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【47エディターズ】1月公開の47リポーターズ、編集したデスクがご紹介します

共同通信が随時配信している「47リポーターズ」では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問を深掘りしています。当コーナー【47エディターズ】は、最初の読者として原稿を読み、完成までを伴走したデスクによる紹介文です。今回は1月配信分の計8本を取り上げます。

記事のおすすめポイント、編集者としてのこだわり、字にならなかったこぼれ話満載?のコーナーに目を通してから記事をお読みいただくと、ちょっと違って見えてくる、かもしれません。映画の副音声解説のようにお楽しみいただければ幸いです。


■平安時代に死に別れた兄弟武士、900年後に末裔がまさかの〝再会〟 きっかけは新聞記事、記者もびっくり「ドラマのような偶然」

元日に公開されると、SNSやヤフーコメントでは「新年早々とても素敵な記事を読ませてもらった」「正月にふさわしい」といった声が相次ぎました。どうやら日本人の家系図好きは筋金入りのようです。そして、取材時88歳と101歳というお年にもかかわらず、研究に精力を注ぎ込んでおられるお二人の姿勢に感銘を受け、勇気づけられた人もとても多くいたようです。人間、いつでも探究心を失わないって素晴らしいことですね。読者の中にはお二人のDNA鑑定を求める声も大変多かったです。(真下)

筆者の中川玲奈なかがわ・れな記者は、記事に出てくる小野寺義寛さんと学生時代からの知り合いで、そのつながりと関係を記者になってからもはぐくみ、こつこつと取材を続けてきました。

中川記者の思いはこちらでお読みいただけます。

■「10年前は、もどかしく眺めるだけだったパレード」、今は自分らしくいられる場所 写真で振り返る西日本最大級「レインボーフェスタ!2023」

レインボーパレード、私も各地で取材したり参加したりしてきました。いろんな人と連帯する感じが楽しいし、学びもありますよね。

大阪・梅田で開かれた「レインボーフェスタ!2023」の様子を、安部日向子あべ・ひなこ記者と福原健三郎ふくはら・けんざぶろう写真記者が、動画と写真で特集しました。

イベントの様子をただ紹介するだけでなく、実行委員会の共同代表が抱えてきた思いをうかがいました。

華やかなパレードの裏側に、もどかしく眺めている当事者たちの存在があることに、思いをはせたいと感じました。(角南)

■漁師が全力で「働き方改革」をしたら…収入が増えて勤務時間が半減した 30代の夫妻が見いだした、環境に優しくて持続可能な漁業

「完全受注漁」という新たな形の漁が岡山で始まっています。注文を受けた分だけ魚を水揚げし、市場を通さず顧客に届けるスタイルで、実践している30代夫妻の挑戦を岡山支局の我妻美侑わがつま・みゆ記者がまとめました。驚くべきことに、船の操業時間が半分以下になり、それなのに売り上げは2倍以上になったそうで、なぜそんなことが可能なのか、そのからくりを記事で紹介しています。

さまざまな会社などで進められている「働き方改革」が、漁という分野にも及んでいる新鮮さ。そこに着目した我妻記者が夫妻に密着し、海外での「持続可能な漁」のあり方を調べてみると、「稼げる職業」として漁師が認識されている他国の姿も見えてきました。受注漁に追随する漁師が多いと市場を介した流通構造が成り立たなくなるのでは、という指摘もあると思います。ただ、多くの漁師が疲弊する中で、自分の力でワークライフバランスの改善につなげた夫妻の挑戦は注目すべき動きだと思います。

夫妻は受注漁のモデルチェンジにも取り組んでいるとのことで、今後どんな未来を見せてくれるのか楽しみです。(鶴田)

■中国政府に逆らうと「無理やり注射され、ゾンビのようにされた」 仕事奪われ強制入院、命からがら「自由の国」日本へ…でも待っていたのは「入管の壁」

大阪支社各部で編成した難民取材チームが、多様な取材を展開中です。

今回は、難民申請中の中国人に密着取材し、写真とドキュメンタリー動画で構成しました。

男性の政治的言動に端を発した中国での「強制入院」、日本での支援団体の奔走、難民認定の巨大な壁。

国家に抗い翻弄される市民の存在を描き、難民行政を考えるきっかけにしたいと考えました。(角南)

■「クスリを一度に40錠飲んだ。ふわふわして不安が消えた」オーバードーズの恐怖 若者がハマる背景に、孤独感や対人関係

若年層を中心に、薬の過剰摂取が広がっています。市販薬や処方薬を一度に大量に飲む行為は「オーバードーズ」や「OD」と呼ばれ、救急搬送される事案や、薬の譲渡を巡る事件が増えて社会問題化しています。
 
なぜ若者がオーバードーズに走るのか、その背景にはどんな思いや要因があるのか、周囲は当事者とどのように向き合うべきなのか。山口支局の丹伊田杏花にいだ・きょうか記者が、こうした疑問を丹念に掘り下げた原稿を寄せてくれました。かつてオーバードーズに陥り、周囲の助けを得て回復の道のりを歩んだ女性を主人公にしています。
 
事件や問題の当事者がいかに特殊か、を強調することは「私とあの人は違う」という安心感にはつながるかもしれません。他方で、社会が抱える問題を共に解決するために何ができるか、を考える姿勢からは離れてしまう気がします。「もしかしたら自分もああなっていたかもしれない」「自分とはあまり違わないのかもしれない」という視点で事象を受け止めると、同じ出来事を繰り返さないためのヒントが見えてくる、かもしれない。エディターとしてはそうした観点で読んでもらえたら、という思いを込めました。
 
出稿は、昨年12月に厚生労働省の検討会がオーバードーズ対策案をまとめたタイミングに合わせました。と書けば聞こえはいいのですが、かなり早い段階で手元に届いていた原稿を、エディターの私が(多忙というほどでもない)多忙にかまけて放置していたのが実情です。ニュースの鮮度を見極める難しさに直面しては、失敗して反省する日々です。
 
丹伊田記者が取材の背景を解説したポッドキャストも公開されていますので、よければこちらも聴いていただけると幸いです。(関)

■「感染者が立ち寄った店」知事のひと言で客は消えた…老舗ラーメン店主の絶望 行政のコロナ対応は本当に妥当だった? 今考えたい感染症対策

コロナ禍が終わり、あの異常だった日々を、私も急速に忘れ去りつつある気がします。

あの時のあの判断、あの行為は、果たして妥当だったのか。そんな総括をしておかないと、次のパンデミックの際に、同じ過ちを繰り返したり、もっと悪い状況を招いたりしてしまうのではないか。そんな思いから、徳島支局の米津柊哉よなず・しゅうや記者、高松支局の牧野直翔まきの・なおと記者が取材しました。「振り返り」は、メディアにとって大切な仕事です。

後日談として、記者2人がそれぞれの視点で記事を振り返っています。(角南)

コロナ禍に就活し、共同通信に入ったという米津記者。

ラーメンがうまかったという牧野記者。

■京アニ放火殺人、事件の背景に見えてきたのは…ロスジェネ世代の「一発逆転の呪い」 雨宮処凛さんインタビュー

個別の事件に着目するとき、取材者としては、どうしても加害者のパーソナリティーや背景に注目してしまいがちになりますが、今回インタビューをした雨宮さんのように少し離れた場所から、運動家的視点からクロニクルに見つめた時には全く異なる「様相」が出てきます。「一発逆転の呪い」というキーワードがまさにそれでした。抑圧されたロスジェネ世代が長い年月をかけて鬱積させてきたもの、というわけです。雨宮さんのインタビューを編集しながら夢想していたのは、被告が京アニの応募小説でもし仮に大賞を取っていたらどうなっていただろうか、ということでした。彼には全く別の人生があったでしょうか。それとも…。(真下)

以下、取材、執筆した武田惇志たけだ・あつし野澤拓矢のざわ・たくや両記者のコメントです。

死刑が予想される中、これほどの大事件を死刑判決で「はい、終わり 」という空気にはしたくなかった。雨宮処凛さんによる、青葉被告らロスジェネ世代の生きづらさに対する分析だけでなく、男性性の問題への言及、さらに処方箋としてのだめ連の思想などオルタナティブな生き方の紹介にも力点を置いた。 (武田)

どうしても報道する側も『平成以降最悪の犠牲者を生んだ』という部分にばかり注目してしまいがちだ。しかし、公判が進むにつれて被告が生まれ育った環境や、彼なりの挫折、苦悩も明らかになっていった。決して事件は肯定できるものではないが、なぜ事件が起きてしまったのか、という部分にスポットを当て検証することが必要だと思った。(野澤)

■鮭を盗み、イクラ持ち去り…迷惑行為で釣り場が次々閉鎖 その中で続く「奇跡」の場所には、住民の工夫があった

休暇で大阪から北海道まで釣りに行った小島鷹之こじま・たかゆき記者は、帰ってくるなり私にこう言いました。

「ルポを書きたい。ちゃんと取材し、写真も撮ってます」
「そりゃ書くのはいいけど、休暇やったんやろ。ちゃんと休めたん?」
「はい、私の車は車中泊用に改造してて、寝心地がいいし、でかい鮭はいい引きでしたよ~。北海道では(以下略)」

記者という仕事は、オンとオフの境目がとてもあいまいです。私的な用事が、取材につながることが日常的に多々あるからです。

釣り場を一部の人が管理する行為には、賛否両論があるようです。しかし、荒れる釣り場があるのは現実。「ここでは釣り禁止」とならないよう、試行錯誤しながら、みんなが安全に楽しめる釣り場を残したいと思いました。(角南)

1月分は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。(関)


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