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檸檬読書記録 『空をこえて七星のかなた』 『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』

今日の本は
加納朋子『空をこえて七星のかなた』

この本は七つの短編ミステリーで、全てに星が関わっている。

1つ目は、突然父親に「南の島に行くぞ」と言われ、石垣島に行くことになった七星。母親のいない2人だけの旅行は、どこか気が乗らず…果たしてこの旅の行方は…。

2つ目は、同級生の過失によって、右目を負傷してしまった美星。
夏に出会った王子様みたいな友達と宇宙飛行士になると約束したのに、道は絶たれてしまう。果たしてその道の行方は…。

3つ目は、廃部寸前の部活3つが集められた。廃部は決定事項で、覆せない。だから3つを1つにした「スペミス部」にしようと提案され…。果たしてその部活と3つの部活に秘められた悩みの行方は…。

4つ目は、木星荘に従兄弟が引っ越すことになった。彼が住むことになった部屋には、以前モデルもしていた女子大生が住んでいた。けれど急遽引っ越すことになって…。果たしてその理由と結末は…。

5つ目は、衝撃で意識を失ってしまった少年は、目を覚ましたら体が動かせない上に自分の名前も思い出せなくなっていた。ただ思い出せるのは、意識を失う前に一緒にいたルナという少女の名前だけで。
果たして彼の記憶は…。

6つ目は、少女は中学校の入学式で、父親が有名人の娘と出会い、少し境遇が似ていることからと、次第に距離を縮めていく。
けれどその少女はどこか様子がおかしくて…。果たしてその秘めた思いとは…。

7つ目は…。

といった感じで、ミステリーというには少し物足りなさはあるが、他の部分が興味深く充分に楽しめる作品だった。

物語は1つ1つ別のお話のようなのだけれど、読み進めていくうちに、あれ?となってきて…。最後に驚きが待っていた。
まるで1つ1つの星達が繋がって、星座になっていくようで…。


これ以上はネタバレになりそうだから、この本はここまでにして、宇宙や星繋がりで

坂月さかな『坂月さかな作品集 プラネタリウム・ゴースト・トラベル』

も読んでみた。
これは坂月さかなさんの星や宇宙空間と同化した建物達の絵や、絵本のようなお話や、漫画などが詰め込まれた綺麗で贅沢な作品集だ。(しかも半分以上がカラー)
青、青、青と、殆どがブルーで埋め尽くされていて、綺麗で眺めているのも楽しい本なのだ。


この中には『空をこえて七星のかなた』の表紙にもなった絵も収録されていて、続けて読むにはうってつけの本だった。
何より中身もまた素晴らしい。
絵もさることながら、物語もいい。
優しい語り口調なのだが、少し突き放すような距離をあえてつくっているような文体で、そのチグハグさがまたいいのだ。

「月が眩しくて眠れません
飲み残したシタモンティーの
湯気を見ています」

「眠れないので
サッポロ一番を食べます
においに誘われて
ゴーストがやってきました
無視して食べます」


これが文の最初なのだけれど、最初からいい。「眠れないから湯気を見てます」も個人的に好きだけど、特に「ゴーストがやってきました/無視して食べます」が好き。
普通なら、え!となる場面だろうに、あえてどうでもいいように無視する冷淡さが、個人的に刺さった。惹き込まれた。
その上、この後眠れなかった少年は姉に会いに出かけることにするのだが、無視したゴーストをお供に連れていくのだ。そして最後までなかなか仲良く過ごしていく。
なんとも不思議で、そこが面白い。

漫画の中に出てくるアイテムも不思議なものが多くて楽しい。

速度に応じて味も色も変わる飲み物。
だったり。

中を除くと宇宙が広がっている(それも流れ星や宇宙船も来る)宇宙服の人形。
だったり。

実際にあったら良いのにと思わずにはいられないものばかり。

この本は絵も漫画も物語も、隅々まで本当に素敵なのだ。素敵が詰まっている。
宇宙好きには勿論、興味がなくても、見ているだけで楽しめる1冊だと思う。


それにしても、2冊を読んでどっぷり宇宙に浸ってしまった。無性に1面の星空が見たい気分になった。今夜は見れるだろうか。
頭の中を青と星でいっぱいに埋め尽くされつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。



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