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分離不安・社交不安を抱えた娘が、ママと離れて幼稚園で過ごせるようになるまで

娘の自閉症スペクトラムの特性の中で、強いのが分離不安と社交不安。生まれてからずっと、昼も夜もコアラのように私にひっついてきた娘。幼稚園に入園したものの、離れることができず私が終始付き添う形で一学期が終了。二学期、コロナの影響で、ロックダウンに突入。娘は通えるが私は通えないと決まり・・・。今回は、そんな娘が一人で幼稚園に行けるようになった経緯をまとめます。

◆自閉症スペクトラム障害の分離不安と社交不安

ASD(自閉症スペクトラム障害)は何かしらのコミュニケーション障害を伴います。娘の場合、分離不安と社交不安が強いです。お誕生日会、親族の集まり、お友達と一緒に遊ぶ機会や、見知らぬ他人に見られたり話しかけられたりすることが苦痛です。私の母と姉に対してはとても人懐っこく、帰国時、時々預けて仕事に出たり人に会ったりという貴重な時間を持つことができましたが、オーストラリアでママかパパから離れることは実質できませんでした。また、どうしても誰かと過ごさなければならない時間は、私と遊ぶか、私に抱っこされたままで、安心感を求めたがりました。

◆母子通園からスタート

それでも、主治医、心理士さんからは入園を勧められました。一生私から離れないわけにはいかないし、自立する機会は遅くなればなるほど難しい、と説明されました。同い年の子供との集団生活で学べることが沢山ある、とも励まされました。幼稚園は幾つか見学し、娘が一番気に入ってそうなところに決定。事前に面談をして、他の子に迷惑がかからないかなど、懸念している点を相談し、園の意向も伺いつつ母子通園から始めることを決定。いざ、入園すると、腕も足も私にぎゅっと絡めて離れません。他の子がママから離れがたい様子を察知して娘も泣き出します。子供が沢山いる場所だとわかり、帰りたがります。とにかく最初は幼稚園が楽しいところだと思えることを目標にしようと先生とも話し合い、私も積極的に娘と遊び幼稚園を探検しながら一日を過ごす母子通園からスタートしました。

私から少し離れられるくらい、幼稚園に慣れた時点で、10分から分離をスタートすることに。ところが!5分で先生から呼び戻されます。抑えられないくらいのパニックになってしまったのです。それから暫くは、娘の警戒心がマックスに。登園拒否、園でも抱っこ以外では居られない、と前よりも難しい状況になりました。ASDの子供によっては、15分、30分、1時間という風に離れる時間を長くして慣らしていくことが効果的であるようです。ただ、これは娘にはできませんでした。

それでも諦めず、母子通園を続けます。だんだんと、先生に慣れて、手をつないだり本を読んでもらったりできるように。母子通園といっても、私が終始一緒に遊ぶ段階から、見守る時間を持てる段階に移行しつつありました。とはいえ、私が少しでも見えなくなろうものならパニックになり探し回ります。もう少し分離には時間がかかるかなと思いつつ、一学期が終了します。

◆ソーシャルスキルプログラムに参加

二学期からは、幼稚園と共に、娘の心理士さんが主催するソーシャルスキルプログラムに参加することを決めました。積極的な行動療法の開始です。子供6~7人に対し、スタッフは3人と手厚いグループ療育。親参加型ではなく、親子分離型のグループ療育であり、社交不安のみならず、分離不安の療育も含まれます。苦手なことを克服するため、敢えてその苦手なことに触れさせる療法を曝露療法と呼びますが、そのタイミングや段階的な曝露はとても繊細な領域だと、母子通園を続ける中で感じていました。そこで、まずは自閉症療育のプロの人たちの中で母子分離の訓練をして、そこで出来るようになってから幼稚園で一人通園を目指そう、と考えました。娘が懐き始めた心理士さんが、そのグループ療育に入ってくれてる、というのも、心強い点でした。

初めて預けた日は泣きました。パニックが酷くなったら連絡しますと言われ、駐車場で2時間半待機していました。それでも電話は鳴りませんでした。娘の心理士さんがずっと抱っこしてくれていたそうです。2回目はもっと警戒心が強くなり泣きましたが、私が居なくなることがわかったのか、途中から心理士さんにひっついて泣き、その時点で明るく去りました。回を重ねるごとに、心理士さんは、絵カードでスケジュールを確認させ、娘の落ち着き具合をみて離れたり、グループ作業に参加させたり、と療育をマネジメントしてくださり、なんと今では泣かずに通っています。最初は食べなかったお弁当も今では空になっています。プロの方々のサポート、本当にありがたいです。

◆ロックダウンにより一人での通園が前倒しに

本当は、ソーシャルグループ療育に通いつつ、二学期も付き添いの通園を続けるつもりでしたが、オーストラリアはコロナ対策で厳しいロックダウンに突入。幼稚園はあいていたので、娘は通えるが、親は付き添いできない、ということになりました。そこで急遽、二学期の最初のひと月は療育のみ通い分離に慣れてもらい、心理士さんからも一人通園は可能だと言われた段階で、翌月から一人で幼稚園に行かせてみることにしました。復帰前には、心理士さんと園の先生の間で連絡もとってくださいました。

心理士さんからの助言のもと、幼稚園に通う準備としてのおうち療育では、幼稚園に行くテーマがある本と、ソーシャルストーリーを読みました。ソーシャルストーリーは、既存のサンプルストーリーを参考に、娘や幼稚園、先生の写真も使ってPowerPointで簡単なものを自作しました。このソーシャルストーリーを通じて、「もうこれからは、マミーは門でバイバイしなければならないけれど、ちゃんと迎えに来るからね」と伝えました。下の写真は幼稚園に着いてお別れのページです。とても単純。

スクリーンショット (5)

何かと勘の鋭い娘は、ソーシャルストーリーを読んだ時点で悟ったのか、キンダー行かないの!と言い出しました。二度目の読み聞かせでは、マミーバイバイの時点で本を閉じようとしたりしました。なので、あまり強引に読ませることも憚られ、あとは幼稚園に行く日の前夜と朝のみ、軽く読み流しました。これによって、大まかな一日の流れの予測はついたようです。

◆幼稚園に笑顔で通えるようになった

初めての一人の通園。最初はしがみついて来たけれど、諦めて先生の手を握り、亀の餌やりにつられて教室へ。3時間、連絡なしで終了。次の日も、その次も、行かないと後ずさりしても背中をおされると、頑張って教室へ。お迎えに行くと帰りは泣いてしがみついてきましたが、園では殆ど泣かないで頑張ってます、と先生からの言葉。結果、なんと今では、笑顔で幼稚園に通えるようになりました。幼稚園の先生曰く、はしゃぐ姿も見られるとのことです。お迎えの時には走ってきて「マミーいた!!がんばったよぉ!チョコレート!」と飛びついてきます。幼稚園の後には、スイーツをあげています。課題と報酬を設定し、達成できたら約束通りの報酬を与えるというのは、行動療法のうち強化療法の一つに相当し、心理士さんに勧められているおうち療育のひとつになります、、、と書くと、大げさに聞こえるかもしれません。でも、本当にこんなちょっとしたご褒美でも、療育として子供の発達の助けになると聞けるのは、療育ママとして励みになります。

専門家の方々が、娘の特性を見極めた上で、必要な行動療法を示してくださったこと。ソーシャルスキルプログラムを経て、娘が一人通園という新しい試練に頑張って立ち向かったこと。幼稚園の先生の温かな協力。その全てのおかげで、ひとつ、娘が大きな階段をのぼることができました。

(今度また、ママでも簡単にできるソーシャルストーリーの作り方や、幼稚園と療育との連携などについても、改めて書いてみたいと思います!)

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