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故郷に帰って その1

1年ぶりにスーパー銭湯に来た。
この1年いろんなことがあった。
前に勤めていた会社ではパワハラに遭っていつも上司からは理不尽に怒られてきた。
上司の機嫌1つで態度が変わる。機嫌が悪いときの矛先はいつだって僕だった。それは僕が特に何も悪いことをしていなくても。
得意先に嫌味な一言を言われたとか、部長から叱責されたとか。
家族に邪険に扱われたとか仕事の以外でも機嫌が悪い原因となった。

同じ頃恋人からもふられた。たぶんずっと仕事のことえ悩んでいたし、彼女の希望も聞けなかった。彼女を気に掛ける余裕なんてなかった。
それらくつもの原因が重なって彼女は僕の元を去って行った。

多くの辛いことが起きて、僕は本気で精神を壊れると思った。
手足が痺れ、食欲すら一切なくなった。
それでもどうにか会社だけは行った。自分が行かないと迷惑がかかると思ったから。
上司の標的になったとしてもそれは自分が悪いんだと思っていた。

そんな時に離れた母親から連絡がきた。
「最近どうしてるの?」って。

嘘をついて何でもないフリをしようかと思ったが、誰か1人は僕の気持ちを知って欲しいとありのままを書いた。

そうすると今すぐ戻ってきなさい。お母さんいつでもあなたの味方だと言ってくれた。
僕にはもう選択肢が1つしかなかった。もう親を頼るしかない。
大人になっても大人になれきれない自分だけど、もうここは親を頼ろう。
そう思って故郷に帰った。

親は悲しんでいるだろう、そう不安に思いながらも。

でも両親はそんな僕を暖かく迎えれてくれた。
「よく帰ってきてくれたね。」そう言って抱きしめてくれた。
僕は泣くことしか出来なかった。子供みたいに泣いた。
両親も泣いていた。子供を本気で心配していてくれたんだろう。
「ありがとう。こんな僕でごめんね。」
そう言うと母親は再び強く抱きしめてくれた。
「バカね、私の子供なんだからいつでも頼って良いんだから。」
「今は頑張らなくて良い。ゆっくり休もう。大丈夫だ。」
父親も泣きながら出迎えてくれた。
この時僕は親の愛情を知った。そしていつかこの両親に恩返しをする、そう誓った。


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