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「両利きの経営」を5分で理解する

こんにちは、TechnoProducer株式会社 CEO 楠浦です。

12月に、「本を語る会」でいつもご一緒しているイーパテントの野崎さんとYoutubeで対談します。その際のテーマが、この

「両利きの経営」(書籍)

です。備忘録もかねて、この本のエッセンスを、

「5分で読める」

ように、まとめておきます。

また、新規事業提案で成果を出していただきながら、次世代のリーダーを育てる弊社の「企業内発明塾」サービスは、まさに「両利きの経営」ができる人材の育成に取り組むものです。新規事業開発の支援サービス紹介ページも参照ください。

両利きの経営って、そもそも何?

両利きの経営とは、一言でいうと

① 新たな事業機会の発掘(探索)

② 既存の事業の深掘り(深化)

の両方を、バランスよく行いましょうね、という経営理論です。

両利きの経営 その①「探索」とは?

画期的な新製品とか、これまで参入したことがない事業領域での新規事業など、皆さんが想像する、いわゆる「イノベーション」ですね。書籍内では、

・アマゾン(ネット書店)がウェブサービスへ
・ネットフリックス(DVDレンタル)が動画配信へ
・富士フィルム(写真フィルム)が化粧品へ

進出した事例が、取りあげられています。

両利きの経営 その②「深化」とは?

両利きの経営で、「深化」と呼ばれるのは、わかりやすく言うと、

・品質改善
・性能向上
・効率化

など、既存製品や既存事業の日々の開発業務などで行われる「漸進的イノベーション」のことです。ちょっとづつ良くする、ってことですね。非常に大事で、これにより、企業は次のイノベーションを行う体力を蓄えることができます。改善業務なんてつまんねーなー、と思っておられる方、体力を蓄えてるんだぜ!と思ってください(笑

両利きの経営のメリットは?何がうれしいの?

両利きの経営では、①探索 と ②深化 の両立を重視します。これは基本的に、大企業を中心とした、ある程度の規模があって複数事業を持っている(持とうとしている)企業に当てはまる理論だと考えてください。そして①探索を行うチームを、大企業内の社内ベンチャーだと考えるのが良いでしょう。

両利きの経営のメリットとして

・②の「深化」で獲得している既存事業の技術資産、ブランド資産、組織能力を活用して、①の「探索」が行えるので、有利なスタートが切れる

が、あります。ここで、「有利」と言っているのは、「スタートアップに対して」です。スタートアップは、すべてをゼロから獲得・構築しなければならないからです。逆に、彼らのスピード感が凄まじいのは、この不利な点がよく分かっているからです。

両利きの経営が難しい理由は?

両利きの経営は、①探索 と ②深化 の2つを、うまいバランスで両立させるとうまく行きますよ、という経営理論ですが、実際のところ、それってなかなか難しいんです。理由として

短期的に成果が出やすい①の深化にどうしても偏ってしまう

があります。②の探索は、時間がかかり、非効率ですから、短期的成果を求められる現場は、①の深化に偏ってしまいます。これってまさに、大企業で起こりがちなこと、ですね。

両利きの経営を実践するためのコツ

両利きの経営を実践し成果を出すために、以下の4つが重要だとされています。

① 探索と深化を、資産があって戦略上重要な事業領域で行う

② 社内ベンチャー(探索するチーム)の育成と資金提供に経営者がコミットする

③ 社内ベンチャーが独自の組織運営を行えるよう、既存事業のチームから距離を置く

④ 社内ベンチャー(探索ユニット)と既存事業(深化ユニット)にまたがる共通のビジョン、価値観、文化を持つ

それぞれに、実行するにはいろいろ問題やハードルがありそうですが、特に、③と④は、両立が難しい項目ですかね。このバランスを取ることが重要で、書籍内では「緊張感」という表現が出てきます。

両利きの経営の成功事例は?~IBMの「正しい」事例とシスコの「ほぼ正しい」(つまり失敗)事例

IBMでは、新しいベンチャーの立ち上げに際し、専任担当者をあてていたが、シスコは兼任(パートタイム)にしていた。結果的に、IBMはいくつかの新規事業を生み出し、シスコは生み出せなかった。

この2つの事例だけで語れるものではないと思いますが、「両利きの経営を実践するためのコツ」であげた、3つ目と4つ目の項目が

③ 社内ベンチャーが独自の組織運営を行えるよう、既存事業のチームから距離を置く

④ 社内ベンチャー(探索ユニット)と既存事業(深化ユニット)にまたがる共通のビジョン、価値観、文化を持つ

であったことを思い出すと、「兼任」は難しそうだな、と思います。僕の経験上も、兼任でやれる人は、かなり能力がある人で、その人だったら、もう、専任にした方が良い(何倍も加速する)と思います。経営者が本当にコミットすべきなのは、実はこういう部分(人事)ではないかと、思ってます。

両利きの経営でリーダーに求められることは?

5つの項目が示されています。

① (心に訴えかけて)幹部チームを巻き込む

探索と深化の緊張関係(葛藤)が生じるポイントを明確に把握、あるいは設定する

③ 探索ユニットと深化ユニットの(幹部)メンバー間の対立に向き合い、そこから学び、バランスを取る

④ 深化ユニットには利益と規律を求め、探索ユニットには実験を奨励する、という、一貫して「矛盾」するリーダーシップを発揮する

⑤ 探索事業と深化事業についての意思決定や議論に時間を割く

分かりづらいのは ② でしょうか。

事例では、

(1) 深化ユニットのリーダーと探索ユニットのリーダーを、一人の上級事業責任者が統括する場合

(2) 深化ユニットのリーダーと探索ユニットのリーダーがチームを創り、そこで意思決定を行う

の2つのパターンが示されています。前者の場合、上級事業責任者が葛藤を背負えばいいわけです。後者の場合は、深化ユニットのリーダーと探索ユニットのリーダーが、対立しながら協調し、学びながら進めることになります。

両利きの経営からの名言

両利きの経営から、名言をひと言。僕が20代から好きな、フィッツジェラルドの言葉が引用されていました。

一級の知性の規準は、対立する2つの観念を同時に抱きながら、しかも、機能を果たすことのできる知性
- F・スコット・フィッツジェラルド
崩壊―フィッツジェラルド作品集3 (1981年)

探索と深化を両立させられるか、リーダー・経営者の力量が試されますね、というメッセージですね。

両利きの経営と大手メーカ―における新規事業の在り方

両利きの経営を、それなりの規模を持つ技術系企業(大手メーカー)において、新規事業を立ち上げる、という視点で整理してみましょう。

既存の事業が持つアセット(≒強み)を利用しつつ、新たな機会を「探索」して新規事業を立ち上げることで、

①新規事業の立ち上げを、スタートアップに負けないスピードで行える

②新規事業立ち上げにより、既存事業が持つ「強み」がさらに磨かれる

③資源を共有するので、資本効率(例:ROICやROA)が高まる

といったメリットがあります。弊社の新規事業開発支援サービス「企業内発明塾」では、「売れるか」「勝てるか」「儲かるか」という3つの軸で新規事業を評価していますが、①は「売れるか」「勝てるか」につながり、②は「勝てる」に、③は「勝てる」「儲かる」につながる要素ではないかと思います。

こういうことを意識しながら、自社の技術(技術資産や知的財産)をもとに新規事業を立ち上げ、「顧客価値」そして「儲け」に変えられる「探索」型の人材を、弊社では、「テクノプロデューサー」と呼びます。弊社の社名TechnoProducer の由来は、ここにあります。私が25年間、こればかりやってきたからです。

また、そこまで行かずとも、社会課題/市場ニーズと自社技術を結び付けるアイデアを生み出し、研究テーマや新規事業の企画として提案できる人材を「カタリスト」(触媒)と呼んでいます。

新規事業の提案・立ち上げという成功体験を通じ、「プロデューサー」「カタリスト」人材を増やし、両利きの経営が自然に実現できる組織と仕組みを作り上げたい、という、経営者、R&D部門、新規事業部門の方がおられましたら、ぜひお問合せくださいませ。また、弊社サービス紹介資料や各種レポート(ホワイトペーパー)のダウンロードが、「資料ダウンロード」ページから可能です、こちらもご利用ください。

両利きの経営の成功事例をさらに紹介~IBM・AGC(旧:旭硝子)の成功事例を詳細解説

弊社HPに、両利きの経営の成功事例を取り上げたコラム「両利きの経営とは? ~基本的な考え方とIBM・AGCの成功事例を解説があります。

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楠浦 拝



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