公開処刑ではなく、個別対話を~効果的な指導アプローチを考える


問題の背景

ある日の学校の授業で、中抜けして授業をサボっている生徒が3人いた。

初めに出欠だけとって、後は授業を聞かずに教室外へ出てしまっているのである。
そのことに気付いた先生は、教室内にいる生徒の名前を点呼して、誰が中抜けしているかを確認した。

そして、先生は教室内の生徒から、その中抜けしている生徒らの居るであろう場所を聞き、その生徒らの所在を確認しに階下へ向かった。
どうやら中抜けした生徒3人のうち1人しかいなかったようである。

授業を再開した直後、その中抜けした生徒1人が教室に入ってきた。しかし、彼は文房具もレジュメプリントも何も持っていない。先生はとりあえずその生徒を右前の方の席に座るよう指示し、その生徒はそれに従った。

先生は授業に出ることの重要性を改めて話した後、授業に戻ると宣言した。中抜け生徒に対して「もう(元いた後ろの席に)戻っていいよ」と声をかけたが、その生徒は「このままでいいです。」とこたえた。
即、先生は「いや、ダメだよ。だってペンもレジュメもなにも持ってないじゃん、この後の授業どうやって受けるつもりなの!?」と指摘。

これは当然の指摘である。その生徒の発言は不可解であった。考えるに、少しでも私は反省しています、という態度を示そうとして、前の席のままでよいと深く考えずに答えてしまったのではないか。後述の精神的な苦痛を避けるための心理的な防御反応が起きた可能性がある。

その後、先生と生徒の間で少しの応酬があり、結果、生徒は後ろの席に戻ろうとした。しかし、先生は先ほどの発言がまだ腑に落ちなかったのか、席に座る前に、生徒に対し色々と疑問をぶつけた。
それは、「自分が見に行った時何をしていたのか、今まで何をしていたのか、なぜ中抜けをしたのか」などであった。

その時、当然だが教室内には他の生徒が沢山いたので、いわゆる公開処刑のような形になり、その生徒は聞き取りにくい、か細い声で質問に答えていた。
生徒の立場からすれば、まさか今日に限って多くの人前で注意・指導を受けるとは思っていなかったのだろうと推察できる。

結局、その生徒は先生からペンを借りて元の後ろの席に戻り、授業は再開した。
授業が終わった後、生徒がペンを返しに行った際、先生から「また同じようなことがあれば信用を無くすからね。」と再度注意を受けた。

しかしながら、その際、生徒はポケットに手を入れて話を聞いていた。
「ポケットから手を出すこと。」と、先生からまた注意を受けて、その生徒は恥ずかしそうにその場を離れた。

問題点・懸念事項


私は、これらの注意・指導は、中抜けした生徒の反省には繋がっていないのではないかと懸念している。

気になる点は、生徒が多くいる教室内での注意、問題行動の問いただしである。人前での注意・指導には、反省を促すという目的達成の効果があるどころか、むしろ逆効果になっているのではないかと思う。

人が反省するには自尊心が保たれていることが前提であると考える。指導をする場合は、周りに人がいない環境で個別に対応する必要がある。
有効な指導をするためには、その生徒の名誉を保全する措置を講じることが大切である。

人前で自身の問題行動を問いただされている(詰問)場合、人は誰しも精神的ダメージを受け、自尊心が低下する。自分に原因があると自身ではっきりわかっているときでもだ。一刻も早く心理的負担から逃れるために、自己防御的な心理反応が起こる。そのような心理状態では、先生の正論を理解し、真摯に受け入れることは困難になるだろう。

効果的なアプローチの模索


この一連の出来事は、指導の場と方法についての懸念を浮かび上がらせる。

まず、生徒が多くいる教室内での問題行動に対する公開の指摘は、反省を促すという効果よりも、生徒に精神的な負担をかける可能性が高い。一般に、人が自己の過ちを真摯に反省するためには、その人の尊厳が尊重され、安心して自己を見つめ直せる環境が必要である。
公衆の面前での指導は、生徒が心理的な負担を回避するため、無意識に防御的な態度を取り、指導の内容を真摯に受け止めることを難しくする。さらに、このような方法は、生徒間での信頼関係の損失や学校に対する否定的な感情を生み出すリスクも伴う

指導を効果的に行うためには、個別に、プライベートな環境で対話を行うことが重要である。このアプローチは、生徒が自身の行動を振り返り、その原因と結果を落ち着いて考える機会を提供する。

個別の対話では、教師は生徒の話に耳を傾け、共感を示すことで、生徒が自身の行動を改善するための動機づけを行うことができる。
また、教師と生徒の間で建設的な解決策を一緒に考える過程は、失った信頼関係の回復・修復に留まらず、生徒の自立心や問題解決能力を育む貴重な機会となる。

まとめ


生徒が教室に戻ってきた際の先生の反応や、授業後に交わされた会話は、生徒が持っていた文房具を忘れるなどの些細な過ちに対しても、指導の機会を見出そうとする先生の姿勢を示している。

しかし、このような指導が真の反省や成長に繋がるためには、生徒の心理的な状態やその背後にある動機を理解し、適切な指導方法を選択することが不可欠である。生徒の自尊心を守りつつ、課題に対する責任感を育むようなアプローチが、教育現場における指導の在り方として求められている。

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