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経営に自信が無い方は、金融機関の「水平的な眼」を取り入れてみては?

おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。

経営者の皆さん、ご自身の経営手腕に自信はあるでしょうか?

自信満々の方もいれば、自信が無い方もいらっしゃるかと思います。自信が無い方は普段の経営の舵取りをどのような基準で決めていらっしゃるでしょうか。

今回の記事は、経営に自信がない方に向けて、業界の相場感を知り、経営の指針とする方法をお伝えします。

ぜひご一読してみて下さい。

①経営者が持つ眼

経営者は、起業した場合も社内昇進で社長になった場合も、その業界で長く働いてきた経験がある場合が多いです。

経営者は、業界のことを垂直的に深く見る眼を持っている訳です。この垂直的な眼は、現場での経験に裏打ちされているため、深い知識があるのが特徴です。

そんな経営者の垂直的な眼があってもカバーしきれない部分もあります。

それは、業界内での経営指標の相場感覚です。

同業者の中が良い人もいらっしゃると思いますが、同業他社の決算書を見たことがある人がどれくらいいらっしゃるでしょうか。

例えば普通の主婦の方が、隣の家の所得を聞かないのと同じで、仲の良い人(企業)であったとしても、そのお財布事情までは中々把握できないものです。

つまり、業界の中にいるからこそ、その業界を水平的に見た相場観を知りづらいのです。

②金融機関が持つ眼

一方、金融機関の職員は、業界を広く見ることに慣れています。1つの金融機関でおよそ数千~数万社の事業先を抱えており、それぞれの担当者が数十~数百社の事業先を担当しています。

融資をしている立場であるがゆえに、基本的には融資先すべてに対して、決算書を徴求し、絶えず業況を把握しています。当然1つの業種でも様々な企業があるため、その業種の経営指標をよく見ています。

2022年4月に公表された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の中でも、金融機関の平時の役割として、中小企業に対する「予兆管理」を挙げており、事業先の業況把握は金融機関の業務の中に完全に組み込まれている訳です。

④ 予兆管理
中小企業者の平時から有事への移行は、自然災害や取引先の倒産等に よって突発的に生じるだけでなく、事業環境や社会環境の変化に伴い段 階的に生じることが十分に想定される。金融機関は、有事への段階的移行の兆候を把握することに努めるとともに、必要に応じて、中小企業者 に対し、有事への段階的な移行過程にあることの認識を深めるよう働きかけ、事業改善計画の策定やその実行に関する主体的な取組みを促す。

中小企業の事業再生等のガイドライン

つまり、金融機関はその業界のプロでないにも関わらず、職務上、自然と業界の相場観(水平的な眼)が身に付いているのです。

③金融機関に業界の相場観を聞き、経営方針に活かす

という訳で、金融機関が持つ水平的な眼を活かさない手はありません。

先述の「中小企業の事業再生等のガイドライン」にもある通り、金融機関は中小事業者に対して、業況の認識を深めてもらうよう働きかける努力的義務があります。

ご自身の経営手腕に自信の無い方は、取引のある金融機関に業界の相場観を聞いてみると、親切に教えてもらえると思います。

私自身、取引事業者の方からそういったことを聞かれることが多々あります。その際にはWebBAST(TKCが提供する業界平均等の指標が分かるサービス)を使って全国的な相場観をお伝えしつつ、地元地域での業界平均値やレンジをお伝えしています。

もちろん、具体的な企業が特定できる形ではお伝えできませんが、特定できない形や総計的な形でならお伝えできます。

特に、アフターコロナのタイミングでは、飲食店様よりよく聞かれました。

金融機関はその会社の実情まで把握しているので、単に業界の経営指標を聞くだけでなく、具体的な中身まで聞くのが有益です。個社が特定できない範囲であれば、大抵の場合は教えてくれると思います。

単なる経営指標の平均値は調べればある程度分かりますが、貴社の周辺の地域の情報や具体的な業況まではネット等の情報では中々分かりません。

例えばアフターコロナの飲食店であれば、夜の売上が他店はどの程度の割合まで戻っているか、客単価はどれくらいか、など聞くと良いでしょう。

これらの情報は経営指針となり得る情報です。先の例で言えば、アフターコロナのタイミングで自店の夜の売上が戻ってないのに、実は他店は戻っていたのであれば、夜の売上が少ないのは一概にコロナのせいとは言えないため、他の施策を取る必要があります。

相場上を歩いていけば必ずしも経営が成功する訳ではありませんが、経営方針を決める上では大いに役立つことと思います。

お借入がある経営者様については、担当の金融機関に業界の相場観を聞いてみてはどうでしょうか。

次回予告

次回は、金融機関から見た会社の信用度の5段階格付についてお伝えします。11月4日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧下さい。

当noteでは、毎週土曜日に、経営者や経営支援者に向けた経営力強化につながる投稿を行っています。仕事のご依頼、お問い合わせは画面下の「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします。

投稿者(山西良明)プロフィール
【経歴】
・現役信金マン
 2014年より信用金庫で勤務中。営業、業務推進、融資審査、事業支援を経験。
・中小企業診断士事務所代表
 信用金庫で働きながら、2021年に中小企業診断士として個人事務所を開業。認定経営革新等支援機関としても登録済み。

【現在の業務内容】
・事業計画書協同策定・実行支援
 創業/経営改善/事業再生等に向けた経営力強化支援を行っています。事業者様とともに事業内容を見直し、共同で事業計画書を策定、フォローしています。
・パートナー支援
 中小企業様とのパートナー契約の提携により、経営の基礎筋力となる経営力を底上げするため、毎月訪問および遠隔で支援をしています。
・資金繰り支援
 資金繰り分析および提案、金融機関への同行対応することでトータルで資金繰りを改善するための支援をしています。
・補助金採択支援
 補助金の採択に向けた支援を行っています。
・診断士のための診断士サービス
 資格取得後1~3年目の中小企業診断士を育てるための支援です。対面、メール、電話等で随時案件の相談対応をしています。
・金融機関向けシステム開発協力
金融機関向けの様々なシステム開発に関して、情報提供や助言による協力を行っています。

【主な保有資格】
・中小企業診断士
 コンサルタントとしての唯一の国家資格。2017年取得
・販売士(リテールマーケティング)1級
 BtoCのマーケティング資格。2018年取得
・応用情報技術者
 IT系国家資格。2021年取得
・認定事業再生士
 事業再生の国際資格。2022年取得

【趣味】
・マラソン
 2時間30分切りを目指し、週6~7日走っています。
・読書
 海外SF、文芸誌、ビジネス書をよく読みます。愛読書は『三体』『V字回復の経営』

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