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変幻✨꒰꒱✨音声配信アプリ⑩


💧なみだの魔法少女💧

なんだか守ってあげたくなるようなマントのフードを被った魔法少女のアイコンにしている、なみだちゃん。
ほわほわしていて、聞き上手でアニメが好きな女性だ。
声や喋り方が女の子そのもので、アニメ声だ。
アニメが好きで、可愛くて健気な女の子のキャラクターがなみだちゃんのお好みだ。

なみだちゃんは無意識に、なみだちゃん自身にそっくりなキャラクターが好きなのだなとうさみみは思った。

なみだちゃんは結婚しているらしく、旦那さんが居ない時にひっそり配信しているらしい。
お子さんはまだいないとのこと。
少し年上の旦那さんだそう。

なみだちゃんはふんわりとして、包み込んでくれそうな雰囲気がある。
でも、なんだか物悲しい感じが漂っているとうさみみは感じていた。

なみだちゃんが19時くらいに配信していたことがあった。
「寝たらだめだから、配信する」と言っていたのが、うさみみはなぜかひっかかってしまった。

起きていないと、旦那さん機嫌悪くなってしまうの?

と思わず、うさみみはコメントした。

「そうなんですよね」と力なく、なみだちゃんは答えてくれた。

なみだちゃんはそれから、何度かうさみみの配信にて打ち明けるようになった。

うさみみさん、あのね。

と、コメントで。

なみだちゃんの旦那さんは、仕事が終わると電話をくれるそうだ。
電話をして、10分程度で旦那さんは帰宅する。
旦那さんは、車で通勤しているそうだ。

車の音が聞こえてくると、なみだちゃんは慌てる。

玄関のドアが開いて、リビングの食卓に温かいご飯が盛り付けられて、用意されていないと旦那さんが不機嫌になるそうだ。
ご飯を用意していても、すぐには食べずに他のことを旦那さんがすることもあるので、その際はなみだちゃんは再度温め直す。
旦那さんが帰宅した際に、ご飯が食卓に用意されてないとキッチンにある、出来ているご飯を、なみだちゃんの目の前で捨てるそうだ。

ちなみに冷食やお惣菜の確認を旦那さんはしつこくしてくるそうだ。
冷食やお惣菜の場合、旦那さんは不機嫌になるとのこと。

外食をしようとなっても、何を食べたいか、なみだちゃんが提案しないといけない。
ただ、旦那さんの好みでないといけない。

旦那さんが車を運転している時に、機嫌を損ね速度をあげられ走行され、なみだちゃんは過呼吸を起こしたこともあったそうだ。
なみだちゃんは車から降ろされて、置き去りにされたこともある。

何度かなみだちゃんから、旦那さんに離婚話を切り出したこともあるそうだ。

「お前が逃げたら、お前を殺して俺も死ぬ」

と、なみだちゃんは言われたそう。

旦那さんにはお姉さんがひとりいて、よく自殺未遂をほのめかす連絡がくるそうだ。
その際は、なみだちゃんと旦那さんとでお姉さんの家に行くということも頻繁にしている。

死の話題が身近な環境なので、余計に怖い発言だなとうさみみは感じた。

なみだちゃんは、婚姻中に他に好きな人も出来たこともあった。
旦那さんとこんな関係ならば、よその男性の優しさにも惚れもするだろう。

なみだちゃんとその男性は両思いになり、お互いへの愛情を確認し合った。
そのうちに、次第に2人で暮らしていく話も出た。

だがその男性からやはり自分には荷が重過ぎると言われ、その男性との関係も終わった。

運悪くその男性とのやり取りも旦那さんに見つかり、なみだちゃんはスマホを解約されたこともあるそうだ。
この音声配信アプリも実は旦那さんに過去に禁止され、なみだちゃんはアプリの退会をしたこともあったそう。

なみだちゃんはアカウントを作り直し、このアプリに戻ってきた。
所謂、転生民だった。

なみだちゃんは、いつも私が悪いんですと言う。
身体的に暴力は振られていないし、自分が悪いから仕方無いのです、と。

「それは旦那さんが俺はこんなこといちいち言いたくないけど、お前のため思って言っているのだ。お前が悪いからだ、って言ってない?」

と、うさみみは思わず尋ねた。

すると、なみだちゃんは「そうです」と答えた。

いつもお前が悪いから、俺は怒っているのだ。

本当はこんなことは言いたくないのだ。

おまえがそうさせるのだと。

ただ旦那さんはこんな言動をしていても、謝ってくれたときはすごく優しくて、付き合いたての頃に戻るそうだ。
その状態が何日間が続くが、旦那さんの機嫌を損ねると歯止めが効かなくなる。
その繰り返しのようだ。

話を聞いていて、うさみみは恐怖を感じた。
典型的なDVである。また、典型的なDVのサイクルをしていると気づいた。

サイクルは、緊張期(蓄積期)➡爆発期➡開放期(ハネムーン期)
そう表現される。

非があるから、仕方ないという支配をするのだ。
また常時支配が続くわけでなく、緩急があるから自分さえ耐えればという発想に被害者はなる。

うさみみはなみだちゃんに、もっと客観的に物事を見てもらう言葉を模索した。
なみだちゃんの今の状況は、誰もが心配する状況ということを伝えたく、こう言葉をかけた。

「うさみみがなみだちゃんのお母さんなら、心配するよ」

と伝えた。
一番なみだちゃんの幸せを願っている存在が、その時のうさみみには母親しか思いつかなかったのだ。
娘が苦しんでいるのを知ったら、母親は絶望すると考えたのだ。
咄嗟の判断だった。

なみだちゃんの返答はこうだった。

「心配するのかな。お母さんは、私なんか産まなきゃ良かった!とよく言っていたから」

どうやら、実家は頼れない様子だ。
しかしこの質問は後々、すべての関係性をなみだちゃんがうさみみに話すうえで功を奏した。

なみだちゃんがふらりとうさみみの配信に立寄るときは、なんだかなみだちゃんの話をうさみみに聞いてほしそうな雰囲気だ。

しかし、なみだちゃんは自分からは切り出さない。

「なみだちゃんは、何かあったのかな?」

うさみみがなみだちゃんに話を振ると答える。

なみだちゃんは少し凹んでいてとコメントする

うさみみさんの声を潜って(コメントせずに)聞いています。落ち着かせてくださいと。

なみだちゃんは大変なことがあって、大変とは言わない。

少し、といつもうさみみに言う。


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うさみみさん、あのね。

うさみみが他のリスナーさんと談笑していたら、なみだちゃんが切り出した。

なみだちゃんが旦那さんから与えられた予算で生活費が賄えず、その事を旦那さんに言い出せずに、なみだちゃんは誤魔化してしまったらしい。

今回だけでなく、過去にも何度かあったようだ。
そこから別れ話の流れになり、別れる場合今までなみだちゃんに対してかかった費用を返せと、旦那さんに請求書を作成され、突きつけられたそう。

何をするにもお金がかかるのか、となみだちゃんは憂鬱になったそうだ。

うさみみは旦那さんがそもそも賄えない予算に設定してることも、おかしいと感じた。足りないことが複数回続くのであれば、それは予算がそもそも見合っていないと考えられる。
また、なみだちゃんは補填もしているのだから、そのことを旦那さんは案じたりはないのか怒りが湧いたので、そのことをなみだちゃんに伝えた。

なみだちゃんも働いているが、すべて旦那さんに管理されている。

なみだちゃんの旦那さんは、2人きりの時には大声でなみだちゃんを罵倒するそうだ。

なみだちゃんの旦那さんは外面はいいため、周囲から、なみだちゃんは幸せ者だね。
あんなに優しい旦那さんがいて、と言われてもいる。

自分よりも体が大きな男性に大声で話されたり、不機嫌でいられるだけでも、怖いのだ。
それぐらいのわがままくらいでと思う人や、甘えているだけと言われても、怖いと思ってしまうと、もう恐怖でいっぱいになる。

支配関係になるのだ。

実際になみだちゃんがリアルの友達に相談したところ、私ならそれくらい耐えれると言われそう。また無料法テラスで相談した際にも、相談員に同じような発言をされ、離婚を思いとどまるよう促されたそう。

なみだちゃんが言うには、自分にも非があるし、優しい時は優しくて、仕事もできて周りから信頼されてる人なので、旦那さんのことを悪く言えないらしい。

「結局あなたはどうしたいの?」

法テラスの人にそう言われたそう。

それになみだちゃんは、旦那さんを嫌いで結婚したわけでないのだ。
好きでこの人となら幸せになれると思って、結婚したのだ。
結婚するまでは、誰よりも優しかったのだ。

そういった経緯も含めて、インターネットではありのままで話せるのだ。

なみだちゃんにとっても、救いの場、安らぎの場所になっていると本人も言っている。
結局、自分がどうしたいのか分からないと、なみだちゃんはコメントした。

ただただ、旦那さんから逃げたいと。
なみだちゃんの実家は、勝手に旦那さんの実家にお金を借りて、代わりになみだちゃんが返済しているという。
そのためなみだちゃんの実家は、なみだちゃんが離婚することを嫌がっている。

なみだちゃんは運転免許証、健康保険証、キャッシュカードなど常に旦那さんに管理されている。
事前に申告して、必要な場合必要なお金とともに受け取り、用事が終わると領収書とおつりとともに返却するそうだ。

なみだちゃんの旦那さんは、なみだちゃんがテレビ等観ていて感動していると、写真を撮ってくるそうだ。
泣き顔が1番好きだからと言って、満面の笑みで撮るらしい。

しかし旦那さんが怒鳴りつけて、なみだちゃんが泣いてる時には写真は撮らない。
なみだちゃんが録音などして証拠を残そうとすると察知して、機器を見つけ取り上げるそうだ。
なみだちゃんのスマホもまた近々解約すると宣言されているそうだ。
うさみみは、なみだちゃんに行政機関の案内をした。

このアプリでは、入室して1分経つとリスナーから無料でハートのエフェクトをもらえる。

そのエフェクトに対するリアクションとして、なみだちゃんは

「私に魔法をかけて♡」

と発言する。

魔法をかけられるんじゃなくて、なみだちゃん自身が魔法をかけるひとになって欲しいとうさみみは強く思った。

なみだちゃんが意志を持って変わらないと、何も変わらないんだ。
自分自身で魔法をかけて抜け出すんだ。
その魔法の力がなみだちゃんには、備わっているのだから。
うさみみにはなみだちゃんは言えたのだから、然るべきところで言える。
感情や、物事の整理はうさみみを通じて、なみだちゃんはしてきたのだから。

ここまで勇気をもって頑張れたのだから、あと少しだけ。ほんの少しだけ。
頑張ってみようよ、なみだちゃん。

耐えるだけでは、物事は変わらない。
なみだちゃんには物事を変えることが出来る、魔法のコマンドがあるよ。
ただそのコマンドを発動させるには、今以上の勇気がいるの。
その勇気の生成が出来るのも、なみだちゃんだけ。

なみだちゃんは魔法少女なのだもの。
だから出来るよ。

*20話完結です!オムニバス形式ですが、順に読んでいくのがオススメです!*


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