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『「対話」で教職員の心理的安全性を高める!』

 現行学習指導要領で実現が求められている「主体的・対話的で深い学び」や、教員研修における「対話に基づく受講奨励」など、学校教育活動等において「対話」の必要性がいっそう高まっています。

 このようななか、本書ではある公立小学校において実践された、教職員の心理的安全性を高め、学校経営の改善につながった「対話」の取組を管理職の視点から紹介しています。教員・子ども・保護者・地域に「対話」を根づかせていくため、校長としてどのように取組を進めていったか、そして「対話」が学校に浸透していった結果、どのような成果を得られたのか。「対話」による学校づくりのありのままをお伝えします。

■管理職だからこその柔軟な姿勢と覚悟
 実は管理職という立場が「対話」を妨げることがあります。「私の言うことは絶対」「自分がルール」のように、管理職風を吹かせながら「対話」への取組を無理強いしたところで、教員たちは「やらされ感」を抱くだけです。私自身もそんな管理職になってしまう危険性があると常に自覚していました。自分自身にいつでもブレーキをかけられるように、管理職こそ真剣に「対話」を理解して取り組まなければならないと思っています。教員たちも頑張って「対話」に取り組むのですが、管理職はもっと頑張らなくてはならない。「どのようなことにも身を低く」との覚悟をもつこと、言わば自分との闘いです。

 そのため、管理職であることを一旦横に置く必要があります。管理職は学校経営での裁量や権限を与えられていますが、それらの枠をあえて外していくことが管理職の「対話」の重要な要素です。それが学校に「対話」を浸透させていくための原点となり、「対話」に基づく学校経営の基盤となります。管理職としての立場がなくなると心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし勇気を出してフラットにしていくことが「対話」を浸透させる鍵となるのです。このことで管理職自身が変わることもできるのです。

 もちろん管理職の立場を完全に忘れるという意味ではなく、法令上遵守しなければならないことを踏み外したり、社会通念上、誰が見てもおかしいということを容認するわけではないことも申し添えておきます。可能な限り柔軟に対処していきましょう。

 そのうえで教員に寄り添いながら、一人一人の可能性を信じて待つ姿勢が大切。これまで述べてきたとおり、「対話」では自分の内面をさらけ出す必要があるので、人によっては辛くて避けてしまいたくなることもあります。「自分はこれ以上無理だ」と思う限界値・限界点を外す(=「エッジを外す」)ことがどれだけ大変なことか。先生方は日々の経験からその大変さを知っているので、「そんな難しいことにチャレンジしたくない」などの自分を守るような気持ちになっても不思議ではありません。個人差はありますが、実際にそのような場面がいくつもありました。

 しかし教員には、「よりよい授業を創っていきたい」という思いが根本にあります。悩みながら、揺れながら、葛藤しながら前に進もうとしている息吹を管理職はいち早く察知し、受け止めて、相手に合わせて待つことが大事です。

 所属教員を管理・監督するのが校長の職務ですが、「対話」の実践は、管理・監督の在り方を大幅に見直すきっかけにもなるのです。

「第1部 なぜ学校経営に『対話』が必要なのか」より

【本書の目次】
第1部 なぜ学校経営に「対話」が必要なのか
1 「対話」とはどういうことなのか ――「会話」「議論」との違い
2 「対話」の基本的な考え方・進め方――現状をありのままに受け止め、教職員に寄り添う
3 学校経営で管理職が「対話」するメリット――教職員の心理的安全性を高める
4 子供も教員も成長する喜びを実感する――数値化が難しい「対話」の力
5 立ちはだかる「対話」の壁――留意すべき三つのポイント
6 「対話」を学校経営の根底に置く――中心にいるのは子供たち
7 「対話」で教職員を育成する――人間力UP!
8 「対話」で子供を育てる――思考力・判断力・表現力、心が豊かになる
9 「対話」で保護者・地域と連携・協働する――同じ目線になってみる
10 学校経営で「対話」が日常的になると――これまでの「あたりまえ」を超えて新しい未来を共に創造できるようになっていく

第2部 「対話」による学校づくり
1 「対話」する環境をどう整えるか――効率のよい「三つの柱」
2 「対話」の本質を教職員にどう理解・浸透させていったか――コアチームづくりと信頼関係の構築
3 「対話」の質をどう高めていったか――心理的安全性の確保をベースに
4 「対話」で教職員が育つとはどういうことか――相互作用がもたらす学び合い
5 保護者・地域・外部機関との「対話」をどう実践していったか――互いの願いを「対話」で結ぶ
6 管理職と子供との「対話」――「対話」のチャンスを見逃さない
7 「対話」をどう評価していったか――みんなの「やる気」と「笑顔」が指標

第3部 「対話」による人材育成
1 真面目で努力家だが自信がない。そんな若手教員の心を開いたのは「安心感」
2 センスのいいミドルリーダーがさらに磨きをかけ、学校運営の視点を身につけた
3 「授業名人」のベテラン教員が「指導・助言名人」の“師匠”へ
4 初めは意欲の見られなかった中堅教員の“劇的ビフォーアフター”
[座談会]「対話」で私たちの学校はこう変わった~新旧研究推進委員長・副校長の本音トーク

[寄稿] 「対話」による加藤校長先生の変容(合同会社ファミリーコンパス代表 渋谷聡子)

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