摂食障害を知っていますか? 陸上競技のケース、ほんとのところ

先日、とある女子実業団チームの監督との会話で摂食障害の話題になりました。
トイレが異様に臭く汚れていることから選手の一人が嘔吐を繰り返していることが判明したとか。


摂食障害とは

摂食障害患者は年間21〜24万人とされていますが、治療が必要な患者は40万人近くいると考えられています。
また、10〜20代の若者がかかることが多く、女性の割合も高いとされていますが、年齢や性別など関係なく誰でもかかりうる病気です。

これらのサイトを見ると、改めて摂食障害は誰でもかかりうるこころの病気だということがよくわかります。

骨太筋肉質な私の場合

実は私も高校時代に摂食障害になったことがあります。
いまの私を知ってる人は「お前が?????」と驚くかもしれませんが、摂食障害は誰でもかかりうる病気なのです。

期間

高校2年5月〜高校3年8月

きっかけ

高校2年生のGW、陸上部の女子全体に食事指導が入りました。
部活は頑張っているもののユニフォームはパツパツでケガも多く、陸上選手としての食事の意識がないということがきっかけです。
当時、私は親元を離れて高校近くの一般家庭で下宿。
庭を挟んだはなれの部屋を借りて生活してました。
食事は栄養士でもある下宿先のおかあさんが作ってくださいましたが、特に制限することもなく何も疑問を感じず間食もしていましたし、ユニフォームも当然パツパツ。

そんなわけで短距離・長距離・投擲の女子部員合同で強化練習を兼ねた栄養合宿が行われました。

当時の資料 その①
当時の資料 その②

体重変化

約55Kg→45Kgへ(身長163cm)
・2年生
  GW 約55Kg
  6月地区インターハイ頃 50Kg
  8月インターハイ 49Kg
・3年生
  8月インターハイ 47Kg
  インターハイ後 約45Kg

体重変化でみると1年3ヶ月で10Kg減というのは無理をしている状況ではないのかもしれません。

記録の変化

1年生 3000m 10.05
2年生 3000m  9.29
3年生 5000m 16.29 (3000mは体重が回復後に出した9.17)

どんなことをしていたか

さて、この間どうだったかと言うと、いわゆる拒食状態でした。
当時の練習日誌に書かれている普段の食事内容をみると、
・味噌汁
・煮物
・もずく
・果物
と書かれていますが、実際は母屋で食事をせず部屋に持ち込んで処分することも、、、
本当に食べていたのは干芋やりんごとヨーグルトくらい。
たまに牛乳寒天やバナナチップを(バナナだと1本食べるにも抵抗があった)。
喉が乾いても「飲んだ分体重が増える」という恐怖でうがいをするだけ。
週末は朝練を長めに走って(12Kmほど)、水分補給もほどほどに早朝オープンのサウナで絞ってから部活へ。
で、部活後に再度サウナで絞ることも。

当時の写真をみると頬がげっそり、真夏なのに白い顔をしています。

どう乗り越えたか

自分ではやっと全国大会に出場するレベルの選手になれたと喜んでいましたが帰省して親戚が集まったときに、国立病院で看護婦長を務めた叔母に「こんなになって可哀想に」と泣かれたことが大きかったです。
食事の時間になると誰もテーブルから離れず、大皿に盛られた料理を奪い合う下剋上のような集いで、一人離れて「食べたら太るから」とお茶も飲まないようになった私にストレートにぶつかってくれました。
活躍に喜んでくれる方や応援してくださる方はたくさんいましたが、私の食に対する変化に正面から悲しんだり怒ってくれる人は叔母が初めてだったと思います。

さらに夏合宿で一緒に過ごした先輩方の影響も。
当時「女子選手は米を食うな」くらいの空気がある中で、京都チームの先輩方がもりもり食べて、なんならスイーツの間食もがっつりしていて、差し入れも遠慮なく口にする様子に相当なカルチャーショックを受けました。
誰か一人の変わった行動ではなくて、みなさんが当たり前のようにしっかり食べて先生方もニコニコしていて。
むしろ私に対して「えっ?そんだけしか食べんの?」と。

あれ?私間違ってた?

その夏をきっかけに、下宿や遠征先で出された料理は食べるように。
白米も食べ、おかずにパスタがついていようが「きちんと計算された食事だから大丈夫!」と完食するようになりました。

陸上競技の現場では

ちょっと難しい表現ですし、海外の報告です。

女性アスリートの三主徴が周知されるようになった現代。
無月経や月経痛に関しては男性指導者でも選手と話ができるような状況になったと思いますし、改善に向けた積極的なアプローチも進んでいるように感じます。
骨粗鬆症についても疲労骨折などの故障に大きく影響するため、かなり気を使っています。

エネルギー不足についてはどうでしょう?
「しっかり食べろ」とは言うようになったとは思います。
ですが、摂食障害を疑うような選手に対して治療を勧めるような状況をほとんど知りません。
もちろんセンシティブで他言無用な内容なので軽々しく口にはできませんが、「過食で吐く」というワードが出ても摂食障害の治療について情報交換をする場面はほぼほぼ出会いません。

ハラスメントに対する意識や対策は進んでいますが、メンタルヘルスリテラシーという部分ではまだまだなのかもしれません。

最後にもう一度

アスリートと摂食障害について検索すると、その多くが女性アスリート向けの内容ですが、摂食障害は年齢、性別、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうる病気です。

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