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活かしたもの、ころしたもの

某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、憂鬱な話です。
いつもです。

日本が貧乏になった、という言説について腹を立てた、という話を書いたのはついこないだのことですが。
今日も、似たような話になります。
――最近。これからもしかすると、日本は豊かになるかもしれない、というきざしのようなものがちらほらと聞こえては来ます。
そしてそのたびに、それに冷水を浴びせたくてしょうがない人たちが出てきます。

そもそも。
今の自分が豊かなのか、それとも貧乏なのか。
自己の中で厳とした判断基準もなしに、他人のヒステリックエピソードに引きずられて不安感をかき立てられる。こんなくだらない話はない、と思っています。
で……これについて。
(ここから、某SNSの話にちゃんとなります)
ある方がポストしていました。ここから、話は始まります。

「日本が貧乏になったとか普通の生活ができないとか……日本もすっかり『普通の生活』がインフレしたもんだ」

……まったくです。
ほんともう、ポスト見てると情けなくなることばかりですよ。

頭が悪いのか民主党が大好きで大好きでしょうがないのか中国の手先なのか、どれかは分かりませんが、まず一つ。

①通貨安と貧乏を混同するな

次。

②どこの国でもどこの世界でも、「何かを得れば代わりに何かを失っている」

そして。

③自分の国のことが、一番分からないものだ

と。
これらのことについて、つらつら語っていきたいと思います。



通貨安と貧乏を混同するな

通貨安って知ってますか?
もちろん、noteを見、記事を書いているような方は分かってらっしゃると思います。ですが、某SNSを携帯でさっさかいじっているだけのようなひとは、どうも分かってないのではという気がしてしょうがないのです。

「(外国の大衆車に『まだ高い!』とポストした人に対して)それは日本が円安貧乏だからそう感じるのであって云々」

どうも分からないのですが、おそらく民主党のせいで、日本が通貨高になると金持ちになる、と勘違いしてるひとが本当にいるらしいのです。
まぁ……FXで米ドルやユーロをショートしてる人なら、確かに円安になったらすごく貧乏になってしまいますが。
自国通貨が安くなって、貧乏を実感する場面ってそんなにあるのかな、って思うんですよ。

あー。そうか。
あれだ。最近は輸入物の食品が多いですからね。いつも買ってるものが次々値上げされて、それで怒ってるのかもしれません。牛肉とか果物とか。
そういう人に言いたいのは。

国産品買えよ。

ま、肥料とか飼料とかも輸入に頼っているので、国産もそれなりに高くはなりますがね。
このへんは正直、トレードオフの関係なんすよ。そのかわり(相対的に)安い日本の物品が世界で高く買ってもらえるわけで。
いくら内需がふくらんだとは言え、日本はまだまだ輸出がさかんな国です。原油問題が最近やや改善されたおかげで、またまた貿易収支は黒字化したそうですよ。

正直、みんなが国産品を買い支えてくれれば、需要も高まって、経済原理から国産品が安く流通するようになります(ま、安く、というほど安くなるには、需要が今の1.5倍くらいは最低増えてくれないと、なのですが)。
発展途上国の品を安く買いたたくことに快感を覚える。こんな「貧しい」精神でどうするんですか、って話でもあります。

どこの国でもどこの世界でも、何かを得れば代わりに何かを失っている

そりゃ、アメリカで寿司職人をすれば、寿司学校を出たばっかりのペーペーが年収4,000万稼げちゃったりします。
これを指して、発展途上国が経済発展して日本が没落し、「いずれインドネシアやベトナムに日本人が出稼ぎに行くような世の中になる!」っていう三田紀房の世迷い言を本気にしてる人などいらっしゃいます。

ならねぇ。

理由は↓。

これも一種、通貨に関する誤解が招いた誤解かもしれません。
アメリカが今ものすごい年収になってるのは、ものすごいインフレだからです。
5%という高金利でなんとかインフレを抑止しようとしてますが、なかなかままならない模様です。
そもそもなぜこんなインフレが発生したかというと、コロナ危機のときに一生懸命生活補助金を出し過ぎたために、港湾従事者やトラックなどの流通配送に携わるドライバーたちの給料より補助金の方が高くなったため、みんな仕事をしなくなった、ってとこから始まってるわけで。
そして、ユーロもカナダもイギリスも、ノルウェー、香港、中国、オーストラリア……先進諸国軒並み金利は4~5%です。

これは、ざっと言いますとアメリカと同じような状況です。コロナ禍に関係する出費のためにお金を刷りまくったので、各国インフレが進んでる、ってことです。
まあ、それゆえ給料もがんがん上がってる(先進国は)わけですが、給料の上がりぐあいがインフレについていってるかというと、厳しい状況です。
いわば、世界は日本以上の加速度で「貧乏」になってるんですよ。
でも、世界はわりと賢いので、この現象を「貧乏」なんていいません。
「インフレがすごくて生活が苦しい」って言ってます。

どうもここまで来ると、日本を貧乏にしたい。したくてしょうがない人がいるんじゃないか、って勘ぐってしまうレベルです。

どこの国だって、「カネが余ってる」わけじゃないんです。
限りある富をやりくりして、国民をなんとか養ってるんですよ。

そういや、こんな話ご存じです?
大英博物館。
あそこ、展示しきれない品数が、全点数の90%くらいを占めてるらしいんですが。
近年、その展示しきれない物品の管理があまりにも雑で、「返せ」ってもとの所有国から言われたりしてるらしいですよ?

たとえば、アメリカ。
有名な話ですが、先進国の中でも成長著しいアメリカ。
国民健康保険のような皆保険がないので、民間保険に入るしかなく、それも高いのでたいていの人は医療保険に入ってない。なので病気したらそこで終わり。盲腸一つで破産、ってけっこうあるらしいですよ。
フィリピンなんかも、これも某SNSで知ったことですけど、どなたかが言ってました。若い人が破傷風や盲腸、感染症。そんなありふれた病気であっという間に死んでいくそうです。

日本の人は、国民健康保険があるし、高額医療制度があるおかげで、医療に対して感謝が足りませんね。
風邪ひき程度で病院行って、1時間くらいの待ち時間でほぼベストな投薬を受けることができるって、やばいくらいのサービスですよ。

自分の国のことが、一番分からないものだ

アメリカでは。ヨーロッパでは。中国では。いろんなことを言う人がいますが。ほんとにその国に住んで言ってるんですかね、ってことが多いんですよ。

「日本において思想は断片化しており、そのときどきで都合の良いものを突如よそ(他国とか、過去とか、伝統とか)から持ってきて打ち立てる」
というようなことを、丸山眞男という学者さんがかつて自著「日本の思想」のなかでおっしゃっていましたけれども。

そういう、「自分に都合の良い事例(あるいは、思想、哲学、宗教すら)」を他国から引いてくる時。
大抵その他国の状況・現状は置き去りで、さも日本において遅れており、他国においてそれが行き届いているがゆえに成功していると「錯覚」した状態で輸入されますな。

そういうのを「出羽守」というのだ、ということをそれこそ某SNSで知りました。
「海外では」「他業界では」と、何かにつけて他者の例を引き合いに出して「ではではではでは」と語るからだそうです。うまいこと言いますな。

そもそも日本において社会保障関連の税金が高いのは医療費が上記のように控除されて国民が篤く守られているからであり。
消費税を上げたがってるのは、社会保障へ流用したいっていう政府と財務省の熱い願いの結実であり(正直、かんべんしてくれよとも思いますが)。
日本の金利が安いのは、お金を世の中に流通させてデフレを退治しようという意味があり。
日本の通貨安はアメリカがクソほど金融緩和し(て、日本がバカ通貨高になり)たツケとして(というより、コロナ禍でそれが顕在化した、というべきか)あほほどインフレが進行し、後付けでばかみたいな金利にまで上げてしまい、それに世界が追随したその結果であり。
いわば日本はコロナ禍を「あまりにも健全に」乗り切ってしまったがために世界の「緩和」の波に出遅れ、相対的デフレ状態となったにも関わらず(ゆえに本来なら円高となるべきところが)、アメリカのクソ高金利の影響を受けて相対的な通貨安となっている。そういうことです。

こういう世界の状況を見ずして日本を語る、ということは、結局は日本の状況それ自体も分かっていない、ということに他なりません。
なんか跳ね上がっていくドルと、なんか安くなってる円と、なんか高くなっていくガソリンと、なんか高くなっていく物価と。
そういうのを漠然と見てるから、「アー貧乏だ貧乏だ」と騒ぐんですよ。

まー、いいですよ。
それはね。
しかしまぁ……コロナになったとしても防護服着た看護師さんにちゃんと薬を渡してもらえ。
急変したら待ち時間がかかりながらも運が良ければ病院にも入院させてもらえ。
生活できないほどでもない(実際、まだ物価高としては年2%。健全なインフレとして日本政府が目指していた目標に届いただけです)インフレを「悪いインフレ」などという謎の言語を用いたうえで「貧乏貧乏」を繰り返し。
生活が苦しくなった日本は終わりだとうろたえている。

なんか……思いますね。
こういう人たちが増えると、ほんとに日本、終わるんじゃねぇかな、って。
ええ。

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