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Letter from Home

WFHならぬLFH!

ということで、お手紙帰省を遂げた(?笑)私から「手紙のすヽめ」を。

文字を綴るというのは、もう今の時代それだけで少し特別なことのように感じる。久しぶりに文字を書いたら、漢字が浮かんでこない!なんて人もいるのではないかしら。普段から私たちは3行10列の無機質なボタンとIMEで淡々と言葉を変換している訳で、さらに言えば書いてみてちょっと違うと思えばすぐに、私の右手薬指はBackSpaceしてなかったことにしてくれる。

宛てる先の人の手に、今書いている言葉たちが届く頃、その少し先の未来を想像して綴る必要もない。誕生日だってその日に分かれば、その日のうちに「おめでとう」と伝えることができる。もちろん、だからこそいいこともある。それを刹那的だと嘆くのもナンセンスだと思っているけれど。

でもそんな、いつでも「今行く」って身軽にタッチ&ゴーするSuiCa的乗り込みじゃあなく、前もって ー迷いながらなのか、わくわくとかドキドキとか弾む気持ちでなのかを問わずー 買い、壁のコルクボードに留めておくような切符みたいに、少し先の未来にピン留めするように、メールでもなくLINEでもなく手紙を選ぶ。

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(↑「あつまれ!どうぶつの森」でもさりげなくリモート帰省を推奨)

さて、GWの帰省用の切符をキャンセルする代わりに、親に久しぶりに綴る手紙。なんとも気恥ずかしい。普段から連絡は取っているし、特段書くこともないだろう、と上の余白を充分に取っていざ書き始めると、すらすらと(グダグダと?)特筆すべきことでもないことであっという間に埋まってしまい、むしろ後半は行間がどんどん縮み、しまいには自分の名前を書く隙間すら見当たらず、冒頭の「お母さんへ」の右横に「つばさより」なんて差し込む始末だ。1行目から突然の結びで母も兼ねてからの私の計画力のなさを憂いて肩を落とすに違いない。

ただ本当に、あっという間に書ける。というか、ペンがそうさせるのだ。ノートを取る時はボールペンを使う私だが、手紙のときや手記には万年筆を使う。万年筆は私の長考を許さないので、ちょっとでも迷ったりペン先を止めると、そこは容赦無くインクの水溜りになってしまう。でも、だからこそその手紙に綴られるのは消せない本音と、まっすぐに出てくる正直な言葉たちでしかない。白い便箋を前に、相手を思い浮かべながら、息を吐くように。間違いや迷いはバレてしまうので、そこも含めて相手は私のリズムを追体験するに違いない。

■そんなあっという間だけど遠くで呼び起こされる、
 手紙時間のレシピ

① お気に入りのレターセット  / 封筒1、便箋1〜3枚程度
② とっておきのペン(こだわりのインクがあればそれも)
③ 切手
④ 心が開くようなお気に入りの音楽
⑤ 暖炉を思わせる温かい照明
 

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①私のお気に入りのレターセット

月光荘画材店のオリジナル便箋 と 季節のグリーティングカード

今回紹介するのは月光荘画材店オリジナル便箋と封筒。オンラインショップでも購入できる。6種類の色と4種類の柄があり、組み合わせは自由自在。
封筒は組み立て式で、切り取られる余白にも粋な遊び心が感じられる。

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「いつの世も贈り物は おめでとうにはスプーン。さりげない品をさりげなく。おともだちには便箋。」

口紅さして封をする。という書き口にはレトロで甘美なエロティシズムさえ感じる。月光荘のマークは名前がわからないのだけど、郵便屋さんが使ってたラッパ?で、この封筒はピアノがモチーフになっているので、音楽好きにもたまらない。

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この味のある余白は、「切取」の文字通り、切り取って封筒をしたためるため、このユーモアは読み手には届かない。あなたが手紙のなかで、くすりと読み手の口角が綻びるようなユーモアを、ぜひ盛り込んでみて。

このレターセット、ピアノの先生だった私の母にはうってつけなのだけど、実際に私が今回使ったのは、イースターのグリーティングカード(もう1ヶ月遅れなのだけれど)。大学一年生のときに1ヶ月ドイツの大学に通っていた時に買ったのだと思われる、ドイツ語のもの。昔から溜め込んでいるレター用品ボックスで見つけて、春の喜びも兼ねて使ってみることにした。

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日本ではなぜかクリスマスを祝うのに、大事な復活祭は基本スルーされる理由は昔から謎だった。小さい頃から卵探しは大好きなイベントだったから。イタリア留学中にローマの友人宅に泊まっている間にその家族と過ごしたイースター(イタリア語ではPasqua-パスクア-)は、シチリア出身のマンマと手作りしたパスクアの伝統料理とウサギのチョコにはじまり、卵探しとは違う食卓を囲む家族での時間と、一週間も休めるというゆったりと春の訪れを味わ充電期間でもあった。あの春を思い出しながら、家族の温もりに思いを馳せながら。

② 私のとっておきのペン(こだわりのインクがあればそれも)

赤い万年筆 と 季節を感じられるインク

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私の万年筆は社会人1年目で、函館 蔦屋書店立ち上げ直後、働きまくっていた(月400時間…!w)自分へのご褒美に、信頼する文具コンシェルジュから買ったもの。Watermanのメトロポリタンシリーズの赤。購入当時から、この左の手帳や上の鏡のデザインのような淡いオレンジのインクを使っていたが、今回は「月夜」というPilotの色彩雫シリーズのインクを使うことに。

この色彩雫シリーズは、24の色があり、朝顔、紫陽花、冬将軍、紅葉、夕焼け……など季節や時間の彩りを抽出したような楽しみがある。手紙を書くにはもってこいだと思う。

私の親はいつも、母の日だろうが誕生日だろうが、「何も買わないで。母は靴下とかでいいの。それより手紙が欲しい」という人だ。彼女から荷物が届く時は必ず手紙が入っていて、それは毎度決まって、静かな群青のインクで書かれている。

その人への手紙と思うと、似たような濃く深い青を選んだのだが、以前使っていたオレンジ茶色のインクが若干残っていたようで、混ざって緑っぽい色になってしまった笑(トップの画像の文字参照「#手紙を書く」)

③ 切手

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これをこだわる人はなかなかいないかもしれないが、珍しい切手が貼られていると、それだけで誰かに伝えたくなるような浮き足立った気持ちになる。

この写真は私が集めたハンガリーの使用済み切手。使えないけど笑、こうしてみると、切手もワクワクするでしょう? たまに郵便局に行くと、その時期だけの切手も売っているので、買ってみるのも良いかもしれない。

④ 私の手紙を書く時のお気に入りの音楽

Fall / Ketil Bjørnstad・Svante Henryson

ノルウェー・オスロ出身のピアニストKetilとスウェーデンのチェロ奏者Svanteによるアルバム「Night Song」より。このアルバムは「沈黙の次に最も美しい音」をコンセプトにしたドイツのECMから発表されていて、まさに、沈黙でいいのだけど、何か少しでいいから音を…という夜にぴったり。

Spotify : https://open.spotify.com/track/0iG42GVT4W3kg3tLAf7foW

Breathe This Air (Asleep ver.) / Jon Hopkins

これまた、名前の通り眠りに誘われる、解き放たれる音楽。沈みながらも浮いていくような、日常から少し距離を置ける気がする。私は言葉を編んだり紡いだりするとき、歌詞や歌声がない方が良いタイプなので、こういったアンビエント系を集めたプレイリストを作っていて、手紙以外にも、自分時間に役立っているものの一つ。

⑤ 暖炉を思わせる温かい照明 

これも自分の気持ちのセットアップに大事だったりする。どうしても白色灯・蛍光灯は私をオンにするので、どうも快活で明快で正しくなくてはいけないような気持ちになる。LEDではなく、熱くなってしまう電球をまだ、スタンドライトにだけ使っているのは、灯と共に暖かくなる、暖炉への憧憬の名残に違いない。ああこれで、薪がパチパチと燃える音もあればなあ。

おまけ:手紙が出てくる映画を観た

「チャーリング・クロス街84番地」(1986) 

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↑ 英国文学から抜け出たようなフランクの古書店。行ってみたい…

アン・バンクロフト演じるNYで暮らす女流作家へレーヌは、なかなか手に入らない本のリストを新聞広告で見つけたレアな本の扱いがあるロンドンの古書店に注文の手紙を出し、そこからアンソニー・ホプキンス演じる古書店主フランクとの文通がはじまる。注文と発送・請求のやりとりを超えた、20年を超える互いへの尊敬と親しみの応酬は、ユーモアと知性の溢れた独特の愛情のやりとりに見える。手紙だけでなく、タイプライターの味や古書(とりわけ中古という意味で)の良さ、時代背景、男女の恋愛や会うことだけではない関係性への深み…様々な噛み締めができた作品でした。

面白いのは、段々と互いの心の?距離が縮まっていったら、もう手紙を介さず互いにカメラ目線で相手に語り出すようになる点。カメラに向かって話す手法は観る人にどきりとさせ、突然自分も映画に参加したような臨場感に誘われる。NETFLIXオリジナルの海外ドラマ、ハウスオブカードでも同様の手法が取られていて、ドキッとするんだよな。目が離せなくなります。

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(↑ カメラに向かってとってもかわいい笑顔を見せるアン・バンクロフト)

・共感したセリフ
I love inscription on flyleaves and notes in margins. I like comradely sense of turning pages someone else turned and reading passages someone long gone has called my attention to.
(署名(献辞)や書き込みのある本が好き。誰かがめくったページをめくり、はるか昔の誰かに注意を促されてて読む楽しさ…)

→NETFLIXはこちら

そのほかのおすすめ映画
・「il Postino」(1994 / イタリア)
・「手紙は覚えている」(2015 / カナダ・ドイツ)
  →Amazon Prime Video
・「ジュリエッタ」(2016)
  →Amazon Prime Video

長くなりましたが、手紙のすヽめはこのあたりでおしまいにします。


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