2019年、採用広報は一度臨界点を迎える。その後は"エンゲージメント"が採用力を決める時代に。 (ベンチャー採用 Advent Calendar 2018)

おはようございます。株式会社メドレーで、採用と広報を担当している加藤(@kyo_spr)です。

12/1より開始したベンチャー採用 Advent Calendar 2018、LINE青田さん、Yahoo!丸吉さんに続き、今日が3日目となります。

- 12/1 LINE青田さん   「LINEに入社して考えた、人事戦略と組織能力のこと (ベンチャー採用 Advent Calendar 2018)」

- 12/2 Yahoo!丸吉さん  あなたは会社の美意識を理解しているか– 採用×People Analytics -

こんな感じで、色々な方を巻き込んではじまった企画。

1年間を振り返りつつ、私からは、2019年の潮流と展望について、自分なりの考えをまとめておきたいと思います。

2018年の採用業界を振り返る

2018年は「採用広報」「採用PR」という言葉が一気に増えた年だったように思います。

「@〜社採用広報」「@〜社採用PR」というように、twitterネームに「自分はこの会社の採用広報担当だよ」と記載する企業の採用担当が増え、ソーシャルでもこの1年、特に採用広報についてのポストが乱立するようになりました。

採用PR、採用マーケティング、と言った言葉も出始め、ついにはお言葉警察が出動する流れに。

ベビーブームの頃は買い手市場と言われていた就職・転職市場も、今では一気に売り手市場となり、いろいろな企業が採用手法の変革を迫られるようになりました。

加えて、ベンチャー企業が乱立する一方で転職市場に出ている人材プールが少ないことや、そもそも転職市場に出ていないような優秀層を獲得するニーズが高まっており、従来のような待ちの姿勢ではいつまでたってもいい人がとれない時代に。

待っていても人がとれていた時代から、自分で動き出さなきゃ何も起こらない WOW WOR TONIGHT状態に差し掛かる中で、「何かを叫ぼう!」と各社が見よう見まねで自分たちを知ってもらったり、魅力を伝えたりする方法を模索して発信するようになりました。

(平成生まれ世代がほとんど知らなくて悲しい。悲しみである。)

「2017年以前スタート組」と「2018年スタート組」の差

そんな中で、2017年以前からこの動きに気づいてコンテンツを積み重ねて発信していた企業と、2018年からその動きを始めた企業とでは、現時点では採用広報を通じた採用力に差があるように感じます。

一言で言うと、2018年は2017年に比べ市況が大きく変化しており、2017年と同じ手法を踏襲していても、その効果は非常に低くなってしまうからです。

WantedlyフィードのブログPVが1/10に(メドレーの場合)

メドレーの例を挙げます。まずはこれをご覧ください。

これが、メドレーでいわゆる「採用広報」というのを2016年の秋から戦略的に開始しました。その手段としてWantedlyさんのフィード機能を本格的に活用し始めたのですが、これが最初に公開した10個のポストのPV数です。

そして、こちらが直近の10個のポストのPV数。

明らかにPV数が下がっているのがわかると思います。

Wantedlyさんのフィードのフォロワーがほとんどいなかった時代と比べ、今は一応フォロワーが全体でTOP30に入っているにも関わらず、PVでみると1/10くらいになってしまっている。

もちろんマンネリ化している、といった個別の事情はあるのかもしれませんが、コンテンツ自体は安定的に質を保てているのではないかと思う中で、この落差はけっこう大きいものがあると思います。

なぜか?

で、これはなぜか?という話なんですけど、けっこう構造的な問題があると思うんですよね。まず、Wantedlyフィードもそうですが、とにかく採用広報系のコンテンツが乱立しはじめていて、相対的に1社あたりの読まれる量が減ってきていると言うのがあると思います。みんながあまり記事を書いていない時にどかっとコンテンツを出して市場に伝えられた会社はそれなりに認知や関心を勝ち取っているように見えますが、最近やり始めた会社はこのコンテンツ乱立時代の中でなかなか苦戦を強いられるのではないでしょうか。

加えて、Facebookのアルゴリズム変更が多大な影響を与えていると思います。

2018年初頭に実施されたFacebookのアルゴリズム変更により、コンテンツをFacebookの外に作り、社員みんなでそのリンクをソーシャルシェアすることで拡散を狙う手法の効果が著しく下がることになりました。これにより、Facebookを活用した採用広報が従来に比べ難しい状態に。

加えて、戦略なき記事の乱立も横行するようになりました。

すなわち、他社も採用広報やってる!だから自社も採用広報やらなきゃ!という流れから、

- 「何かやろう!」

- 「とりあえず発信しよう!」

- 「やるからにはKPIを設定してPVとかはてブとかにしよう!」

- 「継続が大事だから週1なにかしたら投稿を義務化しよう!」

という背景のもとに生み出された「意志なきコンテンツ」が乱立。

結果として採用広報に繋がらない、宙に浮いたコンテンツがたくさん出回るようになりました。

「意志なきコンテンツ」の乱立+ソーシャルプラットフォームのアルゴリズム変更という2つの動きが同時に起こったことから、2017年にコンテンツストックとある程度の拡散ベースを持てなかった企業は、乱世に突入した2018年に苦戦を強いられることになったのではないでしょうか。

ふまえて2019年上半期はどうなっていくか?

このような流れを受け、まず「戦略とコンテンツの軸を通さないといけないよね」と考える会社が徐々に増えてきています。私自身、ここ1年でいろいろな会社の採用広報に関する相談に乗らせていただくことがありましたが、各社どこも課題感を感じ、真剣に向き合おうとしている。そして、それを実現させるための進め方として、社長や経営トップ層が強い関心を持ち、ドライブさせようとしている。これは非常に良い傾向だと思います。

ご相談いただいて話をさせていただくとき、私は必ずまずこの話をします。すなわち、

「ゴールイメージを定義しましょう」

ということ。

(「採用広報を担当する人が気をつけたい、たった1つのこと」より抜粋)

様々なコンテンツが乱立する2018年でしたが、経営層の関心も徐々に高まり体系的に動く会社が増えてくる中で、2019年は少しずつ戦略とコンテンツの軸が通っていき、市場全体としてのレベルが引き上がっていくだろうという肌感があります。そうしないと勝てないという危機感を持つ人が増えてきている。裏を返すと、このレベルは最低限できていないと、2019年はたぶん本当に辛くなってくる。

適切な媒体選定と編集力、さらには新しい表現方法が差別化に

また、このようにコンテンツが乱立する時代になり、自社企画の記事がそこまでPVを取りづらくなってくると、あらためて高い編集力と統一感を持つ媒体の力が見直される時代になってくると思います。

例えばNewsPicksさん。インフォグラフィックを駆使し、高い編集力で企業の魅力を伝えていくコンテンツはさすがの一言に尽きます。

全4回といった連載で、企業の魅力を多方面から伝えていく。

定価は1本250万円、求人広告へのリンクも含めると300万円になるにも関わらず、その価値を感じて出稿する企業がぞくぞくと出てきている。

最近ではFastGrowさんも、モリジュンヤさん、小山和之さんといった優れたライター陣が記事を手がけており、企業のインサイトを魅力的に伝える媒体として台頭してきています。

(僕も取材してもらったけど、うまく深ぼって編集いただけたのが印象的でした)

自社コンテンツが乱立する中で、それだけでなく、適切な媒体選定と良質なコンテンツを通じた差別化が企業のブランドを分ける時代に突入してきているように感じます。

従来は、メディアに売り込んで企画記事を書いてもらうか、もしくは有料でスポンサーになって記事を書いてもらうか、しか手段がありませんでした。それが、自社でオウンドメディアを作ったり、マガジンを発信してみたり、Wantedlyでコンテンツを作って発信してみたり、いろいろな手段を取れるようになってきた。

その結果、内製コンテンツが増えてチャネルも爆発的に増えて分散が起き、1社1社のコンテンツ、1つ1つのコンテンツのパワーが相対的に失われてしまったのです。それによる停滞感が発生してきており、あらためて「メディアというものの価値」と「編集力というものの価値」が見直され始めているように感じます。

「同じ目的を持つ徒党を組んだコンテンツ」で勝ちにいく時代に

このような環境の中で、ただ採用担当が1人で地道にコンテンツをアップしているだけではプレゼンスを発揮できない状態になってきています。そうなると、頭抜けていく方法を考えていく必要が出てくる。その一つの答えとしては、単発で勝ちにいくのではなく、連載であったり統一感のあるコンテンツを爆撃のように撃ち続けることで、徐々にイメージを醸成していくという方法があると思います。

採用広報ブログは、何本書くのがいいの??」より抜粋

1つ1つのコンテンツだと埋もれてしまう。でもそれを継続していく。伝え方も1つじゃなく、2つ3つ4つ5つと、マルチチャネルで色々な方向から企業の法人格を伝えていく。そして、すべてのコンテンツに統一感を持たせる。その軸は冒頭に説明した「ゴールイメージの醸成」として定義した内容に揃える。

こういう発信の仕方が必要になってくる時代にさしかかっていると感じます。

中央集権的なリンクのシェアから、分散化したパーソナルコンテンツの発信へ

こうなってくると、どういうことが起こるでしょうか。

私は、担当者がどこかにコンテンツを起き、それをみんながシェアするという中央集権的なリンクシェアの時代から、各々が自分の会社で起こった出来事やその中で感じたことをコンテンツ化して発信する時代に突入すると思っています。

Facebookのアルゴリズム変更に伴いみんながTwitterやInstagram、YoutubeやTikTokに流れていったり、自社コンテンツ乱立状態をふまえ適切な発信手段の選定に企業が徐々に慣れてくる中で、全体としてこの動きが加速していくと思います。すなわち、社員みんながメディアになる時代。

先日、その動きを象徴させるようなイベントがありました。

PR3.0 Conference 〜企業と「個」の新しい関係構築〜

実に1,283名が参加、19のプログラムはどれも熱量を帯び、立ち見続出のPRイベントでした。#企業と個の新しい関係構築 は、twitterのトレンドで1位を獲得。まさに2018年のPR、採用広報界隈を象徴するイベントだったのではないかと思います。

その中でとりわけ印象的だった話をハッシュタグから拾ってみました。

影響力がどんどん個人の手に移ってきている。

「企業を人格化する」ということ。

いろいろなセッションがありましたが、まさに「企業と個は新しい関係構築」を迫られているという流れを実感する内容でした。

先ほどより述べてきたような潮流をふまえると、採用広報を行うにあたり、今後は個がどう発信するか、ということに向き合う必要が出てくる。それはまさに、企業と個の新しい関係に向き合わざるを得なくなってくるということだと思います。

企業が経営層レベルである程度採用広報に対し関心を持つようになり、一通り戦略やゴールイメージに沿ったコンテンツが出てくるようになる。そしてそれは同時に、一度「採用広報というものが臨界点を迎えることに繋がる」と思います。

それはなぜか。

エンゲージメントなき採用広報が淘汰される時代に

それは、個の発信力、個性を伴った一貫性を持つコンテンツを、各々が発信していくことにこそ拡散力と影響力が生まれ、中央集権的な記事拡散だけでは競争力を生み出せなくなってくるからです。

みんなが立ち返る「ビジョン・ミッション・バリュー」、そしてきちっとした媒体と編集で会社のことを伝えていく軸のようなコンテンツは、採用広報の波の中で最低限どの会社も持ち合わせていくことになる。

そうなると、採用広報という話の中で今言われていることのうち、表面的であり比較的テクニカルな話のほとんどが競争力とリンクしない話になってしまう。このタイミングで一度、臨界点がくるように感じています。

法人格という胴体と一体となった四肢のような存在というか、細胞分裂して広がっていくイメージとしての個が、どれだけ会社の魅力を発信し続けるか。そしてそのコンテンツが徒党を組み、一つの大きな発信力として影響力を持っていくか。これが2019年の採用力を決めていくと私は思っています。

では、どういう会社なら、そういう発信力を持っていくのでしょうか。

それは、一言で言うと、「企業と個との間に、愛と尊敬を伴った相互関係が存在するかどうか」だと思います。

(本文の抜粋)

愛と尊敬の相互関係を持った個が、企業への愛と尊敬を思い思いに発信する。これができる企業とできない企業とで、2019年は大きな差が生まれてくるだろうと思うんですよね。

個々がどれだけ発信をしたいと思える会社か。そしてそのネタが日常に溢れているか。それが採用力に直結しやすくなってくると思います。そして企業や採用担当は、どれだけ発信したいと思えるような実態を作り、ネタを散らばせておくか、が大事になってくる。

そして個の発信力が強くなってくると、それだけネガティブな側面もさらけ出されるようになってきます。中央集権的に発信した内容と実態が違えば、口コミやソーシャルなどでどんどんそのギャップについて指摘されるようになってくるでしょう。

2018年、この流れを象徴する動きがありました。

「モチベーションクラウド」を運営するリンクアンドモチベーションが、転職口コミサイド「Vokers」と資本業務提携を締結したということ。この流れはまさに、これまで説明してきた潮流とマッチする動きだと考えています。口コミやソーシャルでの個の発信が影響力を増してくる中で、そこから採用にダイレクトにつなげるという動き「Vokersリクルーティング」も出てくる。同時に、そういう評判のよくない会社は今まで以上に可視化され、敬遠されてしまう。

先日とある会社の採用担当と話した際、「うちは面接設定が決まってから面接の実施に至るまでの辞退率、ドタキャン率が1/3くらいある。ソーシャル上で『入ってみたら聞いていた話と違う』『社内の雰囲気が悪い』というコメントが増えたあたりから高くなっていて、相関性を実感している。」という話を聞いてその数に衝撃が走りました。これは担当の主観であり証明されたものではないですが、少なからずこう言う動きは今後ますます起こっていくだろうと思います。

愛と尊敬を軸に、個が統一感のある発信を継続していく企業になれるか。

これこそが、2019年の採用力を決める要素だと私は考えています。

まとめ

まとめます。

2018年は、採用広報という言葉を色々な人が使い始め、経営者含め様々なプレイヤーが関心を寄せるようになりました。企業の魅力を伝えようとするコンテンツが乱立するようになりましたが、Facebookのアルゴリズム変更や意志なきコンテンツの大量生成により、従来型の中央集権的な拡散手法に限界が出始めました。

2019年の上期は、この動きをふまえ、より戦略やゴールイメージと連動したコンテンツが増えることが予想されますが、それも飽和化することにより、採用広報は一度臨界点を迎えるでしょう。その後は個の拡散力に目が向くようになりその影響力を増していくことから、企業は実態としての魅力そのものに向き合わないと、その個の力を活用できないと言う危機に陥るでしょう。

この流れから、2019年の下期は企業と個が愛と尊敬でつながっており、個がその関係性をオリジナルなコンテンツとして発信し続けるような会社が採用力を持ち、それができない会社は採用力をじわじわと落としていくでしょう。まさに、エンゲージメントが企業の採用力を決める時代に突入すると私は考えています。

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ベンチャー採用 Advent Calendar 2018、3日前のコンテンツはいかがでしたでしょうか。月曜日からずっしりヘビーな内容を書きましたが、来年を見据え、今どうしたらいいか、を考えるきっかけになればと思います。

ほんとはメドレーの2018年の採用知見の話とか、リファラル採用に特化した2019年の潮流の話とか、動画を使った新しい採用広報の手法の話、とかも色々話したかったんだけど、それは個別で会った時にもお話ししましょう。

さて、明日はカリスマエージェント、Key Playersの高野さんにバトンをつなぎます!


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