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Lifestyle|森と暮らしと手仕事と〈05.フィンランドの夏と野生ハーブの授業〉

フィンランド東北地方の小さな村、タイバルコスキ。2015年に家族4人でこの村に移住してきたという、クーセラ麻衣実さん。大きな森とともに昔ながらのフィンランドの知恵で楽しく暮らす毎日は、現代の私達が忘れかけている大切なものを思い出させてくれるといいます。豊かな自然が広がるフィンランドの夏。専修学校で自然分野を学ぶクーセラさんは、実習や研修に大忙しのようです。今回は、その様子をのぞいてみましょう。

今年の6月はぐんと気温が上がり、タイバルコスキの村にも一気に夏がやって来ました。フィンランドの夏の風物詩と言えば、アイスクリーム!

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村には月に一度、アイスクリームの移動販売車がやって来ます。春先に時刻表が配られて、その時間を目安に道路縁で待っていると、楽しいメロディーを流しながら停まってくれます。

この日は、お向かいのマルヤレーナおばさんとお隣のヨルマおじさんが、熱心にアイスクリームを選んでいましたよ。雪が解けた後は皆、森や畑、湖で作業をして一日を過ごすため、意外と道端で出会う機会が少ないのです。アイスクリーム車を待ちながらの井戸端会議は、お互いの近況を交換できる大切な時間でもあります。


さて、自然分野を専攻する学生である私にとっても、夏から秋にかけては学校の実習や職場研修、実技試験など、課題が盛りだくさんです。現在研修でお世話になっているのが、Syötteen yrtti ja sieni(シュオテのハーブ&キノコ)という、シュオテ国立公園にほど近い、森のベリーやキノコを加工する小さな会社です。

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オウル職業大学で長年IT分野の教授として働いてきたリーッタさん。60歳を目前に、本当に心の赴く仕事をしたいと感じるようになり、数年前に故郷シュオテに戻り、子どもの頃から好きだったキノコを仕事として扱うようになりました。
この日は春の終わりに採れるkorvasieni(コルヴァシエニ、和名:ジャグマアミガサタケ)を森で摘んで下処理し、湯がいて冷凍にする作業を二人でしました。

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森から響く鳥のさえずりをBGMに、キラキラ光る湖を眺めながらの作業。たわいもない会話の中に、食品加工会社を運営する上での大切なことが節々に含まれていて、日々かけがえのない経験をさせてもらっています。


私の所属しているカイヌー専修学校は、タイバルコスキから200kmほど南の、カヤーニという町にあります。ほとんどの授業を遠隔で勉強できるのですが、自然が目を覚ます春先から眠りにつく初冬までの季節は、週単位の実習が続きます。今月は野生ハーブインストラクターの単位取得のため、一週間学生寮に泊まりながら授業を受けて来ました。

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学生は10人。フィンランド各地から集まった、年齢も職業もバラバラのメンバー。でも、軸の部分や目指す方向が似たり寄ったりで、いつも会うたびお互いに良い刺激を受けます。

フィンランドでは、家庭や社会からの二酸化炭素排出量についての意識が高く、食品や衣料などの買い物で、自分がどのくらいの二酸化炭素を排出したのか、請求書やアプリなどで簡単に知ることができます。学生仲間でも、自分が環境に及ぼす影響を最小限にするため、身の回りで採れるもの、自分で作れるものを活用して生活をコンパクトにしたい、そのために身近な自然について学んでいるという人が多くいます。実技試験でも、サスティナブルな視点を取り入れることは必須項目になっています。


学校での実習の翌週は、実技試験を兼ねて、タイバルコスキの隣町、プダスヤルヴィの中学生達に野生ハーブの講習会を開催しました。

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今回の題材はビタミンCの豊富なトウヒの新芽、kuusenkerkkä(クーセンケルッカ)と、前回のコラムで紹介したnokkonen(ノッコネン、和名:イラクサ)。いずれもフィンランドで長い間健康のため利用されて来たハーブですが、中学生世代には馴染みの浅い食材でもあります。身近な自然にこんな栄養豊富な植物があること、それを食卓に取り入れることが、どう環境に関わっていくのか、一緒に考えながら採集しましたよ。

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さて、今日6月26日は夏至祭です。野花の香りに包まれながら、白夜の夜のパステルカラーの空を眺め、延々と朝まで続く鳥たちのオーケストラに耳を傾ける…。フィンランドの夏の美しさを心ゆくまで満喫する、特別な一日です。

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Hyvää juhannusta! (ヒュヴァー ユハンヌスタ!/良い夏至の日を!)

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