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緑化

 自然と春は軽くなる。
 昨日、コートは仕舞ってしまったから、それだけでも通勤の荷物が減った。車の助手席がスッキリしているのが嬉しい。
 いつもの住宅街を大通りに出るところに、見たことのない男性が立っている。朝7時過ぎ。横断歩道のところで、「横断中」の旗を持って、落ち着かないような素振りで誰かを待っている。だれかのお父さんだろう。
 私の車が側に近づく音で、すこし顔をこちらに向けて安全を確認する。私ができることは、普段よりスピードを落とし通り過ぎることだけだ。
 そのお父さんは、私より年上に見えた。実際はどうだかわからない。でも、しっかりとした眼差しからは責任感を感じ、私は尊敬の気持ちで道路を右折した。
 いつまでも歳を取れない劣等感は、マラソン大会でおいて行かれるときの気持ちに似ている。恥ずかしいから安全運転だけは気をつけようと思う。

 ラジオから、宇多田ヒカルのオートマチックが流れている。25周年らしい。
 すれ違う街路樹の緑色が鮮やかさを増しているのは、週末に雑草取りをしていたからだろう。長く伸びた抜きやすいものを抜いて捨てる。そしたら、勝手に背の低い小さな雑草たちが残ったようだ。当たり前のことが、シンプルな仕組みで綺麗を造っている。
 足元の雑草が均一に並び、黄色の花を探す。
 名前が分かれば、それは名前で呼ばれる。

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