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女郎花


あの
夏の入口の頃の
記憶は

騒がしい
雨音と
雨上がりの
嗚咽

迎え損ねた夏は
未だ
訪れず


焦がれ
焦がれて
肌に感じながらも
雨の匂いに遮られて


叶わずと知りつつ

沈む
午後に見た夢は

野原を
粟立つ黄色い花弁で
燃やす夏よ


されど
現は
木の根に埋まる
蝉の
蛹の如し

そして
今は冬

振り返るには
まだ早いが
後悔するには
もう遅過ぎた



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