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短編小説 いつかの未来

「いつまでかかってんだよ。そんな仕事早く終わらせてしまえよ。」
「すみません。すぐに終わらせます。」
「全く。使えない人間だな。お前を管理するこっちの身にもなって欲しいよ。他の若手はもっと覚えも早いってのに。いつもいつも確認確認ばかりでは仕事がちっとも進まないんだよ。分かるか?」
「すみません。どうしても不安なもので。」
「ったく。」
 上司が起こる気持ちも分かる。確かに僕は仕事が遅いし、そのせいもあって周囲に迷惑をかけている気持ちはいつもある。
 誰が見ても僕は不器用だから、1つの作業を終わらせる時、不安で確認作業を怠りたくない。自分の怠りで他人に迷惑をかけるのは違う。だがその人より時間がかかるせいで同期や少し上の先輩より役に立っていないことは誰の目にも明らか。
 だとしてもなんでこんなに人格否定のようなことまで言われなければならないのか。そんなに仕事が遅いことが人間として悪いことなのか。人格すらも否定されなければならないことなのか。もっと寛容な気持ちでは生きていけないのか。
 でもよく考えてみれば、他の同期は僕より仕事が早いかもしれないけど、正確さが少し劣っているようにも思う。それが原因でお客さんに迷惑をかけて、彼等が怒られていることもあるのだから。
 ただやっぱり全体で見たら自分が役に立っていない。
 僕はやっぱりこの場に居場所はない。僕のことを必要としてくれる人もいない。いない方が良いのかな。
「あいつまた怒られたな。」
「ふん、仕方ないよ。みんな残業が多くてピリピリしている中であれだろ。あいつのせいで帰りが遅くなってみんな思っているからな。あいつがもっと仕事早かったならな、早く帰りたいよな。」
「本当そうだよ。まあここには向いてない。」

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