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犯罪の被害に遭わないために

誰もがいつ何時でも犯罪の被害者になり得る世の中で、どう振る舞ったらよいのか自分なりの考えを書きたいというのが前の記事の結びでした。

そう言っているうちに、1月23日にJR宇都宮線の車内で喫煙をしていた男性を注意した高校生が、逆上した相手から暴行を受け、顔の骨を折るなどの大怪我を負うという事件が起こりました。

ネット上での反応は、私が見る限り「被疑者へのバッシング」、「高校生は勇敢であるという意見」、逆に「軽率だという意見」、「何もしなかった周囲への批判」の四種類に分かれているように思います。

この記事では、どの立場も取りません。
自分がその場に遭遇したらどうしていたか、可能な限りリアリスティックに考えた率直な意見を書きます。

上に挙げた四つの考え方にしても、自分がどの立場に置かれていると想定するか、どのフェーズで状況に遭遇するかによって当然考え方が異なるので、それぞれの立場、フェーズ毎に考えました。

電車内で喫煙している人間(不審者)に遭遇したら

大前提として、今回、高校生が「行動を起こしたこと」自体は素晴らしいと思います。
単に勇敢というだけではなく、自分や他者の身を護ることは、行動を起こさない限り実現できないからです。

きっと私も行動を起こします。
どんな行動か?
迷わず電車を降りますね。

そもそも電車内で喫煙する人間の精神状態って、正常ではないと思います。

2021年10月31日に京王線車内で起きた刺傷・放火の被疑者も犯行前に煙草を吸っていました。
逮捕された後には「人を殺して、死刑になりたいと考えた」と述べたと報道されています。
つまり、人生を捨てて罪を犯したいと考えていたのです。

私は電車に乗った瞬間に周囲を見渡して、不審な人物はいないかを確認しています。
仮に、少しでも様子がおかしい人がいたら「凶悪犯罪を起こそうとしている人間である」という前提で考え、電車を降りてやり過ごします。
たとえ勘違いだったとしても誰にも迷惑はかからず、勘違いでなかったとすれば自分に危険が及びます。
このフェーズでは相手を逮捕する訳ではないので、明確な根拠なんてなくたっていいんです。
とりあえず行動を起しちゃって損はないのではないでしょうか?

自分以外の人がどうなってもいいと考えている訳ではありません。
私は護身術を学んでいるので、危険(可能性を含めて)を前にした時に逃げることの重要性を理解しています。
この記事を書くことも含めて、迷わず逃げるということの重要性を、多くの人に理解してほしいと思っています。
電車内で喫煙しているような人がいたら、その車両からすべての乗客がいなくなるような状況が、私にとっては理想です。

しかし現実的にはそんな状況はなかなか実現しません。
なので、不審者を目にした場合は自分が電車を降りる際に周囲の人達に「不審者がいるので降りた方がいいですよ」と声をかける、降りた後に鉄道会社の方にその人物が乗車している車両の行先(何番線の何駅行か)及び発車時刻、車両番号、一番近いドアの番号は言えるようにしておきます。

自分の身の安全を確保できて初めて他の人のことを考えることができるのです。

電車内で絡まれたら

まずもって避けたい状況ですが、それでも対処しなければならないとしたら、一番に考えることは相手と「接触しない」ということです。

相手から掴まれたり、殴られたりということは言うに及ばず、こちらからも接触は避けます。
両手の手の平を相手の顔に向け、物理的にも精神的にも相手との間に壁を作ります。

謝って済むなら、自分が悪いと思っていなくても謝ります。
私の護身術のお師匠の言葉ですが、「頭を下げても人の価値は下がらない」からです。

被害に遭った高校生は、相手の理不尽な謝罪要求に対して土下座したと報道されています。
とても気高い行為だと思います。
報道によると土下座の最中に暴行が始まったようですので、頭を下げても相手のことは常に視界に入れて対処できるようにすることは重要です。
実際、武術・武道で礼をする時は、座礼(いわゆる土下座)でも立礼でも、完全に下を向かないように礼をします。
相手がいつ襲いかかってくるかわからないという前提で、いつでも対処できるように準備しているのです。

ベスト・キッド』という1984年のアメリカ映画をご存じでしょうか。
2010年にはジェイデン・スミス(ウィル・スミスの実子)とジャッキー・チェン主演でハリウッド版リメイクが公開され、2018年からは正統続編である『コブラ会』のドラマシリーズが始まった作品です。

元の『ベスト・キッド』では、いじめられっ子の主人公ダニエルが、自分の身を護るためにミヤギさんという師匠から空手を教わるのですが、二人は互いに立礼をする時、顔を相手の方に向けたまま腰を折ります。
本作では、足腰の構え方や手の握り方に至るまで、空手の描写が大変優れているだけあって、礼の仕方も実戦的です。

ただ、顔全体を相手に向けるのはさすがに不格好なのと、相手を信頼していないという意思表示になり、神経を逆撫でする可能性があります。
目線で相手を捉えることができれば充分でしょう。
※『ベスト・キッド』も『コブラ会』も大好きな作品なので、いずれそれに関する記事を書きます。

現実社会に話を戻して、謝っても相手が近付いてきたら、肘の辺りをそっと押さえます。
この時、「そっと」というのがポイントです。
どんな人でも、自分が「攻撃されている」「押さえつけられている」と思うと熱くなったり、抵抗したりするものだからです。
犯罪を起こそうと思っている人間にとっては、些細な接触も格好のトリガーになる可能性があるので要注意です。

肘を押さえるだけで、実は相手の行動の大部分を制御することができます(武術では「肘を制す」と言います)。
相手の行動を制御した上で、説得を試みるなり、第三者の助けを呼ぶなりすればいいのです。
この記事では詳述しませんが、肘を押さえた状態で、相手が攻撃してきた時に対処する方法は色々あります。
自分も相手も傷付けずに事態を収拾するのが理想です。

電車内で誰かが暴行を受けているのを目撃したら

さすがにこれは「やり過ごす」とは言っていられません。
まずは、非常通報ボタンを押して鉄道会社の方に状況を伝えます
警察への通報を含め、組織的に対処してもらうためです。
私は乗車の際に他の乗客を観察するのと同時に、非常通報ボタンの位置を常に確認しています。

自分の位置から遠ければ、近くにいる人に押してもらうようにお願いします。
その際、「誰か非常停止ボタンを押して下さい」と言うのではなく、「〇色のコートを着た男の人or女の人、非常通報ボタンを押して下さい」と指名します。
「誰か」と言われると、どうしても「誰かがやってくれるだろう」という心理が働くので、当事者意識を持ってもらうのです。

非常通報ボタンを押しても、鉄道会社の方が対処するまでにはどうしても一定の時間がかかるので、抜き差しならない状況であれば止めに入ります。

その際、たとえ知らない人であっても「あの人を取り押さえたいので、手助けして下さい」と周囲に声をかけて、なるべく多人数で対処します。
最初の一人になることはハードルが高いですが、誰かが動き出せば手助けしたいと思う人はいるはずです。
自分が最初の一人になったとして、抜き差しならない状況で「誰かが助けてくれるだろう」と想定するのは甘いので、予め声をかけるのです。

では、仮に相手が刃物などの凶器を持っていたらどうするか?
凶器を持った相手に対処する技術を学んではいますが、学べば学ぶほど難しさがわかるので、素手で対処するのは最後の最後と思っています。
バッグでもジャケットでもベルトでも、身の周りにあるものは何でも武器、または自分の身を護る盾にします。

それにしても一定の技術が必要なので、手っ取り早く相手を制圧するには消火器が有用です。
最近の犯罪では刃物による刺傷と放火がセットになっているので、犯罪の臭いを感じたら消火器を探す、というのは無駄ではないと思います。

警棒やスタンガンのような護身具を携帯していると、警察の職質で没収される場合がありますが、消火器は消防法で一定の範囲内に設置が義務付けられているため常に身近にあり、且つ相手と接近することなく使用することができるので、設置場所を把握しておくと非常に心強いです。
私は、電車に限らず街中で消火器がどこに設置されているか、つい気にしてしまいます。

以上、長々と書きましたが、非常時に冷静に迅速に行動するには、平時からシミュレーションをしておくことが重要です。
一人でも多くの方にシミュレーションをして頂けるよう、これからも情報を発信したいと考えています。

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