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(追加情報)【現場の人に聞いてみた】臨床試験へのブロックチェーン技術実装のインパクト

先週以下のような記事を書きました。

 記事から想像していたのは、かなりの臨床試験データの改ざんが起きていて、データの信頼性がいまだに悪いような印象を受けていたので、そこがブロックチェーンにより改善されるならばいいことだなぁと思いました。
 
そこで、現場の話を聞いてみると、すでに一件一件確認するようなモニタリング方法からリスクベースモニタリングへ移行しつつあるためモニタリングにかかる時間は減りつつある上に、各CROは経営の多角化として新規事業への取組みも始めているような状況が透けてみえました。

 それと驚いたのはデータ改ざんに関する教育が浸透し、悪意が無い限り改ざんは起こらないのが現状とあるのを初めて知りました。そしてモニタリングを効率的に実施するGCPガイダンスが発出されていることもあり、モニタリングの工数の減少はブロックチェーンの有無に関わらず減る流れは変わらないようです。

上記内容にに加えて、追加でお話が聞けたので追記したいと思います。とても大切な視点だなぁと個人的には思っています。

もっと前向きに、実臨床を遥かに越える複雑な治験のプロセスを正しく実施できるようにサポートし、それを確認するのがCROの仕事だと思っている

以下が追加の現場の方の声になります。

・治験データの整合性確認はこの技術にとって代わられるかもしれない
・医師判断の妥当性や治験プロセスの確認はモニターにしかできない部分
・モニター不要論を聞くようになって久しいものの、現状人手が全く足りず、新卒も中途も採用をし続けている
・現場ではまだまだ仕事がなくなるという危機感はない
・実際データの改ざんはほとんどなく、問題とは現状ならない
・モニターは改ざんされてないことを確認しに行ってる訳ではない

もっと前向きに、実臨床を遥かに越える複雑な治験のプロセスを正しく実施できるようにサポートし、それを確認するのが仕事だと思っている

こうしてみると、モニターがデータの整合性だけをチェックしているわけではない現状からすると、ブロックチェーン技術の与えるインパクトは、モニターが関与する部分に関しての影響は限定的なのだろうなぁというのが私の印象です。

一方で、改ざん防止装置を装備した治験データは、データをクラウドに保存することも可能となります。治験データの保存や解析が今よりも安全性が増すだけでなく、そこに掛かるコストが低下し、データの扱いが今以上に簡単になることによるスピードアップも望めます。

結局、原点に立ち戻ることになるのですが、ブロックチェーン技術は臨床試験データの質の担保ではなく、データ自体の収集、保管・管理において威力を発揮し、臨床試験実施をスピードアップさせることになります。

これまでの流れ通りで、CROの業務の大半を占めるモニター業務が受け持つ仕事内容が人を介する必要がある部分にシフトすることが予想されますし、医師の判断の妥当性などということに関しては、文脈から理解するなどの必要性からAIがアシストするような流れのほうが自然な気もしています。

もっと前向きに、実臨床を遥かに越える複雑な治験のプロセスを正しく実施できるようにサポートし、それを確認するのが仕事だと思っている

これが本当に大切なポイントだと思っています。現状としてモニターする項目が減っているにも関わらず現場では人手不足になっているわけですから、業務の質が変化していると捉えても良いのだと思うと、治験が人の手で行われる限りはまだ人が介在しなくてはいけない仕事なのだと思います。


最後に、話は少し逸れますが、今後医療機関への来院に依存しない臨床試験手法(バーチャル臨床試験)も普及するようになると、なりすましや改ざん防止は課題となるはずなので、ブロックチェーン技術の活用が大いに役立つだろうとも思います。色々な方法で手間を省きながら正確に実施できることは大切であり重要なポイントになりそうです。

詳しくは以下のサイトをご覧ください。製薬協がバーチャル臨床試験についてまとめています。

以下は、バーチャル臨床試験についてのイントロ部分です。

近年、医薬品開発において Patient Centricity の概念が浸透し、製薬企業が患者の声を直接入手し、医薬品開発や臨床試験計画に活かす取り組みが広がりつつある 1。Patient Centricity の概念に基づく取り組みは臨床試験への患者参画を促し、患者の臨床試験へのアクセス向上が期待される。一方、患者の臨床試験参加において距離的制約や時間的制約に表される「物理的制約」というアクセス上の課題がある。The Center for Information and Study on Clinical Research Participation(CISCRP)が 2017 年に米国で行った患者調査では、臨床試験の参加判断に医療機関の立地が非常に重要と回答された割合は 60%に達している 2。また、日本の治験に参加した患者を対象に行った調査では、「拘束時間の負担」及び「通院の負担」がそれぞれ全回答者の23.4%及び 22.3%と、治験に参加して負担に感じたことの 1 位と 2 位を占めている 3。このような臨床試験における患者の距離的及び時間的負担を軽減し、臨床試験へのアクセス向上を図るためには、医療機関への患者の来院が前提となる「医療機関中心の臨床試験」から、疾患により来院が困難な場合など患者のニーズに沿って患者が医療機関に来院しなくても実施可能な「患者中心の臨床試験」の構築も一つの選択肢として求められる

新しい技術を取り入れつつ、棲み分けが進むのだろうと思います。また、現状として人でしかできないきめ細かな仕事にCROの業務が確実にシフトしつつあることを知ることが出来たのは私にとって収穫でした。今後もこの分野はチェックしたいと思います。


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