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四季折々の俳句 14




「 グラタン 」

小鳥来てうるさき庭のうれしさよ

大地より幾千万の秋桜

胸ちゆうを吹きぬけてゆく風は秋

落ちるたびこの世しづまる桐一葉

晴れぞらを絵にしてゐたり秋の画家

たくさんの栗もらひけり毬のまま

喜びを摘んでゐるなりレモンの木

かがみ見てつまらなさうに秋の顔

こんな日はかけ蕎麦にせん秋の雨

食卓に秋がならんでゐたりけり

グラタンの中にも秋がごろごろと

秋爽のはなししながらパンちぎる

胡麻といふ魔法ふりかけサラダ鉢

かぼちや煮の味の秘訣は大雑把

水ほどに柔らかく煮る小豆かな

そのままでそのままの味新豆腐

恋をしたはなしは新酒くみながら

行くひとは斜めに秋の嵐かな

雲行きてどこへもゆかぬ案山子かな

未来あり泣き虫の子にどんぐりに

手渡せぬ恋がいちりんコスモス畑

梨といふひかりの玉を摘みにけり

鯊釣れてうなばら今日も平和かな

食べ終へて瓦礫のやうに胡桃の殻

一人酌む一人の味の新酒かな

ともさるる灯りも濡れて霧の街

歳月は銀杏となりて散りにけり

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