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読書・鑑賞記録7(5冊とお菓子)

あまり長くならないように、定期的にまとめようと思います。




「銃」 中村文則

雨の中、大学生の主人公は「銃」を手に入れる。
そのせいで狂ってしまったのか、もしかして最初から狂っていたのか。
新潮新人賞を受賞したデビュー作。

「銃」の圧倒的な美しさと存在感から、主人公はそれを拾ってしまう。
そのときから、心の中に住み着いてしまった「銃」。いつも頭の片隅でそのことを考えてしまうのだが、それが次第に「銃」が中心に侵食してくるような異様な感覚になる。
主人公視点で進む大学生の物語だが、最初から最後まで一時も「銃を持っている」という緊張感が途切れないままで、一息に読ませる臨場感のある作品でした。つねにジリジリと切迫したような緊張が物語全体を包んでいます。
「私はいつか拳銃を撃つ」と考える主人公。
「次は…人間を撃ちたいと思っているんでしょ?」と、刑事が訪ねてくる。

あなたは、魅力的なボーダーを越えたときにどう考え、どう行動しますか?


「本の背骨が最後に残る」 斜線堂有紀

短篇ミステリーが7編。
とりあえずタイトルに興味をもったのなら、絶対に読んで後悔はないです。

表題作は、物語を語る者が「本」と呼ばれる国。
一冊につき、一つの物語。ところが稀に同じ本に違いが生まれる。
そこで開かれるのが人々の娯楽、「版重ね」だった。どちらかの「誤植」を見付けるため本と本が、正当性ぶつけ合う。誤植と断じられたら・・・。
その国では、本を焼くのが最上の娯楽である。

7編とも短篇なのに、漂う世界観は濃厚なものばかりでした。読み始めるとすぐに新しい世界へと没入できる一冊でした。
ストーリーを楽しみ終わるかという辺りで、グルっと景色が転換するように物語の本筋に斬り込んで行く著者の技に毎回してやられる。そんな読書体験ができます。
気がつけば「本の背骨」をしっかり抱きしめて読書している。そんな、自分自身がとても不思議な感覚になるミステリー。
装丁も素敵です。淡いブルーがいいですね。


「AX アックス」 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ3作目。
凄腕の殺し屋は、ものすごい恐妻家。一仕事終えて深夜に帰宅するときは、物音で奥さんを起こしてしまわないよう細心の注意を払います。こっそり食べる夜食は魚肉ソーセージ。家庭では、庭にできた蜂の巣を駆除したり、息子の学校行事に間に合うように仕事(殺し屋の)を早く切り上げたり、そんな奥さん第一の主人公。殺しの腕は超一流ですが、家族の為に殺し屋引退を考え始める。

短篇でとても読みやすく、しかも最後は書下ろし。伊坂幸太郎さんらしい着地点で、上手くそれまでの話を一つにつなげるような一体感のある一冊になっています。殺し屋の小説なのに殺伐とした物語が続くわけではないのが、前作までの「グラスホッパー」「マリアビートル」とは、雰囲気が違います。ですが、その振り幅が盛り上がりを加速させているように思えて、緊迫した場面をより効果的にしています。

だいぶ久しぶりに読んだ伊坂幸太郎作品でしたが、相変わらず面白かったです。よく考えると結構、無茶なというか現実離れした設定が多いのですが、なぜか想像しやすいというか、「画」が浮かぶのが伊坂さんの作品の読みやすいところだと思います。すんなり世界に入れます。
最新作の「777」も殺し屋シリーズなので、気に入った方はこのシリーズを逆走してみるのも良いと思います。
「マリアビートル」をハリウッド映画化した「ブラッドトレイン」も面白かったですね。勢い止まらない伊坂ワールドを是非、楽しんでみてください。



「パンプルムース」江國香織 いわさきちひろ

江國香織の詩に、淡い絵を岩崎ちひろさんが添えています。
詩は、すべて平仮名なので子供から大人まで一緒に読める。
なんとなく自分の子供心をくすぐるような作品でした。
ゆっくりページを開きながら過ごしたい人にピッタリ。

一気にザァーっと読むのが惜しかったので、何日かに分けてゆっくり楽しみました。


「扉のかたちをした闇」江國香織 森雪之丞

江國香織さんの詩の本をもう一冊。
江國香織さんの詩を受けて、詩人・森雪之丞さんが答えるように綴る。
ピアニスト同士の連弾のように、男と女、小説家と詩人、色々な世界を本を片手に飛び回れる。
1月から12月まで、二人の速度で季節が廻ります。
こちらは寝る前の一冊か。

「男のひとは 愛に疲れやすいので 
愛に倦まない女たちは 自作自演で愛に溢れる」(江國香織)

「女のひとは 愛をむさぼり生きるので
 愛を産めない男たちは 夢を耕して愛を補う」(森雪之丞)


おまけ オススメお菓子(読書のお供)

美味しくて便利なお菓子。
こういうのって最初に切り口を開けるときに、斜めになったり、中の汁がプシュっと出たりするんですが、これは違います。
切り口を切らなくてもいいんです。
パッケージを切らないで押すだけで、にゅっとわらび餅が出てきます。
本当にメーカーの人は、うまいこと考えますね。

おやつだけでなく、会社の机の非常食やお弁当のデザートにも便利。



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