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『人間性はどこから来たか』【新人読書日記/毎日20頁を】

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新人読書日記シリーズ、3冊目。
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記事一覧

人間性はどこに向かうのか【新人読書日記/毎日20頁を】(43)

「人間性はどこから来たか」、読了です。 四半世紀前の本ですが、今の時代でも啓発されるところがだまだ多いです。火を使い、調理ができるようになったことで、栄養を十分に摂ることができるようになった人類は、脳のサイズが大きくなり、人間になったという仮説があります。人間が初めて人間になった時を回顧し、現代人の未来を展望してみると、人間性はどこに向かうのでしょう?終章で、著者は現代社会のあらゆる問題を指摘しています。人口爆発、環境汚染、資源不足、浪費など、人間は「進歩」の嘘を信じ込み、

人間とチンパンジーの共通祖先の謎 【新人読書日記/毎日20頁を】(42)

 「人間性はどこから来たか」、261-280頁、読了です。  約460〜510万年前、人間とチンパンジーの祖先が分岐したとわかりました。人間とチンパンジー属の最後の共通祖先が森林で生活を展開していた可能性が高いと語られています。なんとなく、自然や植物に親近感が湧くのは、古い森への記憶が遺伝子に残っているからかもしれません。また、人間の祖先はどんなきっかけで直立二足歩行になったのか、効率説、性淘汰説といった様々な仮説がありますが、決定的なものはありません。宇宙人に教えられた可

脳の「Homunculus」【新人読書日記/毎日20頁を】(41)

「人間性はどこから来たか」、241-260頁、読了です。 本章「知能の進化」の「道具仮説」という節に言及されている「脳のホモンキュラス(Homunculus)」に惹かれました。図版の画像はどこかで一度見た記憶がありますが、どういう意味か今日初めてわかりました。簡単にいえば、体の個々の部位の感覚が、脳のどの部分に対応するのかを見える化した人間の脳の「地図」です。アメリカ、カナダの脳神経外科医であるワイルダー・ペンフィールドによる脳電気生理学での発見です。初めての方は、ぜひ調べ

言語が表れたきっかけ 【新人読書日記/毎日20頁を】(40)

 「人間性はどこから来たか」、221-240頁、読了です。  言語がなければ、本は存在しない。言語がなければ、現代社会も成り立つことは不可能です。ただいま読んだ「言語の起源」の本題に触れる節で、情報を伝えるために、言語ができたと、著者は主張しています。スマホもインターネットもない原始社会で、食べ物のある場所を親族に教えるには、声を出し、言語で伝えることしかできませんね。昔々、暮らしを便利にするために、人間はいろんな道具を作りました。同じように、情報伝達を即時できるようにする

小猿の金切り声、ねこの喧嘩【新人読書日記/毎日20頁を】(39)

「人間性はどこから来たか」、201-220頁、読了です。 動物の言語に関する研究は世界中で数多く行われています。本章「言語の起源」では、霊長類の「言語」について世界各地の実験や研究の成果が論じられています。非専門家は、サルの金切り声はだいたい同じと感じますね。ところが、サラ・グーズール等の研究者によると、なんと5種類あるようです。小猿の5パターンの鳴き声に対する母猿の反応強度がそれぞれ違い、同じように聞こえる鳴き声に実は違う意味が含まれていることがわかります。 近頃ネット

動物の文化の地方性【新人読書日記/毎日20頁を】(38)

「人間性はどこから来たか」、181-200頁、読了です。 人間社会では、お国違えば文化も違うことは皆さんご存じの通りです。動物の世界にもそういう相違があるようです。チンパンジー研究者の観察によれば、チンパンジーが身振りで表現する求愛行動の「葉の噛みちぎり」は、マハレ地域ではよく行われていますが、他の調査地では知られていないとのことです。小会の書籍「アザラシ語入門」(シリーズ『新・動物記』)にあるアザラシの「方言」に関する節を思い出しました。動物研究って本当に面白いですね。

文化とはなんでしょう 【新人読書日記/毎日20頁を】(37)

 「人間性はどこから来たか」、161-180頁、読了です。  「文化の起源」をめぐって議論する章です。学習の種類や定義から文化情報の伝達までさまざまな角度から紹介されています。文化は「知識・信念・芸術・道徳・法律・習慣、そして社会のメンバーとして人間によって獲得される他のあらゆる能力と習性を含む複合的な全体」とは19世紀の文化人類学者エドワード・タイラーによる文化に対する定義です。著者はそれを引用し、「文化」は人間社会に限らず、動物世界にも存在すると指摘しています。文中挙げ

仲間を殺せば殺人、敵を殺せば英雄 【新人読書日記/毎日20頁を】(36)

 「人間性はどこから来たか」、141-160頁、読了です。  高校時代初めてジョン・レノン(John Lennon)の歌「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」(Happy Xmas (War Is Over))を聴いた時、よくわからないものに心を動かされました。気分が上がるメロディー、かわいい子どもたちのハーモニー、何もかも気に入って、ネットでジョン・レノンに関して色々検索しました。彼の反戦精神や、反戦のために行なった活動の関連記事を読み、戦争を体験したことのない私ながら

排卵の隠蔽、家族の成立 【新人読書日記/毎日20頁を】(35)

 「人間性はどこから来たか」、121-140頁、読了です。  引き続き、「家族の起源」を巡る議論です。人間と動物の違いは、男女の性差による労働の分業の有無にあるそうです。狩猟採集社会では、男性が大型獣の狩猟など、より「汗をかく」仕事を担当するのに対して、女性は子どもの世話、植物の採集や小型獣の狩猟など、キャンプから遠く離れない仕事をするということです。ただ、現代社会では、男女による性的分業はほとんどなくなってきていますね。  最後の節に、「排卵の隠蔽」という議題が語られて

兄弟姉妹はなぜ大人になると離ればなれになる? 【新人読書日記/毎日20頁を】(34)

 「人間性はどこから来たか」、101-120頁、読了です。  日本の生態学者、文化人類学者である今西錦司により、「人間家族」になる必要な条件が4つにまとめられています。ここで著者は4つの条件の1つ「近親相姦の禁忌」(インセスト・タブー)について論じています。動物の世界でもまれではない現象ですが、その根本的な要因はやはり繁殖です。近親の結合で繁殖にとって様々な不利な状況が発生するからです。  インセスト回避の一例として、子ども時代を一緒に過ごした兄弟姉妹は、大人になって恋愛

年賀状と人間の互酬性 【新人読書日記/毎日20頁を】(33)

「人間性はどこから来たか」、81-100頁、読了です。  第5章「互酬性の起源」では、霊長類から人間社会まで、互酬的行為や協力のパターンが論じられています。利他行動と利己行動は血縁関係に限らず、普遍的な人間関係にも大きく影響を及ぼしていると感じました。著者は日本における年賀状のやり取りを例として挙げて、人間の互酬性を語っています。年賀状を出したのに、相手からは来なかった場合、大体翌年は年賀状書きません。それは相手のことを「お返しをしない人」だと認識したのです。同じように、霊

なぜ集団生活をするのか 【新人読書日記/毎日20頁を】(32)

 西田先生はアリストテレス『政治学』を引用して第4章の議論を始めています。  本章は霊長類が集団生活を進化させた要因を探る章です。なぜ霊長類は集団を作る必要があるのでしょう。それは集団を作ることによって、捕食者に食われにくくするためです。人が多くて力を合わせれば共同で敵を退治することができますし、しかも、集団に入ると、自分を「目立たない」ようにすることができ、賢い捕食者対策になります。あらゆる所に脅威が潜んでいる原始社会だとすれば、理解できます。現代社会でも同じ生存ルールが

社会生物学から見た人類【新人読書日記/毎日20頁を】(31)

「人間性はどこから来たか」、41-60頁、読了です。 この辺りでは、社会生物学の視角から、人間の結婚、出産に関わる本質に触れています。身近な話題が取り上げられ、男女の恋愛・婚姻関係における役割の差などについて、生物学の視点から解釈されています。例えば、なぜ男性の方が婚資を払うべきなのか、なぜ夫の不倫は妻の不倫より大目に見られるのか、男女格差について生物学の角度から理性的答えを出しています。また、「独身主義」、「同性愛」、「養子取り」など、現代社会にみられる現象の存在理由に関

満員電車に痴漢が絶えない理由は… 【新人読書日記/毎日20頁を】(30)

 「人間性はどこから来たか」、21-40頁、読了です。  第1章「現代人は狩猟採集民」では現代人のいろんな特徴や習慣、また病気は昔々の狩猟採集民時代から受け継いできた遺伝子型や本能から生じた文明社会不適応性だと主張されています。  今読んでいる第2章にもこういった主張に触れています。本題に入る前にまず、人間性研究の歴史が紹介されています。様々な分野の国内外の学者の研究努力と成果を概観することができます。まるでバイキングのように、人類の進化に関する面白い議論を一気に満喫でき