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読書拙想文

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読書して思ったことを、つたなくも、つらつらと書きます。
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読書拙想文 『聖の青春』大崎善生

読書拙想文 『聖の青春』大崎善生

 「東の羽生、西の村山」と将棋史上に残る最強棋士・羽生善治と並び称されながら、平成10年に29歳で早世した棋士・村山聖の生涯を綴った伝奇的作品。

 著者の大崎さんは元日本将棋連盟の雑誌編集者で生前の村山九段とも親交があった。そんな大崎さんが、村山九段の家族や師匠の森信雄七段からエピソードを集めたのが本作である。

 29歳といえば今の私よりも一つ年下ということになる。幼い頃から腎臓の病気に苦しめ

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読書拙想文 『関が原』司馬遼太郎

読書拙想文 『関が原』司馬遼太郎

 2016年の最後に読んだのは、最も大好きな作家の一人である司馬さんの、その数ある作品の中でも最も大好きなものの一つである『関が原』だった。私がこの作品を初めて読んだのは確か中学生の時で、今回で四回目の読了となった。

 司馬さんの作品には大きく分けて二つの類型があり、一つは『竜馬がゆく』(坂本竜馬)や『燃えよ剣』(土方歳三)のように一人の主人公にスポットライトを当ててその軌跡に沿って物語を進める

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読書拙想文 『ラスト・ワルツ』柳広司

読書拙想文 『ラスト・ワルツ』柳広司

拙想文のペースが早いのは、決して『シュメル』を読み進めるのが難しすぎて、他の本に浮気しながら同時並行で色々な本を読んでいたからではない。この間、本書の他に司馬遼太郎さんの『関が原』も8割方読み終わっているなんていうことも断じてない。

本書は『ジョーカー・ゲーム』から始まる柳広司さんのスパイ小説、D機関シリーズの最新刊(といっても文庫化したのは今年の春、書籍化は2年近く前だけど)である。拙想文初の

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読書拙想文 『シュメル――人類最古の文明』小林登志子

読書拙想文 『シュメル――人類最古の文明』小林登志子

シュメル人の文明について書かれた本である。シュメル人の文明と聞いてピンとこない人(私もその一人)は、教科書にも出てきた古代メソポタミア文明と認識してもらっても間違ってないのだと思う。チグリス・ユーフラテス流域に栄えた古代文明である。

古代オリエント史に属する歴史で、私にとって全く守備範囲外であった。では何故この本ょ手に取ったかというと、友人から薦められたからなのだが、友人の推薦文句は「壮大な古代

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読書拙想文 『[真珠湾]の日』半藤一利

読書拙想文 『[真珠湾]の日』半藤一利

 半藤氏の著作では、『日本のいちばん長い日』が昨年、役所広司さん・松坂桃李さん主演で映画化されて話題になった。

 私も映画館で見て、DVDも2回借りて見て、都合3回見た。凄く面白い作品だった。それ以前に、本の方も読んでいる。(ちなみに本の方は、陸軍の一部将校が1945年8月14日から15日にかけてクーデターを起こしたいわゆる「宮城事件」の経緯に多くの頁数が割かれているのに対し、映画は鈴木貫太郎に

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読書拙想文 『99%の会社はいらない』 堀江貴文

読書拙想文 『99%の会社はいらない』 堀江貴文

 この本とは直接関係のない話だが、私がもっとも尊敬する幕末の偉人・高杉晋作が詠んだ歌の一つに、

西へ行く 人を慕いて 東行く 我が心をば 神ぞ知るらむ

という歌がある

 高杉晋作というのは自分の故郷である長州藩(今の山口県)至上主義者であり、長州藩一国を以って日本から独立して世界と対峙する『割拠論』を主張していた。

 「西へ行く人」というのは、割拠論に理解を示さず天下を団結させようと京都(

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読書拙想文 『働く男』 星野源

読書拙想文 『働く男』 星野源

 アーティスト、俳優、コラムニストと多彩な顔を持つ星野源さんが、自身の仕事の産物をこれでもかと詰め込んで、「仕事観」をエッセンスとして振りかけたのがこの本。雑誌に連載されたコラムあり、昔書いた短編小説あり、自身の楽曲紹介あり、巻末にはお笑い芸人のピース又吉さんとの対談も収録されている。

 実は、星野源さんのことはよく存じ上げていない。周りの女性にも星野さんのファンは何人かおり、名前は知っていたが

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