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二人二体


少女は自分を成長させるように人形も育て始めた。


母に見捨てれた日に与えられた人形は手のひらに乗るほど小さかった。


少女のほうは何時なんどきもその人形を手離すことはなかった。


握りつぶさぬように、手離さないように、起きているときも寝ているときも人形は少女の小さな手に繋がれていた。


誰も気づかない速度で徐々にだが確実に人形は育ち始めた。

少女の手から吸い出された思いは人形の中に充満していって、

それは作られた顔から新たな顔となり、

少女だけを見つめる瞳になり、

淡色の爪になり、

柔らかな白い皮膚となり、

しなやかな関節になり、

曲がることを許された手指になり、

1人で立てる足になり、

息をする肺になり、

吸収と排出を許す内蔵となり、

全身を流れる赤い血になり、

その血液を運ぶ心臓にもなった。

もちろん少女の言葉を聞く耳と脳にもなった。


手から送れない言葉は少女の口から伝えていった。


人形が言葉を持った時少女の目から涙が流れた。


その時にももちろん少女と人形は手を離すことはなかった。


今度は人形が言葉を返すようになり、少女はまた答え続けた。

そんな夜がいくつ過ぎたことだろう。


気付いた時には二人であり二体だった。


誰にも見分けがつかぬほど二人は二体になった。


もうこれでさびしくないねと少女たちは同じ顔で笑った。




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