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#392 「ビジネス頭の体操」 8月23日のケーススタディ

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


8月23日(月) ポテトチップス市場シェア○割のカルビー。

東京都板橋区成増に本社を置き、ポテトチップスなどのスナック菓子を中心とする商品を製造・販売する総合スナックメーカーの株式会社湖池屋が制定した「湖池屋ポテトチップスの日」です。

記念日としては湖池屋さんに限定されてしまっていますが、ポテトチップスについて調べてみました。

まずどれくらいの市場規模があるのでしょうか?
日本スナック・シリアルフーズ協会「2020年度スナック菓子の出荷数量及び金額」によると、2020年のポテトチップス市場規模(出荷額ベース)は1,757億円となっています。

スナック菓子全体では2,968億円ですので、ポテトチップスはその6割を占めていることになります。

ちなみに内訳(金額・シェア)は以下の通りです。
☑️ ポテトチップス:1,757億円(59.1%)
☑️ ファブリケートポテト(成型):314億円(10.5%)
☑️ コーン系スナック:424億円(14.2%)
☑️ 小麦系スナック:381億円(12.8%)
☑️ その他スナック:91億円(3.0%)
☑️ 総計:2,968億円(100%)

なお、連続して遡れる2015年は以下の通りです。
☑️ ポテトチップス:1,590億円(55.9%)
☑️ ファブリケートポテト(成型):232億円(8.1%)
☑️ コーン系スナック:500億円(17.5%)
☑️ 小麦系スナック:390億円(13.7%)
☑️ その他スナック:130億円(4.5%)
☑️ 総計:2,841億円(100%)

つまり、ポテト系だけが伸ばしていて、中でもファブリケートポテト(「チップスター」や「じゃがりこ」のようなもの)の伸びが約3割と最も大きくなっています。

カルビーの決算資料内に同協会のポテトチップス出荷量の推移をグラフにしたものがありましたので転載します。

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同じくカルビーの決算資料に全日本菓子協会のデータによる「国内菓子市場」をグラフ化したものがありましたので転載します。菓子小売額自体はコロナ禍によって2020年は大幅に落ち込んでいますが、スナック菓子は売上を伸ばしていることが分かります。

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日本食糧新聞によると買いだめや巣ごもり需要によってスナック菓子の需要が急増、特にロングセラーブランドが伸びたそうです。一部商品では供給が追いつかず、一時休止となったものもありました。また、今年21年に入ってからは、ポテトチップスの原料であるジャガイモの不足という事態に直面し2年連続で供給面に不安を残す形となっているそうです。


今回調べて初めて知ったのですが、ジャガイモは検疫の関係で輸入が禁止されている国もあり、輸入が可能でも、輸入時の検査に加えて隔離栽培(国の施設で輸入したジャガイモを植えてウイルス等の検査を行う)が必要になる、ということで事実上、ジャガイモそのものを輸入してポテトチップスの材料とすることは難しくなっています(加工食品などは対象外)。

となると、ポテトチップスの材料であるジャガイモはほぼ国内で調達されます。日本スナック・シリアルフーズ協会「2020年度ポテトフォーラム」によると、2019年実績の国内馬鈴薯使用量の内訳は以下の通りで、国内馬鈴薯のうち、17.6%がポテトチップスに加工されていることが分かります。

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ジャガイモといえば北海道、と思ってしまうのですが、実際北海道は10a当たりの収穫量が他の都府県と比べても多くなっていて、しかも、生産量では78.8%を占めています

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一方で、ジャガイモ(馬鈴薯)の生産量は年々減少しており、昭和61年には400万トンを超えていたものが、令和元年には239万トンと4割も減少しています。その一方でポテトチップスの需要は増えており、近年ではしばしば品不足などが話題になる状況です。


さて、これまでポテトチップス全般について見てきましたが、元々の湖池屋についてみてみましょう。湖池屋は6月が決算月と変則的なのですが、ちょうど8月17日に最新の2021年6月期の決算が公表されています

一言で言うと絶好調、のようです。
「新型コロナウイルスの影響による特需も相まって国内売上は好調に推移し、加えて原材料費や物流費が低減したことで大幅に増益となりました。」

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売上高は6.5%増の402億円
営業利益は64.5%増(!?)の16億円

となっています。

製品カテゴリ別の売上高の開示はないのですが、国内売上増の要因として「高付加価値商品群の伸長」というページでポテトチップを主とする商品が好調だったことが紹介されていました。

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また、昨年の11月20日湖池屋は日清食品が45.12%の株を保有する連結子会社になっています。



最大手カルビー(2021年3月期)もみてみましょう。

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売上高は4.2%増の2,667億円
営業利益は2.2%減の271億円

となっています。

こちらは製品別の売上が公表されています。
これをみるとスナック全体ではなんと3.5%のマイナスとなっています。
それを救ったのがその他食品、です。

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この解説が以下のページです。
じゃがポックルを中心とした土産用商品の落ち込みが大きく影響していることが分かります。一方で、先ほどのその他は、甘しょ事業であったことが分かります。

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売上の違いを見れば明らかではありますが、カルビーはポテトチップス市場で69.4%という圧倒的なシェアを持っています。

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最後に、カルビーといえば、ずっと強い企業、というイメージがありますが、実は高いシェアを持つものの低収益体質であった時代があり、それを打破するためにジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長から松本晃氏をトップに据え、改革した、という経緯があります。
その経緯を簡単に紹介している東洋経済の記事がありましたのでご紹介します。


→確かにシェア7割だったらそれを維持するだけで問題ないので変革を起こす必要は認知されないだろう。松本氏というトップが変わったことで一体何がカルビーの中で変わったのだろうか?



最後までお読みいただきありがとうございます。

皆様の頭の体操のネタになるところが1つでもあれば嬉しいです。

昨年8月からこのような投稿を続けてきて1年になります。以下のマガジンにまとめてありますので、お仕事を離れて頭の体操をしたいときに覗いて見てください。





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