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自己啓発と健康、スピリチュアルオタクを10年やってみた

自分が「あんぱん」だとする。

・あなたは米です→No
・あなたは食べ物です→Yes
・あなたは自分で動くことができません
・あなたは甘い傾向がある
・柔らかいものです
・ゴマがかかっていることがあります
・温めて食べるとおいしいです

という情報を死ぬほど集めても、基本的に意味がない。「私は、小麦粉をこねて焼いたもので、中に小豆を甘く煮たものが入っています」というそのものズバリの情報がないと意味がない。

私はそれがわからなくて、多くの人が仕事をし、結婚をし、子供を産み、家を買ったりしている30代を、自分探しの診断に費やした。ほんとアホだなあ、びっくりする。自分で自分がわからないから、自分で決める自信なんてないから、誰かにカテゴライズしてラベルを貼ってもらって、それをアイデンティティと認識して、まっとうに生きていきたかった。

私が自分探しの軸として行ったのは次の3つ。自己啓発(マインド)、健康(ボディ)、スピリチュアル(スピリット)。すごい、無駄がない、網羅している。自分の抜かりなさに驚く。ビジネス本とネット記事を読み、セミナーに参加して、リーダーシップとは、組織論は何か、物事をどうカテゴライズすればいいのか、論理的に考え、伝達するにはどうしたらいいのか、アイデアはどう出せばいいのかを頭に詰め込んでいった。成功者や幸せなお金持ちは何をしているのか。素手でトイレ掃除をしているらしい、悪口を言わないらしい。よしOK、「ありがとう」を念仏のように唱えまくろう。体から不調や悪因を除くべく、ベジタリアンになり、ヨガにいそしみ、インドで講師資格をとり、靴下を何枚も重ね履きし、布ナプキンをなるべく使うようにした。断食合宿にはいくけど、もちろんマクドナルドなんか行かない。現実に起きていることは自分の鏡である。霊性と波動を上げよう、チャクラのバランスを整えよう。これは前世のカルマかな?インナーチャイルドかな?ヒーリングだ、グラウンディングだ・・・

書いていて本当に気持ち悪い。でもそれしか私はやり方がわからなかった。アナリティカルでエモーショナル、牡牛座(月星座はおとめ座)B型、二黒土星、マヤ暦なら青い鷲と青い手、数秘術なら11。アーユルヴェーダの体質は日本の診断ではピッタヴァータ、インドの診断ではヴァータピッタ。診断結果は違うけれど、要はカパが少なく、ヴァータ・ピッタが過多なのだろう、遺伝子検査では・・・といった具合に結果を集め、時に納得したり、時に怒ってみたりしながら外からのカテゴライズとラベルを集めまくった。もう一度書く。本当に気持ち悪い。

やっている間、私は全くモテなかったし、飲み会も減ったし、収入も減った。おかしいな、トイレ掃除をしているのに、悪口を言わないのに、肉を食べないのに、給料日前にはカツカツになるし、海外旅行なんて全然いけないし、体は冷え性で、しんどい。自己啓発と健康オタクとスピリチュアルの膨大な知識と実践があれば、ウハウハなはずなのに、何かおかしいと思って、これまでに信奉してきた教えを、実践してきたメソッドを恐る恐る、少しずつ捨ててみた。

そうしたら、別にモテはしないけれど、飲み会が増え、冷え性が治り、収入が増え、前よりも好きな服、新しい服を着られるようになって、海外旅行にも行けるようになった。「やりかたが間違っていた」という受け入れがたい事実を受け入れなければならない現実がやってきた。やりきれないけれど、楽しいほうがいいから、まあいいや、受け入れるよ、全然。

でも今、自分が何なのか、結局わからない。「自分で自分がどういうものなのか」を自分の頭で考えなかった/聞いてこなかったから、そこの情報ががっさりとない。他者によるカテゴライズとラベリングに頼ってきたから、中身がないのである。うへえ。40目前にして私、中身ないっす、「これならできる」なんてこと言える分野ないっす、わーリセットボタンとかないですかね、ないですよ、みたいな感じ。

多分「自分は何なのか」というのに答えもなくて、きっと死ぬまで見つからないのだけれど、だからといって等閑(「なおざり」の変換ででてきた)にできるものでもなさそう。その情報は、外ではなくて、自分の中にぎゅっと深くあるものなんだろう。それを見るのが嫌で、外の情報にばっかり頼ってきたけれど、それじゃダメみたいだ。今まで無視しててごめんな、しょうがない、やるかあ。今まで汚くて何もないと思って見ないようにしていたところに潜ろう。何もないってことはないはずだ。おそらく、きっと、それが知らないところに連れてってくれるような気がする。

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