臼井裕之

50歳からかれこれ約15年、ウツともに生きるオヤジ。 仕事や家庭と日々の暮らしを営みな…

臼井裕之

50歳からかれこれ約15年、ウツともに生きるオヤジ。 仕事や家庭と日々の暮らしを営みながら、あふれ出る幻想、妄想を文章やイラストに書き落としている。 ストレスの多い人やウツに苦しむ人に届けたい。

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鬱が描いた風景を小話にしました。

ウツになって自分の内部に向かって深く冒険してきました。 その深さの階層ごとで自らの持つ美しい部分といやらしい、汚らわしい部分の濃度が異なり、きっと最深部では大きな質量を持つまがまがしい固まりを見ることになるでしょう。 この冒険を好んでするものなどいません。ウツがあがないきれない力の触手で、私をがんじがらめにして引き連れて行くんです。 果たしてどこまで潜り、何を見るのか。 何もできない、したくない自分が、いつも同じ呪いに囚われて、堂々巡りの渦に身を任せ沈んで行きます。 そんな様

    • チュドーン「第25~27話」

      第25話  チュドーン① 男が人質をとってコンビニエンスストアにたてこもった。 桜井幸太郎 42才 独身 無職。おなかに爆弾を巻きつけ、手には起爆装置を持っている。 そのスイッチを親指で押していて、離せば爆発する仕掛けで、爆弾は店を吹き飛ばす威力とうそぶいている。 警察と野次馬が店を遠巻きに取り囲んだ。  警察や男の母親が説得を試みる緊迫の時間が過ぎる。 要求は、長年応援してきたアイドルの「姫野クンチャン」が先日発表した婚約を取り消し、彼に謝ることだそうだ。婚約者が自分よ

      • 「第22話」「第23話」「第24話」

        第22話 満員電車 毎朝満員の通勤電車。人とべったりくっついて身動きが取れず汗びっしょり。 なのに、停車の際に乗客は慣性で前方に圧縮され、空いた隙間にまた乗車してくる。 特に雨の日は、湿気もあって気が狂いそうだ。 ああ。大きな声で叫びたい。溜まった鬱憤をゲロゲロ吐き出したい。 そんなことはできるわけない。みんな耐えているのだ。 そんな中、この車両の先頭側の端で小さな歌声が始まった。 ♪ ~調べを~、調べて~ ♪、 ♪ ~歌を~、歌う~ ♪ なんだこの歌は? と思っていたら、

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        • 「第19話」「第20話」「第21話」

          第19話 悪魔の肉塊 その20歳まえの女性は、郊外のこんもりとした小さな森の中にある古い洋館に住み、幼い頃から屋敷の外にあまり出ずに、ひっそりと暮らしていた。 白い肌は透き通り、化粧をせずとも唇は赤く、目の周りに薄紫のシャドウがほのかにかかっていて、細く華奢な体から静かなバロックの調べが聞こえそうな深窓の令嬢であった。 そんな彼女の日々の楽しみといったらもっぱら文学で、本の中のエロスの世界で男女の美しき時をともに過ごすことだった。 大学に進学した彼女は、いつも白いワンピース

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        鬱が描いた風景を小話にしました。

          「第16話」「第17話」「第18話」

          第16話 小籠包 上海で小籠包を昼食でいただいた。 ハス向かいの席の中国の人が 「ラルラル、ラルラル」言ってるのが気になった。 40台半ばの小太りの彼が、女子高生のように両手を口元にあててさえずるその姿は、愛らしくもあり少々滑稽でもあった。 聞けば、その人は、「ハヒフヘホ」が言えず、 「ラリルレロ」なってしまうそうで、上海でも有名らしい。 なるほどと思って、僕も一つ小籠包を口に放り込んで、 ハフハフの代わりにラルラル言ってみたら、案の定やけどした。 第17話 男の美学

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          「第16話」「第17話」「第18話」

          「第13話」「第14話」「第15話」

          第13話 かぼちゃ男 深夜の交差点の向かい側に、かぼちゃ男が立っている。 切れかけた街灯に照らされて輪郭が乏しいが、 頭は明らかにハロウィンのそれだ。 百八十センチくらいの痩身にダークスーツ。細長いネクタイ。 ズボンの丈は寸足らずで、ウイングチップの革靴に縞柄の靴下だ。 長身のせいか、少し猫背で、三角のとがった目は上目遣いに、 僕をジッと見ている気がする。 だから全く車通りのない赤信号も渡れない。 得体の知れない視線に操られている。 くそ、かぼちゃ男め。空っぽのくせに。 そ

          「第13話」「第14話」「第15話」

          「第10話」「第11話」「第12話」

          第10話 初キッス 好きな娘とデートを重ね、とうとうその時が来た。 夕暮れの河畔で、ムードは二人を促している。 僕はそっと抱きよせ、彼女は身をまかせて目を閉じる。 そこで気がついた。 なんと彼女の口は、小学校の校庭の水飲み場の蛇口ではないか。 どうしたものか。 しょうがないので、鼻をひねって水を出し、蛇口に触らないように口を縦に近づけて、ガブガブと水を飲んだ。 いつになったら、キッスができるのやら。 この先が思いやられる。 第11話 そんなあなたにロケットパ

          「第10話」「第11話」「第12話」

          「第7話」 「第8話」「第9話」

          第7話 月光 「きれいなお月様」 暗い部屋の小さな窓から満月を見上げて、 彼女は感嘆のため息と共につぶやく。 彼女の肩を抱いていた俺は、 「うん」といって白い乳房へのばした手を止めた。 純粋な彼女の瞳を見て、 神聖な時を汚してしまいそうな自分の邪気を鎮める。 夜の家路でも足を止めてじっと月を眺める。 俺は、ぼんやりと光を放つその美しい女を後ろから恐る恐る抱いて、 髪の匂いで心を洗う。 女は月が好きだ。何かといつも愛でる。 まるで望郷のような、結ばれない人への慕情のような面持

          「第7話」 「第8話」「第9話」

          「第4話」 「第5話」「第6話」

          第4話 熱視線 ここだけの内緒の話だが、 最近僕は両目からビームを出すことに成功した。 そもそも見えているのは、そのものから光を受けているだけと思っていたが、脳が認識する時に、なにやら目から出しているようだ。 人の視野は左右に200°くらいあり、あまり意識してない映像がほとんど。 だから出るものもボンヤリして弱い。 そのボンヤリ見ているのを直径3ミリまでフォーカスすることに成功したんだ。 気合で0.5ミリまでも可能。 かなりパワーが出る。 好きな娘の胸のボタンくらいは、飛ば

          「第4話」 「第5話」「第6話」

          「第1話」 「第2話」「第3話」

          第1話 人間ボール 手の指先と足のつまさきを、おへそのところにもってくる。 ちょっと足がツライかな。 そうすると肘と膝が出っ張るので、 それもおへそにもってくる。 これはキツイ。 そこから、ぐぐっとおなかの中に、押しこんでいく。 マッチョにはむつかしいけど、私のようなブヨは、 ツライのは最初だけ。 すかさず、頭をそこに押入れる。 ズズッと入っていけば、もう安心。 端からドンドン中に中に。 お尻が入ったら、人間ボールの出来上がり。 肌色のウブ毛の生えたちょっと温かくてまんまる

          「第1話」 「第2話」「第3話」

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          「うつなオヤジの白昼夢」の全60話収録のPDFです。 縦書き挿絵入りで読みやすくなっています。 20円/話でこまめに記事を求められるよりお安くしています

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