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上司のための「質問力」活用〜「営業指導」基礎⑨〜

大学時代のゼミの同期会で再開した佐藤と高橋。某銀行で支店長を務める佐藤がふとしたことで部下育成について高橋のアドバイスを受けることに。
今回は最終回「クロージング」と「アフターフォロー」についてです。

最後までお読みいただけると得られそうな情報は?
✔︎ クロージングは事務的に必ず行う
✔︎ 質問はすぐに答えない?
✔︎ 契約直後の営業とお客様の感情の差
✔︎ 最初のアフターフォローで満足度が違う
✔︎ 本日の質問

1、その提案は本当にお客様のため?

高橋(以下T):さぁ、最後。クロージングはこんな感じ。

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佐藤(以下S):お役に立つ提案をしていることが前提、っていうのは?

T:そもそもヒアリングで丁寧に伺った課題に対して、お客様も解決したい、そのための「しくみ」も合意してここまで進めてきたのであれば、提案しているものはお役に立つものと確信しているはずだよね?
「これでいいかなぁ、自信はないけど契約してくれたらいいなぁ」という気持ちが入ると、クロージングはゴリ押しにしかならない
それではいくらテクニックで契約を取り付けたとしてもクーリングオフになったりクレームになったりする。仮にそこまでいかなくても二度と買ってくれなくなるだろう。

S:そっか、いいものを確信持ってご提案していることが前提だ、ということね。

T:そういうこと。そこがクリアされていれば、クロージング自体はそう難しいことではない。あるとすると「断られたらどうしよう」という「恐れ」だね。

S:恐れ?

T:プライドとでもいうかな。それも自分のことよりもお客様のためだという確信があれば起きないはず。やっぱり提案の質にかかっている、ということだね。

S:質がクリアしているとして、具体的な話は、事務的に?

T:うん。前回少し話してしまったけど、もう一度順番に説明しよう。まず、説明が全て終わったら、

「なにかご質問はございますか?」
「それではお手続きに入らせて頂いてよろしいでしょうか?」

と、これでいい。

S:確かに簡単だな。

T:これを簡単にできるには、さっき言った提案の質への自信がないと、ということ。そっちが難しい。

S:だね。ところでその次の質問は全て出して頂いてから、っていうのはどういうこと?

T:よく聞いてくれた。実はそこ重要なポイントなんだ。「なにかご質問はございますか?」に対して、お客様が「A」と質問されても、すぐに答えない。

S:え?答えないの?

T:すぐに、ということだよ。質問されたら、それをお客様に見えるようにメモする。「なるほど、Aですね。」と言いながら。
当然、書き込むには時間がかかるから沈黙が流れるけど、そこはじっと堪えて丁寧にメモする。そして書き終わったら、「他にはございますか?」と言ってあればまたそれをメモする。もうない、というまでそれをやるんだ。

S:いっぱい出てきても?

T:もし、ここで5個とか10個とか出てくるようなら、そもそもプレゼンテーションがきちんと伝わってなかったということなのでもう一度最初からプレゼンテーションをする方がいいだろうね。きちんと終わっていればせいぜい3個ぐらいだと思う。

S:それから?

T:もう質問がないことを確認したら、

「この3つの質問にご納得いただけたらお手続きされるということでよろしいですね?」

と質問する。

S:まだ答えないんだ。

T:そう。答えても契約しないのであれば答えてもしょうがない。

S:なんの意味があるの?

T:それは、まだ出ていていない真の理由があるかどうかを確認するためなんだ。

S:真の理由?

T:人には言いにくいことの1つや2つはあるでしょ?意外とそんなことで契約を躊躇うことがあるんだ。
例えば、子供が証券会社だから運用するなら子供から買ってやりたいと思っている、とかいうこともあれば、実はずっと気になっているけど、そんなこと質問したら馬鹿にされるかもしれないと質問していなかったことがある、とか。

S:なるほどねぇ。それが全て出してから答える、ってことねぇ。

T:そう。全部クリアしたら、初めて一つづつ答えていく。あと、目の前でメモをすると、お客様も見るので、こちらの解釈が違っている場合、「あ、そういう意味じゃなくて」と言ってくれることがある。結構、質問を間違って解釈して答える、ということはあるからね。その防止にもなるんだ。加えていえば、もう全部場に出ているので答え終われば自然に手続きにと流れることもできる。

S:なるほどねぇ。いちいち理由があるのね。

2、契約時がアフターフォローの始まり

S:アフターフォローってもう少し後のことなんじゃないの?

T:いや、契約直後に最初のやるべきことがあるんだ。まず中身を見てみよう。

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S:確かに営業からするとゴールって感じしちゃうよなぁ。

T:でもお客様にとってみると自分のものになったこれからがスタートだよね。大体この意識の差が「契約したらほったらかしにされた」というような不満になって出てくるんだ。どうしても契約後、一定期間後にアフターフォローをしようとするけど、まず最初にやっておくことがあるんだ。

S:なに?

T:それは「契約内容のご確認」と「約束」だ。
契約内容のご確認は、契約したお客様は自分の判断が正しかったか契約後気になるものなんだ。だから、そのタイミングで、もう一度なぜ加入したか、いかにお客様ご自身に合ったものか、をもう一度一緒に確認する機会を設ける。するとご安心してご満足いただける。
例えば、契約手続きが終わって預かった通帳などをお返しに上がる時などが良いタイミング。契約手続き直後に、次回訪問のアポもとっておけば無駄がない。

S:なるほど。約束は?

T:信頼をどう得るかというのは難しいところだけど、一つは「約束を守ること」だと思う。でも約束はしないと守れない。だから今後のアフターフォローの間隔や内容などを相談し、その通りするということを約束するんだ。これによって次回連絡するタイミングが決まるし、アフターフォローに対する期待値もお客様とすり合わせておくことができる。

S:期待値?

T:そう。アフターフォローって人によって期待するものが違うでしょ?頻繁に来て欲しいという人もいれば、用もないのにくる必要はないが、なにか連絡したらすぐに対応してくれることを望むという場合もある。それを事前にお伺いし、こちらが提供できる範囲に納めて合意しておく。これによって、こっちはきちんとフォローしているつもりなのに、「契約したらほったらかし」なんてことも防げる。
もちろん、約束したんだから、実行しなかったら信用はガタ落ちなので、できない約束はしないようにすることも大事。

S:単にアフターフォローってこちらの都合で一定期間に一度電話することぐらいにしか考えてなかったけど確かにお客様によって求めるものは違うよねぇ。

T:そう。きちんと合意内容を記録しておいて、例えば、「ご契約の際に半年に一度お会いするお約束でしたので、ご連絡いたしました。」というふうに連絡できれば、約束を守ることができるし、結果として信頼も高まっていく。となると、なにかあったときに、他の金融機関の担当ではなくって、佐藤のところに連絡をしよう、となる。

S:契約取ることしか考えてなかったけど、そこまで先を考えて今やっておく、ということは大事だね。

3、本日の質問

隠れた真実を探る、プレクロージング質問

T:よく聞いてくれた。実はそこ重要なポイントなんだ。「なにかご質問はございますか?」に対して、お客様が「A」と質問されたら、すぐに答えない。(中略)「他にはございますか?」と言ってあればまたそれをメモする。もうない、というまでそれをやるんだ。(中略)T:もう質問がないことを確認したら、「この3つの質問にご納得いただけたらお手続きされるということでよろしいですね?」と質問する。

解説は本文中にあるので割愛します。この最後の質問は「プレクロージング」と言い、仮に条件が満たせたら契約するか、を質問するものです。
営業の方ではプロセスやら順番やらがあるので当然なことでも、お客様にとってはわからない。だからこそ、今これです。今度はこれです、と合意をとりながら進めていくのだが、いきなり契約を迫るのはやはり壁がある。だからこそ、こうしたプレクロージングを重ねていくことで、一つ一つの段差を小さくし、最後、つまり、契約まで無理なく辿りつくようにすることが重要になります。


最後までお読みいただきありがとうございました。
お読みいただいたお時間分だけでも参考になるところがあれば嬉しいです。

こちらにこれまでの分をまとめましたのでご興味をお持ちいただけたようでしたらぜひご覧ください(ちょっと長いものもありますが)。

また、他にも「上司のための『質問力』」に関して投稿していますので、よろしければそちらもぜひご覧ください。


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