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『デザイン思考が世界を変える』を読みまして

こんにちは、レタスです。
今回はタイトル通り、『デザイン思考が世界を変える』(ティム・ブラウン著、早川書房)を読んでの感想です。

最近、弊社デザインチームの会話で「デザイン経営」や「数字の読めるデザイナー」などの言葉が出てきます。制作物を作るだけでなく、組織から求められるデザイナーを目指すぞ...!という意気込みが。そこで、まずはデザイン経営の中核にある「デザイン思考」「イノベーション」を理解していかなきゃねというわけでこちらの書籍を購入してみました。

デザイン部のミッション決めをした話はこちら。

(ちなみに弊社ではメンバーのスキルアップ支援として毎月書籍購入の予算が当てられており、自身の業務に関する本をピックアップし、申請、購入ができます。技術本なども随時その制度を利用してリクエストしています。)

ビビッドなイエローでインパクトのあるこの本、著者はデザインファームIDEOのCEO兼社長、ティム・ブラン氏。「デザイン思考とは何か?」「ニーズを需要に」「中心にあるのは人間」「デザイン思考と企業(あるいは社会)」といったテーマを中心に書かれています。
デザイン思考はそもそも定義されて生まれたものではなくて、IDEOが自社のイノベーションのプロセスを見つめ直し、所属している卓越したデザイナーたちが日々繰り返していた活動をクリアにしたもの。デザイン思考とはその活動の総称です。TV番組の企画で全く新しいショッピングカートをリデザインした際、数十名のエグゼクティブからそれを生み出したプロセスについて質問を受けたことで、彼ら自身の活動を見つめ直すきっかけになったのだとか。(参考:『デザイン思考でゼロから1を作り出す』p37-p38)
そんな経緯があったとは知りませんでした。面白いですね〜

この記事で書くこと

さて、いざ本を読んでnoteの編集ページを開いたものの、「デザイン思考」についての書籍やテキストなら世の中にたくさんあるし、経験値も十分とはいえない私が改めて書くこともないわけで。どうしようか迷ったのですけど、最近「自分ごと」が結構大事なキーワードだと思う機会が増えたので(チームのバリュー決めなど含め)、書籍を読みながらここは大事だとか、自身の実務で考えるとこのあたりが必要だとか、自分レベルで解釈できたことについてつらつらと綴ってみようかと思います。

ざっくりとデザイン思考について

一応ざっくりとそのポイントについてまとめておきます。
先ほど、デザイン思考とは優れたデザイナーたちのイノベーションのプロセスであり、彼らが日々繰り返していた活動と言いました。その基本的なプロセスは以下の4つ。

1. 現状を「観察」し、「共感」する
2. 適切な「問題」を見つける
3. 「解決策」を考える。大量に案を発散する。
4. アウトプットを繰り返す

特に今回書きたいのは1番と2番です。解決策を考えるための「How Might Be...」メソッドなど、実務で試してみたいことはたくさんありますが、実際に取り組んだり、実施できているのはまだまだほんの少し。アウトプットに関しては、プロトタイプでプロダクトの機能や画面を共有する開発プロセスが根付いてきています。InVisionやAdobeXDでエンジニアや営業サイドとシェアできると、修正が入っても比較的容易に対応できますし、何よりフィードバックをもらえるのが早い。一度取り入れるともうそれ以前には戻れません。良い文化です〜。

観察して、共感する

本書の中では、日本の自転車部品メーカーであるシマノの新規シェアを狙った商品開発や、病院での体験のリデザインなどが具体例としてあげられています。本格的なマウンテンバイクのファンだけでなく、顧客以外の層がなぜそもそも自転車に乗らないのか実地調査を行ったり、怪我をした患者を装って受付から緊急治療室に運び込まれる一連の流れを経験してみたり。
その「観察」で大事なのは大多数の人がしないことに目を向け、言わないことに気づくこと。現場からインサイトを得、そして当事者の立場で「共感」ができること。
私は時々TakramさんのPodcastも聞いたりするんですが、はじめに観察、リサーチありきで始まるという姿勢って本当にどこでも大切だと述べられています。その重要性を頭では知っているつもりではあります...あるのですが。
いきなり反省の話題から入っちゃうのがなんとも言えないのですけど、自身の業務を振り返ると、自社のプロダクトでさえユーザーが使っている実際の様子や彼らの業務を「観察」する機会がほぼないです(ゆゆしきこと...)。

先日新規プロジェクトを担当した際には、リリースファースト、とにかく完成させるのが第一で「外国人ユーザーや日本企業のニーズは?」なんて観察している時間の余裕はありませんでした。
普段のプロダクト開発は基本的に仮説ベースで進めていますが、他の企業さん、特に弊社のようなサービス立ち上げのスピードを重視するベンチャーではどのように進行しているのだろうと疑問に思っています。理想的なプロセスと現場のバランスってどう取るものなのか。時間とお金、リソースの制約についてすごく気になります。

あと、当たり前ですけど「観察」が行えるのってそのサービスを利用する対象が定まっている上でだな、とも。外国人スカウトサービスを担当した際、ターゲットとする企業の業界や規模感が一つではなかったため、どう定めてよいのかわからなかった節があります(今も不明確...)。こういった場合、現場を観察しようと思えば「外国人求職者を求める人手不足の業界」を複数リサーチするのでしょうか。観察・調査ってどこからどこまで必要になるんでしょう...。

まあネガティブな反省ばかりではなく、見方を変えればサービスの立ち上げ時にできなかった「観察」は改善できる伸び代です。これからできる限りユーザーテストに取り組み、プロダクトをブラッシュアップしていこうと思います。顧客となる企業に関しても、営業サイドとがっつり組んで一歩ずつ進んでいく予定です。ただでは転びません〜。

適切な「問題」を見つける

適切な課題や問題を設定することに関して、書籍で具体例としてあげられていたのはスーパーマーケットのレジの事例です。長いレジ待ちでイラついている顧客を観察してわかった本当の問題は、自分より後に並んだ客が別のレジで先に会計をすませているのに苛立ちを感じるということ。並ぶことそのものよりも不公平さを感じていたことに根本原因があったようです。

適切な問題を見つけるために必要なのは、物事を多角的に見る視点と、当事者への「共感」ができていること。でも、感情的な理解ってその場のリアルな空気感や状況を体験しないと案外難しかったりしますよね。

こちらも実務で体感した例を。
先日、社内で外国人スカウトサービスのユーザーテストを行いました。ここで浮き彫りになったのは、外国人求職者が新規登録する際、サービス自体の内容を勘違いしたまま登録をしてしまっていたこと。ユーザーが期待した内容と実際の登録完了後の画面には大きな差があり、「あれ?このサービスはこのあとどうすればいいんだろう?」と困惑させていることが明らかになりました。これは開発した私たちにとって完全に予想外の事柄で、登録画面のみならず、サービス紹介をしているLPも含めたUXの見直しが必要とわかりました。
制作サイドとして「これで伝わるだろう」とだいぶ楽観的に考えていたのだなと実感。直接ユーザーの表情や発する言葉を観察できると、微細な心理的変化も捉えることができます。こちら側の解像度をぐっとあげてこそ問題が定まるのだと思える出来事でした。

ざっくりまとめ

自身の経験に即すとまだまだ感想が浅くなってしまいますが、デザイン思考とそこから生み出されるイノベーションについて、様々な例から考え方のヒントをくれる本です。ご興味があればぜひ一読ください〜!

こちらもついでにご紹介。デザイン思考についてかなり完結にまとまっています。

ではまた!