スキルのポータビリティが求められる時代へ

9月28日に経済産業省は「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」の改訂版を公表しました。その内容には6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂や「投資家と企業の対話ガイドライン」の策定を反映したものも多いですが、実務指針としてコードより具体的な行動を提示しています。

特に別紙2では社外取締役活用の視点として、具体的な検討事項を以下のように挙げています。

・自社の取締役会の在り方を検討する
・社外取締役に期待する役割・機能を明確にする
・役割・機能に合致する資質・背景を検討する
・求める資質・背景を有する社外取締役候補者を探す
・社外取締役候補者の適格性をチェックする
・社外取締役の就任条件(報酬等)について検討する
・就任した社外取締役が実効的に活動できるようサポートする
・社外取締役が、期待した役割を果たしているか、評価する
・評価結果を踏まえて、再任・解任等を検討する

特に前半5項目を実行するため企業は現職の取締役が保有する資質・背景を棚卸をした上で、社外取締役のジョブディスクリプション(job description、職務明細書)を準備する必要があります。一方、社外取締役候補者となるにはジョブディスクリプションに見合う資質・背景を持っていることを示す必要があり、それは現職を離れても通じる、すなわちスキルのポータビリティも含みます。

同ガイドラインでは相談役・顧問が他社の社外役員として活躍することを推奨していますが、それには彼らが改めて自分のキャリアを見つめ直し、外部に発信する必要があります。ただし現実には現経営陣から好待遇を受けることによりそのインセンティブが削がれることも多い可能性があります。一方、これから取締役候補者を目指す人材はこのポータビリティを意識してキャリアを積んでいく必要があります。日本では即座の解消が難しい社外取締役候補者不足問題ですが、後者の方がこの状況の解消に有望と言えるかもしれません。

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/8885.pdf


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?