人の中で何が起こったんだろうね(笑)

燃え殻:「許してもらえないかもしれないんですけど、今は応援してます」みたいな。すごい右から左に...。応援するって方が僕は怖いです(笑)

会場:(笑)

燃え殻:で、「ありがとうございます」って言ったらパッとアカウントが消えたんです。

会場:ひえーーーー

鴨:最後幽霊ばなしみたいに(笑)

燃え殻:でも消えた時も含めてなんか分かるって言うか、なんだろ...一歩間違えたら僕もそっちだったなって、僕は思ったんですよ。

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CINRA『#もしもSNSがなかったら』のイベントについて


SNS展「#もしもSNSがなかったら」(終了しています)


鴨:SNS展でも今みたいな事言ってたの?SNSがあったから自分はこうなったみたいな...映像を作ったの?

燃え殻:そうです。あれはすごく自由でふわっと集めるような会だったんで、何やってもいいから、僕は会った事ないようなゆうこす(菅本裕子)さんとか能町(みね子)さんとか出て、すごく居場所がなくてまた。どうしようかな何やろうかなと思ったんですけど、人としてここは...

燃え殻:まずSNS展に出ようと思ったのは...『SNS展』ってまずダサいじゃないですか名前が。ただ、さっきのSNSで変わったのかと言われたら「別にそんなんじゃないですよ別に僕はそんなんじゃないですよ」みたいな読モライターみたいな感じに俺、言えなくて。変わったし。”SNS”って名前もそうだけど、これは一回出ようみたいな。僕らの時代だったら『イカ天』出たバンドが『イカ天』出てないって言うじゃないですか。

鴨:言うね(笑)

燃え殻:言うでしょ!それが僕は見ててヤだった。

鴨:無かったことにしてるもんね。

燃え殻:そう。これはもう「出ます」って。やる、真剣に。真剣じゃない感じだったの、他の人も含めて夏休みの宿題状態だったんですけど。ちょっとサラっとやるみたいな。

鴨:そのガッチリやった映像があるんですよね。

監視カメラのような、定点カメラで撮られた映像が9面。燃え殻さんの小説に出てくる渋谷の駅前や新宿の雑踏、本屋やラブホテルの様子を映していて、その中の1面でフードを被った顔の見えない女の人が朗読している。

鴨:マルチカメラでっていうのはSNSでそれぞれの場所とそれぞれの人々って言うのを見せてるわけですよね。リアルな渋谷であり、リアルな新宿であると。

燃え殻:はい。

鴨:なんでここまでして作り込んだんですか?結構お金かかってますよね。

燃え殻:めっちゃ赤字です!でもこれはやんないとヤバいと思ったんですよ、僕の気持ちが持たなかった。ほんとに気持ちの問題。なんか悔しかったんですよ。皆ちゃんとやらない人もいて。

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「悔しいが生きるテーマですから」


鴨:悔しかったって言うのはもうちょっと聞きたいな。

燃え殻:なんだろ、僕はSNSから紙に行って...色んな所の本屋さんの考え方があると思うんですけど、 ”小説” って所のコーナーに置かれたり、”サブカル” っていうコーナーに置かれたり、”SNS本” っていうコーナーに置かれたり、僕も別にこだわってないんですけど、それを見に行った時に「あぁそっかぁ」って思ったんですよ。

鴨:ジャンルとしてSNSジャンルに。

燃え殻:そう。それはしょうがないじゃないですか。ですけど、その時にはすごく正直にちゃんと言うと ”SNS本” みたいな所からそうじゃないっていう、ふと手に取ってくれる人とか僕の事を知ってくれてる人・いない人に取ってもらえるにはどうしたらいいだろうみたいに考えて。なんか作ろうと思ったんですけど、でもそうじゃないって言う現実があったから、そういうひとつひとつのものに対して僕としては「あぁこれ手抜いたらダメな所に僕は居るんだ」って思いました。で、『SNS展』事態知らない人も沢山居るだろうし、別にそんな所にって言う人も居るかもしれないですけど、これは全力の120で行かないとダメかなっていう風に思ったんですよ。

鴨:「なんか悔しい」っていう感覚って燃え殻さんの小説にもずっと根底に流れてるテーマじゃないですか?

燃え殻:そうですね。生きるテーマですから。

燃え殻:SNSに対して肯定的でもあり、日によって悲観的でもあり、揺れてます。

鴨:でもまぁ、無かったらここは友達にはなってないし、でも別の友達が出来てるかもしれないしね。

燃え殻:でも「無かったら」は無いじゃないですか。僕自身どこまで続くか分からないですけど、ただやれるものに関してはちゃんとやってこうって。自分の中の誠実でやっていきたいと僕は思う。貰った仕事が大小関わらず自分としてはベストを尽くそうと思って、やって...いるんだよ。

鴨:なんで急に最後そういう終わり方になったの(笑)


↓↓↓ 後編に続きます!!! ↓↓↓

https://note.mu/kurashi_no_nana/n/nb95a96206493

SNSとの付き合い方や小説の装丁話、燃え殻さんの小説はJ−POP!?など興味深い話が続きます。

ぜひお読みください!


●あとがき●

自分の言葉でまとめてレポートを書いても良かったのですが、燃え殻さんの寄り道をするような「回想」や葛藤する話し方が言葉や生き方を実直に表していたので、なるべくそのまま文字をお越す形にしました。

つづきもぜひ楽しんでください。

文:こたにな々 (ライター) 兵庫県出身・東京都在住 https://twitter.com/HiPlease7

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